米国株式(NYダウ、S&P500など)との連動を目指すインデックスファンドについて、純資産総額、資金流出入額、運用成績(ベンチマークとの乖離)を調査します。
*原則、毎月更新します。
[最終更新日:2019.2.5]2019年1月末日時点の情報に更新
*本記事は2019年1月末日時点の情報に基づき記載しています。
ベンチマークとの乖離は、月報・運用報告書に記載されていますが、その値を他社のファンドと比較する事は出来ません。各社、同じベンチマークでも、配当込・除く、配当課税有無、円換算レートなどの影響でベンチマーク騰落率がファンドにより異なるからです。そこで、 本サイトでは騰落率とコストの関係からベンチマークとの乖離を評価していきます。
参考記事【インデックスファンド】運用報告書でのベンチマークとの乖離の見方、乖離0だから単純に素晴らしいファンドとは言えません。
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見出し
比較した米国株式インデックスファンドの信託報酬・純資産総額
比較したファンド、及び、その信託報酬・実質コスト、2019年1月末時点の純資産総額を下表にまとめます。(信託報酬の低い順に並べてあります)
*信託報酬・実質コストは税込み
ファンド | 信託報酬 (実質コスト) |
設定日 | 純資産総額 (億円) |
NYダウ | |||
iFree NYダウ・インデックス | 0.243% (0.288%) |
2016/9/8 | 96.6 |
たわらノーロード NYダウ | 0.243% (0.443%) |
2017/3/21 | 13.7 |
SMT ダウ・ジョーンズ インデックスオープン | 0.540% (0.564%) |
2013/11/19 | 80.8 |
eMAXIS NYダウインデックス | 0.648% (0.734%) |
2013/8/7 | 90.4 |
日興インデックスファンドNYダウ30(アメリカ株式) | 0.6696% (0.800%) |
2014/3/31 | 15.6 |
S&P500 | |||
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 0.1728% (---) |
2018/7/3 | 109.2 |
iFree S&P500インデックス | 0.243% (0.372%) |
2017/8/31 | 62.0 |
iシェアーズ米国株式インデックス・ファンド | 0.405% (0.490%) |
2013/9/3 | 28.7 |
SSGA米国株式インデックス・ファンド | 0.486% (0.543%) |
2017/9/29 | 16.3 |
CRSP USトータル・マーケット・インデックス[VTI] | |||
楽天・全米株式インデックス・ファンド | 0.1696% (0.311%) |
2017/9/29 | 321.2 |
FTSEハイディビデンド・イールド・インデックス[VYM] | |||
楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド | 0.2096% (0.467%) |
2018/1/10 | 14.9 |
NASDAQ100 | |||
iFreeNEXT NASDAQ100インデックス | 0.486% (---) |
2018/8/31 | 6.2 |
S&P500配当貴族指数 | |||
野村インデックスファンド・米国株式配当貴族 | 0.540% (0.869%) |
2017/1/10 | 66.0 |
SMT 米国株配当貴族インデックス・オープン | 0.594% (0.723%) |
2016/8/30 | 7.1 |
最新の信託報酬・実質コスト等は下記記事を参照して下さい。
米国株式の各指数について詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。
NYダウ (ダウ・ジョーンズ工業株価平均)
NYダウとの連動を目指すインデックスファンドで信託報酬最安値は、iFree NYダウ インデックスとたわらノーロードNYダウの0.243%。ただし、たわらノーロードの実質コストは0.443%と、信託報酬以外のコストが非常に大きくなっています。
そして、純資産総額では、設定から僅か2年半程度のiFreeがeMAXIS NYダウインデックスを抜いてトップとなっています。
S&P500
S&P500との連動を目指すインデックスファンドは数が少ないですが、信託報酬最安値で設定から僅か7カ月のeMAXIS Slim米国株式(S&P500)が、純資産総額でiFree S&P500インデックスを抜きトップとなっています。そして、2019.1.18には100億円の大台にのりました。
