本当に必要な老後資金(1) ~インフレを考慮した年齢別の必要資金~

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老後資金って一体いくら必要なのでしょうか? 

ネットで検索すると、3,000万円必要とか、いろいろな情報が溢れています。しかし、どれもインフレを考慮していない場合が多く、かつ、今まさに老後を迎えようとしている方にとっての必要な金額であって、現在、老後の為に貯蓄をしようとしている世代にとっての金額ではありません。

例えば、3,000万円必要と言われて、それを50歳で準備したとします。もう老後資金は十分蓄えから、これからは優雅に過ごすぞと、(3,000万円は確保したうえで)これ以上の貯蓄をやめ、浪費したとすれば、後で痛い目にあいます。インフレが起きると、今の3,000万円が、実際に老後を迎えた時、その価値が大きく目減りするからです。

そこで、インフレを考慮したうえで、老後資金が一体いくら必要なのか、そして、それが各世代別にわかるよう、年齢ごとの必要資金を計算してみました。

また、貯めた老後資金、取り崩す時も、そのまま眠らせておくわけではありません。運用し、利息を得ることが出来ます。今回の計算では、これも考慮しました。

老後資金計算の為の前提条件

家族構成

夫婦二人、夫がサラリーマン、妻が専業主婦とします。

また、夫は、60歳定年退職(59歳まで会社員)で、その後、再就職せず無職・無収入とします。

そして夫婦ともに、平均寿命よりちょっと長い90歳まで生きるとします。

支出

生活保険文化センターの「平成25年度生活保障に関する調査<<速報版>>」によると、夫婦二人の生活費は、最低日常生活費が22.0万円、ゆとりある老後生活費が35.4万円となっています。年額にすると、最低生活費が264万円、ゆとりある生活費が425万円となります。

今回の計算では、支出額として、この値をベースに計算します。

但し、この値は、あくまで現時点での価額(現在価額)であり、インフレとともに支出額は年々増加します。

収入(厚生年金)

厚生労働省が公表している資料によると、

平成28年度の厚生年金の支給額は、

夫が平均的収入(賞与込みで月額42.8万円)で40年間就業、妻専業主婦の場合で、

月額 221,504円 (基礎年金を含む夫婦合わせた額)となっています。年額266万円ですね。

今回の計算では、収入として、この値を使用します。

また、夫婦ともに同年齢とし、年金の受給は65歳からとします

但し、この値は、あくまで現時点での価額(現在価額)であり、インフレとともに年金額は年々増加します。

ここまでの条件で、簡単に試算すると、

支出(最低限) = 264万円 x (90 – 60 +1) = 8,184万円

支出(ゆとりある生活) = 425万円 x (90 – 60 +1) = 13,175万円

収入 =266万円 x (90 – 65 +1) =6,916万円

即ち、自己資金として必要な額は、

最低限の生活 : 1,268万円

ゆとりある生活 : 6,529万円

となります。

ここで終わると、他のサイトと同じになってしまいますので、ここからが本題です。

インフレ率

インフレ率として、政府・日銀が目標としている2%で計算します。(参考までにインフレ無の場合の結果も併記します)

さらに、年金受給額は、マクロ経済スライドを考慮し、

年金額 = 現在の平均受給額 x ( 1 + インフレ率) x ( 1 – スライド調整率)とし、

スライド調整率を0, 0.9%, 1.3%の3通りで計算します。

資産運用

本試算では60歳から資産の取り崩しが始まりますが、取り崩している間も資産残高をインフレ率と同様の年利で運用するとします。

運用といっても、インフレに負けないだけの運用をすれば良いだけですので、投資などリスクのあるものに頼らなくても、定期預金で十分対応できます。(少なくとも今までは)

最新の銀行、信用金庫の定期預金金利は↓にまとめてあります。
参考記事銀行・信用金庫 「普通預金」「定期預金」金利比較・ランキング

定年までに(59歳)、蓄えておくべき老後資産

さて、上記の前提条件のもと、60歳の定年まで(即ち59歳まで)に蓄えておくべき資産を計算します。

今現在の年齢ごとに必要な資産が異なる理由

必要な老後資産は、今現在の年齢によって異なります。

例えば、今現在55歳の方を例にあげると、

最小限の生活費は264万円としましたが、これは今時点での金額です。今現在55歳のあなたが、60歳になる時には、

264万円 x (1 + インフレ率)(60-55)

の生活費がないと最低限の生活が送れません。さらに61歳、62歳と年を取るごとに、(1 + インフレ率)をかけた分だけ必要な生活費が上がっていきます。

収入となる年金についても同様ですが、支給額は年毎に増えていきます。今現在の平均的な年金受給額が年額266万円ですので、あなたが年金を受給できる65歳になった時には、

