ドルコスト平均法(DCA)、毎月定額を積立てる事によって、結果的に価格(株価や基準価額)が安い時は多く、そして高い時は少なく購入する事になり、平均購入価額を平準化できる、時間分散できる、高値掴みを避けることが出来るなどのメリットがあります。最も、一般的な投資方法と言っても良いでしょう。
毎月積立てて投資を行っている方は、意図せずともドルコスト平均法になりますね。
一方で、巨額の投資資金が手元にある場合、どうすれば良いのでしょうか?
例えば、退職金をもらった場合、あるいは企業年金が確定給付型から確定拠出年金に代わった場合も、今までの確定給付型年金の資産が確定拠出年金に一気に移管され多額の投資準備金ができます。
その資金を一気に投資するか、長期間かけてドルコスト法で積立てていくか、迷うところです。
楽天証券の山崎元氏は、
ドルコスト平均法は「平均買いコスト」に投資家の視点を集中させることで、投資対象が値下がりした時の「気休め」をあらかじめ提供している投資方法なのだ。
とドルコスト法は「気休めに過ぎないと」述べています。
確かに、投資する場合、その投資対象が今後上がっていくものと期待して投資するわけですから、ドルコスト法のように、わざわざ時間分散する事で機会損失となるような投資方法は愚かにも思えてきます。
そう考えると、以前紹介したバリュー平均法(↓)は、株価の上昇局面で投資額を減らす、場合によっては売却するわけですから、一括投資と対極になると言っても良いかと思います。
しかし、普通の投資家の心理として、投資する以上、長期的には上がっていくものと期待はしているけど、一時的にはもうちょっと安くなるかもしれない、今、一括投資すると高値掴みになるかもしれないという不安を常に持っているものだと思います。
と、理屈ばかり考えても仕方ないので、実際の日経平均株価で検証してみました。
日経平均株価での一括投資とドルコスト法の損益率の比較
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日経平均株価そのものが基準価額となる投資信託があったと仮定し、それに一括投資した場合、ドルコスト法で買い付けた場合とで比較してみます。
運用期間は、5年、10年、15年、20年。
一括投資は、積立開始時に全額を一括して投資、
ドルコスト法の場合、投資期間全体で分割して毎月積立てるとします。100万円の手元資金がある場合、投資期間10年であれば、毎月の投資額は100万円 / (10年 x 12カ月)となります。
検証結果
先ずは、5年間の運用期間の結果を見てみます。
横軸は投資を開始した時期、縦軸は5年間運用した結果の損益率です。(年率ではありません)
参考までに日経平均株価のチャートも同時にプロットしてあります。(右縦軸)
いわゆる高度成長期からバブルの頃までは、株価がほぼ単調に値上がりしていますので、一括投資(赤)の方が大きな利益を出している事がわかります。
その後、バブル崩壊後は、当たり前ですけど、暴落の前に一括投資した場合、ドルコスト法より損益率が悪くなりますが、平均的にどちらが有利なのか、グラフだけ見ても、よく分かりません。
このように、いつ投資を開始したかで、どちらが有利・不利になるかは変わってきますので、損益率の平均と標準偏差を見てみる事にします。
尚、1960年から現在までの全期間と、バブルが完全に崩壊した1992年以降とで分けて計算します。
期間 | 一括投資 | ドルコスト法 | |
全期間 | 平均 | 42.5% | 20.4% |
標準偏差 | 73.9% | 36.6% | |
1992年以降 | 平均 | 2.7% | 4.2% |
標準偏差 | 47.2% | 30.7% |
さすがに、全期間で見ると、バブルまでの大きな利益の影響が大きく、一括投資の方が平均でも大きなリターンを確保しています。ただ1992年以降は、逆にドルコスト法の方が有利になっています。
そして注目すべきは標準偏差。全期間、1992年以降の両方で、ドルコスト法の方が小さくなっています。時間分散の効果が効いていると言って良いでしょう。
以下、投資期間10年、15年、20年と見てみます。
期間 | 一括投資 | ドルコスト法 | |
全期間 | 平均 | 105.2% | 47.2% |
標準偏差 | 136.5% | 67.2% | |
1992年以降 | 平均 | -12.7% | 1.3% |
標準偏差 | 34.1% | 30.3% |
期間 | 一括投資 | ドルコスト法 | |
全期間 | 平均 | 196.1% | 75.6% |
標準偏差 | 229.0% | 100.4% | |
1992年以降 | 平均 | -20.7% | 5.3% |
標準偏差 | 32.2% | 33.3% |
期間 | 一括投資 | ドルコスト法 | |
全期間 | 平均 | 370.0% | 116.9% |
標準偏差 | 499.9% | 162.9% | |
1992年以降 | 平均 | -22.2% | 15.1% |
標準偏差 | 21.7% | 29.5% |
全期間の場合、運用期間にかかわらず、平均値は一括投資が有利、標準偏差はドルコスト法の方が小さくなっています。
一方、1992年以降に限れば、平均値はドルコスト法が有利、標準偏差は、運用期間10年まではドルコスト法の方が小さくなっています。ただ15年、20年となると、逆にドルコスト法の標準偏差が大きくなるという現象も見えていますが、その差は5年、10年の時の差ほど大きいものではありませんし、平均値はドルコスト法の方が有利になっています。
まとめ
当たり前ですが、株価の上昇局面では一括投資が有利となります。
一方で、バブル崩壊後の日経平均株価では、平均的に見てドルコスト法の方が有利になっています。
また、いつ投資を始めたかによるバラツキはドルコスト法の方が基本的に小さくなります。
投資する以上、その投資対象の値上がりを期待しているのですが、本当に上がるかどうかなんて誰にもわかりません。
「しんたろう」は、投資で絶対儲かるなんて思っていません、「利益が出れば儲けもの」ぐらいの投資スタンスです。そんな「しんたろう」にとって、それが気休めだろうと、一括投資する気にはなりません。やはり大きな資金が手元にあったとしても、ドルコスト法で投資していきます。
尚、今回は、運用期間全体で分割して積立てるドルコスト法と一括投資を比較しましたが、例えば、手元に100万円の資金がある時、それを10年とか20年とか長期にわたって分割し積立てていくのは、さすがの「しんたろう」でも気が進みません。
次回は、運用期間より短い期間で積立を終了した場合のドルコスト法と一括投資を比較してみます。
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