楽天・バンガード・ファンド (楽天VTI/VYM)
それぞれ米国バンガード社のETF VTI、及びVYMに投資する楽天・全米株式インデックス・ファンド、楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド。
楽天・全米株式インデックス・ファンドは設定から僅か1年4カ月で300億を超えました。今回比較する米国株式インデックスファンドの中で最も純資産総額の大きいファンドになります。
一方、楽天・米国高配当株式インデックス・ファンドは、設定から約1年、純資産総額15億円とあまり伸びていません。
尚、楽天・全米株式の実質コストは2期目の途中結果が公表され、0.245%まで下がってきています。
S&P500配当貴族指数
S&P500配当貴族指数との連動を目指すインデックスファンドは、野村インデックスファンド・米国配当貴族[Funds-i]、SMT 米国株配当貴族インデックス・オープンの2本。信託報酬はFunds-iが若干低いですが、実質コストでは逆転しています。
純資産総額は、Funds-iが設定が新しいにも関わらず、SMTより断然大きくなっています。
資金流出入額 (米国株式インデックスファンド・人気ランキング)
2019年1月の概算の月次資金流出入額(*)、及び2018年の累計(1~12月の1年間合計)を見てみます。
1月の資金流出入額の大きい順にならべてあります。
どのファンドが多く購入されているかの人気ランキングになりますが、純資産が増える事は、それだけ安定した運用にもつながりますし、繰上償還のリスクも減ります。
ただの人気ランキングとしてではなく、ファンド選択の重要な指標の一つとしてみて下さい。
(*)月次資金流出入額は、日々の純資産総額の増減額に騰落率を考慮して算出。
例えば、3月5日の日次資金流出入額は
(3月5日の純資産総額) - (3月4日の純資産総額) x (日次騰落率 + 1)で計算し、
これを1カ月分足して月次資金流出入額としています。
但し、iシェアーズ、SSGAは日次データが入手できなかった為、月次データから計算しています。
2019年1月 | 2018年累計 | |||
順位 | ファンド | (億円) | 順位 | (億円) |
1 | 楽天・全米株式インデックス | 26.3 | 1 | 268.1 |
2 | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 17.8 | 2 | 96.0 |
3 | iFree NYダウ・インデックス | 5.2 | 4 | 48.8 |
4 | eMAXIS NYダウインデックス | 4.5 | 6 | 30.1 |
5 | SMT ダウ・ジョーンズ インデックスオープン | 1.0 | 7 | 29.6 |
6 | SSGA米国株式インデックス・ファンド | 1.0 | 10 | 5.4 |
7 | iFreeNEXT NASDAQ100インデックス | 0.7 | 11 | 5.1 |
8 | iシェアーズ米国株式インデックス・ファンド | 0.6 | 12 | 3.7 |
9 | 楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド | 0.5 | 8 | 14.8 |
10 | たわらノーロード NYダウ | 0.4 | 9 | 6.1 |
11 | 日興インデックスファンドNYダウ30(アメリカ株式) | 0.4 | 13 | 3.1 |
12 | SMT 米国株配当貴族インデックス・オープン | 0.0 | 14 | 0.7 |
13 | 野村インデックスファンド・米国株式配当貴族 | 0.0 | 3 | 51.8 |
14 | iFree S&P500インデックス | -0.8 | 5 | 35.4 |
1位 楽天・全米株式インデックス・ファンド (楽天・バンガード・ファンド)
圧倒的に人気を集めているのが楽天・バンガード・ファンドの一つである楽天・全米株式インデックス・ファンド、通称、楽天VTI。
設定当初から毎月10億円以上の資金流入が続いていますが、2018年6月以降はさらに増加傾向にあり、ここ数カ月は25億円/月を超えています。
尚、2018年9月19日に第1回目の決算が公開され、その実質コストの高さが話題になりましたが、2018年10月以降の資金流入を見るとその影響は見られません。
2位 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