266万円 x (1 + インフレ率)(65-55) x (1 – スライド調整率)(65-55)

となり、今の年金額より増加します。ただ、(1-スライド調整率)という乗数がかかり、インフレ率より年金額の上昇が抑えられるところがマクロ経済スライドです。

このように支出、収入(年金)ともに、インフレ率により変わっていきます。よって、必要な老後資産も今現在の年齢によって変わってくるという訳です。

結果

最低限の生活費とされる年間支出264万円(現時点での価額)の場合

59歳までに蓄えておくべき老後資金 
  インフレ率 スライド
調整率
現時点での年齢
45歳 50歳 55歳 60歳
1 0% 0% 1,320万円
2 2.0% 0% 1,777万円 1,609万円 1,457万円 1,320万円
3 2.0% 0.9% 4,065万円 3,391万円 2,796万円 2,271万円
4 2.0% 1.3% 4,906万円 4,069万円 3,324万円 2,661万円

インフレ無(上表の1のケース)では、現時点での年齢に関わらず、1,320万円一定となります。

一方、インフレ2%だと、例えばスライド調整率0.9%の場合(上表の3のケース)、55歳の方で、2,796万円まで上がってしまいます。さらに、45歳なら、4,065万円必要という結果になります。

必要な資産は、スライド調整率によって大きく変わる事が、この結果から分かります。

ゆとりある生活とされる年間支出425万円(現時点での価額)の場合

59歳までに蓄えておくべき老後資金
  インフレ率 スライド
調整率
現時点での年齢
45歳 50歳 55歳 60歳
1 0% 0% 6,258万円
2 2.0% 0% 8,422万円 7,628万円 6,906万円 6,258万円
3 2.0% 0.9% 10,774万円 9,468万円 8,299万円 7,256万円
4 2.0% 1.3% 11,615万円 10,146万円 8,828万円 7,646万円

インフレ無(上表の1のケース)でも、6,258万円。

インフレ2%、スライド調整率0.9%の場合、55歳の方で8,299万円、45歳なら10,774万円。

かなり厳しい結果です。ゆとりある生活を送るには、こんなに資産が必要とは!

ただ、インフレが進めば賃金や運用利回りも当然上がりますので、今まで以上に資産額は増えていきます。勿論、インフレとともに生活が派手にならなければ、ですが。

最低限は困るけど、そんなに「ゆとり」は要らないという方に中間的な年間支出350万円(現時点での価額)の場合 「プチゆとり」

ゆとりある生活を送る為の資産を用意するのはちょっと無理そう、だけど最低限でも困るという方に、「プチゆとり」として、だいたい中間の値、支出350万円で見てみます。

59歳までに蓄えておくべき老後資金
  インフレ率 スライド
調整率
現時点での年齢
45歳 50歳 55歳 60歳
1 0% 0% 3,939万円
2 2.0% 0% 5,301万円 4,802万円 4,349万円 3,939万円
3 2.0% 0.9% 7,654万円 6,641万円 5,739万円 4,937万円
4 2.0% 1.3% 8,494万円 7,319万円 6,268万円 5,327万円

インフレ無(上表の1のケース)では、3,939万円。

インフレ2%、スライド調整率0.9%の場合、55歳の方で5,739万円、45歳なら7,654万円。

せめて、これぐらいは確保しないと、老後に全く余裕のない生活になってしまう可能性があります。

まとめ

支出額として3つのパターン、またインフレ無、インフレ2%、そして年金のスライド調整率を3通りで計算し、それを年代別に、必要な老後資金としてまとめました。

インフレを考慮すると、予想していたより巨額な老後資金が必要になります。

特に若い世代では、その影響が大きくなり、またマクロ経済スライドによる事実上の年金削減も大きく影響していく事がわかります。

こんな資産、無理だと思われる方も多いでしょう。今回の計算では定年後の60歳から64歳までを無収入としましたので、この影響が大きいかもしれません。

次回は、この空白の5年間、再就職した場合の計算をしてみます。

本記事本当に必要な老後資金(1) ~インフレを考慮した年齢別の必要資金~

第2回本当に必要な老後資金(2) ~インフレを考慮した年齢別の必要資金~ 64歳まで働いた場合

第3回本当に必要な老後資金(3) ~今から準備する場合、年間いくら積立てたらよいか?~

第4回本当に必要な老後資金(4) ~番外編 早期退職・アーリーリタイアするにはいくら必要?~

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