楽天・バンガード・ファンドの1回目の決算が発表され、その実質コストが明らかになりました。(下記記事を参照して下さい)
今回は、インデックスファンドにとってコストとともに重要なベンチマークとの乖離について評価します。
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*本記事は、仮定、及び管理人の推測が多く含まれている事にご注意ください。
評価するのは楽天バンガードファンドの中でも人気の高い、
- 楽天・全世界株式インデックス・ファンド (通称:楽天VT)
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド (通称:楽天VTI)
の2本です。
本評価は、下記の仮定・前提条件のもと行います。
・為替レートは三菱UFJ銀行公表の対顧客外国為替相場TTM使用。
・米国バンガード社のVT、VTIのNAV、及びベンチマーク騰落率を使用。
・楽天バンガードファンドの基準価額は、米国時間前日のVT、VTIのNAVで決まるとする。
・決算期間は2018年7月17日までだが、評価は2018年6月末日時点とする。(VT/VTIベンチマーク騰落率のデータが月末の値しかない為)
見出し
楽天・バンガード・ファンドの乖離の要因
米国ETFのVTやVTIを買い付けるだけの楽天・バンガード・ファンドのベンチマークとの乖離は、以下の要因によって生じます。
以下、楽天・全世界株式インデックス・ファンド(以下、楽天VTと呼びます)を例にとって解説。
尚、単にVT/VTIという場合は米国ETFのVT/VTIを指します。
- 楽天VTが要したコスト
- 楽天VTの運用上の問題
- VTの配当金に対する米国課税の影響
- VTとベンチマークとの乖離
1,2,3の合計が、楽天VTのVT(分配金再投資)に対する乖離となります。
以上をまとめると下図のようになります。
楽天・全世界株式インデックス・ファンド【楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)】の乖離
乖離が激しかった設定当初を除き、2018年6月末日時点の年初来(2017.12.29~2018.6.30)の期間で評価します。
*当初、設定日(2018年9月29日)から2018年6月末日までの解析も試みたのですが、なかなか数字が一致せず断念。
楽天VTのベンチマークとの乖離
上記期間の楽天VTのベンチマークとの乖離は-0.25%。
ちょうど半年ですので、このままだと年間0.50%のマイナス乖離が生じる事になります。
設定当初ほどではないにしろ決して小さい値ではありません。
楽天VTのVTに対する乖離
楽天VTの騰落率、及びVTの円換算騰落率(配当金非課税再投資)との差から、
楽天VTのVTに対する乖離は-0.25%となります。
楽天VTのコスト
楽天VTの決算期間(291日)の実質コストは0.304%
これを上記期間の日数で按分すると0.19%となります。
勿論、ベンチマークに対してマイナス要因となります。
VT配当金に対する米国課税
上記期間中に配当があった場合、配当金に10%の米国課税がかかるとして、この時の期中騰落率を計算。
これと、米国課税を考慮しない騰落率(配当金非課税再投資)との差から米国課税の影響を計算すると0.11%となります。
これも、ベンチマークに対してマイナス要因となります。
楽天VTの運用上の問題
楽天VTのVTに対する乖離=
楽天VTのコスト + 楽天VTの運用上の問題 + VT配当金米国課税
となり、これから
楽天VTの運用上の問題は +0.05%と推定できます。
VTのベンチマークとの乖離
この期間中のVTのベンチマークとの乖離は+0.01%です。
*尚、この値は、評価期間より1日ずれている事をご承知おきください。
(参考)VTだってベンチマークとの乖離はあります。
この評価期間中のVTの乖離は殆どありませんでしたが、巨大な純資産総額を誇るVTと言えども、月次データで見ると結構ベンチマークと乖離している時もあります。
下図は楽天VTとVTについて、それぞれベンチマークとの月次乖離をまとめたものです。2018年3月にはVTが+0.49%という乖離を起こしています。当然、この月は楽天VTも同様の乖離が生じています。
まとめ
以上の結果をまとめると下図のようになります。
*若干計算が合わないところもありますが、ラフな見積もりですのでご了承下さい。
乖離要因として最も大きいのはコストで0.19%も下方要因となっています。
その次が、配当金米国課税の0.11%ですが、これはどうする事も出来ません。(これを避けるには、VTを直接購入して外国税額控除を使用するしかありません)
*計算上、運用上の問題が+0.05%と出ていますが、本評価にそこまでの精度があるかどうか自信を持てません。
とにかく、ベンチマークとの乖離と言う点でも、実質コストを下げることが最大の課題です。
楽天・全米株式インデックス・ファンド【楽天・バンガード・ファンド(全米株式)】の乖離
評価方法は上記、全世界株式と同様で、評価期間も2018年6月末日時点の年初来です。
簡単に結果だけまとめます。
全世界株式に比べると乖離が0.05%小さくなっていますが、それでも半年で-0.20%ですので決して小さくはありません。
主な要因は、全世界株式同様、楽天VTIのコストです。それに、配当課税。
VTIの場合、VTと異なり、月次データで見てもベンチマークとの乖離は殆どありませんので、楽天VTIも、コストを下げれば、さらにベンチマークとの連動性が高まります。
尚、全世界株式より乖離が小さい理由は、実質コストが低い事、及び配当利回りが低いからです。
まとめ
以上、楽天・全世界株式インデックス・ファンド、及び楽天・全米株式インデックス・ファンドのベンチマークに対する乖離の要因分析でした。
2018年に入り設定当初のような大きな乖離はなくなっていますが、依然、無視できない程度の乖離は生じています。
(注)月次データでは最近でも乖離が大きい月がありますが、あくまで6カ月という期間で見た場合の話です。
そして、その主な要因は、運用自体の問題ではなく、楽天・バンガード・ファンドのコスト。
実質コストが下がる事で、ベンチマークとの連動性が高まります。
ただ、配当に対する米国課税分だけは致し方ありません。これは楽天・バンガード・ファンドに限らず、国内から直接外国に投資する投資信託(eMAXIS Slimなど)も同様です。(VTの3重課税はまた別の問題としてありますが)