インデックス投資全般

【インデックスファンド】運用報告書でのベンチマークとの乖離の見方、乖離0だから単純に素晴らしいファンドとは言えません。

投稿日:2018年1月20日 更新日:

インデックスファンドの通知表とも言うべき運用報告書、これから、信託報酬以外にかかったコスト(実質コスト)やベンチマークとの乖離を知る事が出来ます。

ただ、ベンチマークとの乖離といっても、あくまでそのファンドがベンチマークとしている指数に対しての乖離を表しているだけであって、この値を、他のファンドと比較する事はできません。

また、先日、<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドの運用報告書がアップされ、その中で乖離が全くないような記載があった事から、いくつかのブログでも紹介されていますが、乖離0だから単純に素晴らしいのではなく、その乖離の中身を良く理解する必要があります。

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ベンチマークの種類

下記記事と一部内容が重複しますが、再度ご説明します。
参考記事インデックスファンドのベンチマーク、配当込、配当除くで実際の運用成績は異なるか?

外国株式に投資するファンド

例えば、MSCI Kokusaiをベンチマークとする先進国株式インデックスファンドの場合、その配当を含むか、含まないか、及び配当課税を考慮するかしないかで3通りの指数があります。

  • 配当除く
  • 配当込[ネット(net)] (配当の源泉課税を考慮)
  • 配当込[グロス(gross)]  (配当の源泉課税を考慮しない)

MSCI エマージング・マーケット・インデックスとの連動を目指す新興国株式インデックスファンドでも同じです。

海外に投資するファンドの場合、ファンドが保有する株式から配当が出た場合、その株式の現地国で税金が源泉徴収された後、ファンドの資産に入ります。

その配当を全く考慮しない指数[配当除く]、課税後の配当を含んだ指数[配当込・ネット]、配当の課税を無視し配当分をそのまま含んだ指数[配当込・グロス]という事になります。

配当課税を考慮した配当込・ネットが、最も現実にあっていそうですが、その源泉徴収税率が各国の税率を正確に反映しているという保証はありません。

このように3種類のインデックスがMSCI社から提供されますが、どれをベンチマークとするかはファンドにより異なります。

 

国内株式の場合

国内株式(例えばTOPIX)の場合、所有する株式から配当が出ても、それに課税される事無くファンドの資産に入ります。よってネットのような指数はなく、配当除く配当込の2種類だけになります。

真のインデックスはどこにあるの?

真のインデックスとは(ちょっと表現がおかしいですが)、例えば、先進国株式インデックスファンドの場合、MSCI Kokusaiの構成比率どおりに株式を保有し、その株式から配当が出た場合は、各国で適切に源泉徴収された後に資産に組み入れた指数と定義します。

この真のインデックスを、(本サイトでよく登場する)ファンド騰落率と実質コストの関係から求めます。

ファンド騰落率と実質コストの関係

先ず、真のインデックスの、ある期間の騰落率をrとします。そしてファンドのコストをsとします。
ファンド騰落率 = ( 1 + r ) x ( 1 - s ) -1
                       = r -  (1 + r) x s
となります。 

*厳密には日々コストが差し引かれますので、もっと複雑になりますが、近似的には上式で問題ないでしょう。

上式より、ファンド騰落率と実質コストは傾き -(1 + r) の直線上にのり、

実質コストs=0の時が真のインデックスの騰落率となります。

 

国内株式(TOPIX)の場合

先ず、わかりやすい国内株式(TOPIX)の場合でプロットしてみます。

2017年12月末日時点の1年騰落率です。

国内株式(TOPIX)インデックスファンド

図中、茶色の点線が配当込指数の値、青色の点線が配当除く指数の値です。

そして各ファンドの実質コストと騰落率を丸印でプロットし、これがグレーの点線上に綺麗に乗っている事がわかります。

グレーの点線は、騰落率が概ね20%なので傾き-(1+0.2)=-1.2の直線です。

そして実質コスト0の時(図中ピンクの星印で示した点)真のインデックスの値となります。

これが、配当込指数に一致している事がわかります。

国内株式は前述のように、配当課税がありませんので、単純に配当込指数が真のインデックスとなります。

そして、このように実質コストとファンド騰落率の関係から真のインデックスを求める方法に、大きな誤差はないという証にもなります。

 

MSCI Kokusai 先進国株式の場合

次にMSCI Kokusaiとの連動を目指す先進国株式の場合です。

先進国株式インデックスファンド

新たに、配当込指数(ネット)が加わります。図中、赤色の点線で示しています。

そして、各ファンドのプロットは傾き-1.2の直線上にのり、実質コストが0の時、即ち、真のベンチマークの値は約18.9%となります。

配当課税を考慮しない配当込指数(グロス)より低く、配当課税を考慮した配当込指数(ネット)よりは高く、概ねその中間の値となります。

配当込指数(ネット)は、税率を実際より高めに見積もっているようです。

因みに、各先進国株式インデックスファンドが、どの指数を用いているか、ベンチマーク騰落率を含めて下表にまとめます。

ベンチマークの1年騰落率(2017.12末時点)
ベンチ
マーク
1年騰落率 ファンド
配当込
(グロス) 
19.37% たわらノーロード、
Funds-iなど
19.28% インデックスe
配当込
(ネット)
18.6% <購入・換金手数料なし>
ニッセイ
配当除く  16.47% eMAXIS、
eMAXIS Slim
16.38% SMT

実は、同じベンチマークでも、多分、円換算時のレートの違いによるものだと思いますが、インデックスeSMTは異なる騰落率となっています。即ち、(ここで取り上げたファンドの中でも)厳密には5種類のベンチマークが存在している事になります。

*配当込指数(ネット)をベンチマークとしているのは、(調べた範囲内では)ニッセイのみです。

 

<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドの場合

2017年11月20日の<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドの運用報告書では、

当期の基準価額騰落率は+23.3%となり、ベンチマーク騰落率(+23.3%)に連動しました。
                       ~運用報告書より引用~

との記載があります。即ちベンチマークとの乖離は無しと言う事です。

ここで上図をもう一度見て下さい。

今回の決算は2016年11月22日から1年間のもので、上図とは約1カ月だけ期間が違いますが、大きな違いはないでしょう。

確かに、ニッセイの騰落率は配当込(ネット)指数と一致しており、乖離が0というのは間違いではありません。

但し、信託報酬等のコストがかかっているにも関わらず乖離0というのはおかしいですよね。

ニッセイのファンド騰落率が18.61%、ベンチマーク(配当込・ネット)の騰落率が18.6%、

そして真のインデックスの騰落率は18.9%。

即ち、今回のニッセイのベンチマークとの乖離を正確に表現すると、

ベンチマークが配当課税を多く見積もっていた事による成分が+0.3%、それに信託報酬、及びその他費用が-0.3%、結果的にベンチマーク(配当込・ネット)との乖離は0になりました。

という事になります。

実際、今回の運用報告書記載の実質コストは0.315%ですので一致します。

ベンチマークの配当課税見積もりの上乗せ分とコストがたまたま一致した事で、結果的に乖離が0となっただけです。

[注意]乖離が0だから実質コストが高くても問題ない、と理解されている方がいるとすれば大きな間違いです。ちゃんとコスト分、リターンは低くなっています。
また逆に、実質コストが低ければ乖離もないだろうと考えるのも間違いです。

 

他のファンドと比較してみると。

2017年で見ると上述のように結果的にはニッセイの乖離は0です。

一方、例えば、配当込・グロスをベンチマークとしているたわらノーロードが、この期間で決算を迎えたとしたら、

ファンド騰落率 18.60%、ベンチマーク騰落率 19.37%、

ベンチマークとの乖離=-0.77%となります。

乖離0のニッセイ、乖離 -0.77%のたわらノーロード、この乖離の値だけを見て、ニッセイの方が良いと言えますか?

そんな事はないですよね。

上図で、ニッセイたわらノーロードも同一直線上に乗っているという事は、真のインデックスに対して、コスト起因以外の乖離は発生しておらず、後は、コストに応じて騰落率に差が出ているというのが正しい理解です。

<注>本記事はあくまで客観的にデータを見る事が目的であり、<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドを批判するものではありません。

 

どの指数を採用したファンドが良いの?

(以下は、おもいっきり主観が入った見解です)

それでは、どの指数を採用したファンドが良いのでしょうか?

配当除く指数を批判されている方が多いように思えます。

実際には配当が出ているのに、それを入れない指数をベンチマークにするというのは、最終的な見栄えを良くするためであれば姑息なやり方だと言えます。

配当除く指数をベンチマークとするファンドでは、よほどの事がない限りベンチマークより上振れします。本来、インデックスファンドにとって上振れと言えども、指数との乖離は良くない事ですが、マイナス乖離よりプラス乖離の方が見栄えが良いと思っているのかな・・・

そして、万が一、(真のインデックスに対して)大きなマイナス乖離を起こしても、ベンチマークとの乖離は小さくてすむ、マイナス乖離を隠せるという事も出来てしまう訳ですから、やっぱり、ずるい?

一方、配当込・グロスならどうでしょう?

配当込・グロスをベンチマークにするという事は、コスト分、そして配当課税分が加わり、絶対に到達できない目標をベンチマークにするという事です。(国内株式の場合はコスト成分のみ)

さらに、(真のインデックスに対して)マイナス乖離を起こしたとしても、「ベンチマークは配当課税を含んでいませんので、その分下振れしました」という一言だけで済まされてしまうかもしれません。

配当込・ネットが感覚的には良いような気がしますが、その配当課税が現状に即しているという保証がない以上、そうとも言い切れません。
(国内株式・TOPIXなら配当込にすべきかな)

結局、どれをとっても一長一短。

まあ、それぞれのご意見があるでしょうから、お好みの指数に連動するファンドに投資すれば良いだけの話です。

「しんたろう」的には、どれでも良いからファンド間で統一される事を希望します。月次レポートや運用報告書を見るだけで、他のファンドと直接比較できるような状況にして欲しい。

 

ベンチマークが異なれば運用結果が異なるの?

ベンチマーク騰落率では配当除く指数が最も低くなりますが、これをベンチマークとするファンドは騰落率も低くなるのでしょうか?

少なくとも調べた限りではそんな事はありません。どれをベンチマークとしても、そのコストに応じた騰落率となります。(勿論、保証の限りではありませんので、気なる方は配当除く指数のファンドは避けられた方が無難でしょう。)

参考記事インデックスファンドのベンチマーク、配当込、配当除くで実際の運用成績は異なるか?

 

重要なのは、運用報告書で丁寧に説明する事。

多くのファンドの運用報告書に記載されているベンチマークとの乖離の説明は実にシンプルなものです。

「配当分、配当課税分、そしてコストを考慮すれば概ねベンチマークに連動しました」

程度の表現。

「しんたろう」が知る限り、唯一、丁寧に記載されているのはeMAXIS Slimを運用する三菱UFJ国際投信

<eMAXIS 先進国株式インデックス>
マザーファンド保有以外の要因 -0.8%
マザーファンド保有による要因 2.8% ==>下でマザーファンドの要因を説明
合計 2.0%

<外国株式インデックスマザーファンド>
組入比率要因 0.0%
銘柄選択要因 -0.1%
その他の要因 2.9% ==>下でその他の要因を説明。

<その他の要因>
プラス要因  配当・利子収入。為替効果等 3.0%
売買コスト、保管料等  -0.1%

eMAXIS 先進国株式 2017年1月26日決算 運用報告書より引用。赤字は「しんたろう」が加筆。

eMAXISは、配当除く指数をベンチマークとしているのですが、ちゃんとベンチマークとの乖離の理由、成分分離を説明してくれています。

各社、最低限、このレベルの説明があって然るべきかと思います。

 

以上、インデックスファンドのベンチマーク、そして運用報告書に示されているベンチマークとの乖離に関する解説でした。

インデックスファンドの信託報酬、実質コスト、そして、それぞれのベンチマークは↓にまとめてあります。
参考記事インデックスファンド・コスト比較

株式以外のファンド、先進国債券ファンドなどもベンチマーク騰落率が異なる場合があります。詳細は↓を参照して下さい。
参考記事各アセットクラスのインデックスファンドのベンチマーク(配当有無、配当込の場合グロス、ネット)、及びその騰落率をまとめました。

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