2位はS&P500との連動を目指すeMAXIS Slim米国株式(S&P500)。2018年7月3日の設定ですが、いきなりの2位です。
設定直後より毎月10億以上の資金流入があります。
米国株式インデックスファンドでは、上記、楽天・全米株式インデックス・ファンドと人気を二分する存在となっています。
NYダウ・インデックスの資金流出入額比較
NYダウ連動型の主なインデックスファンドの資金流出入額を比較したのが下図。
2018年12月は株価暴落で売却や購入を中止する方が多かったのか、各ファンド、資金流入額が大きく減っています。上記、楽天・全米株式やeMAXIS Slim米国株式が若干の減少に留まっているのとは対照的です。
2019年1月になり資金流入も増えてきていますが、NYダウは月毎に資金流入額が大きく変わる特徴があります。
その中で、比較的安定した人気を集めているのがiFree。iFree NYダウインデックスがNYダウ連動型の中では1位となります。また信託報酬は高めですが、eMAXIS NYダウも一定の人気を集めています。
一方、信託報酬はiFreeと同率首位ながら、なかなか伸びないのがたわらノーロード。毎月1億以下の資金流入に留まっています。
iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
NASDAQ100との連動を目指す低コストのインデックスファンド iFree NEXT NASDAQ100インデックスが2018.8.31に設定されました。
2018年9月の月次資金流入額は2.8億、まずまずの出足でしたが、2018年11月以降は毎月1億以下となっています。
参考記事iFreeシリーズに「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」「iFreeレバレッジ S&P500」新規設定。
リターンの比較。実質コスト(信託報酬+α)が騰落率に反映されているか?ベンチマークとの乖離(トラッキングエラー)は?
各米国株式インデックスの騰落率の比較
先ずは2019.1月末日時点の6カ月、1年騰落率を比較してみます。各ベンチマークで代表的な(運用期間が長い)ファンドで比較します。
インデックス(ファンド) | 6カ月騰落率 | 1年騰落率 |
NYダウ(iFree) | -2.13% | -2.26% |
S&P500(iシェアーズ) | -5.32% | -3.46% |
S&P500配当貴族(SMT) | -3.26% | -3.24% |
CRSP USトータル・マーケット[VTI](楽天・全米) | -5.76% | -3.33% |
FTSEハイディビデンド・イールド・インデックス[VYM](楽天・米国高配当) | -5.08% | -5.53% |
ここ数カ月、米国株式は軟調が相場が続いていますが、最も下落率が大きかったのが、直近6カ月ではCRSP US トータル・マーケット(楽天VTI)、1年でFTSEハイディビデンド・イールド・インデックス(楽天VYM)。
一方、NYダウは下落率が小さくなっています。
次にNYダウとS&P500について直近5年間の年率リターン、リスク、シャープレシオをまとめます。
尚、参考までに先進国株式(MSCI Kokusai)とも比較します。
インデックス(ファンド) | 年率リターン | 年率リスク | シャープレシオ |
NYダウ(SMT) | 12.86% | 16.59% | 0.78 |
S&P500(iシェアーズ) | 10.80% | 16.09% | 0.67 |
MSCI kokusai(SMT) | 7.84% | 15.88% | 0.49 |
直近5年間では、NYダウがリターンで勝り、若干リスクは高くなっていますが、シャープレシオ大という結果です。
NYダウ、S&P500を、先進国株式[MSCI kokusai]と比較すると、リターンは大きく上回り、リスクは若干高くなっているもののシャープレシオでは勝っています。ここ数年の米国株式の強さがわかります。勿論、今後もこの成績が続くかどうかはわかりませんが。
尚、各米国株式指数のパフォーマンスの詳細は下記記事をご覧ください。
参考記事米国株式(アメリカ株)インデックスファンド、そのベンチマーク(指数)を解説、比較。
ベンチマークとの乖離(トラッキングエラー)
NYダウとS&P500に連動を目指す各インデックスファンドのベンチマークとの乖離(トラッキングエラー)を調べます。
騰落率と実質コストの関係から乖離を評価します。
ここでは、多くのファンドがベンチマークとの乖離がないであろうという前提のもと、これから外れたファンドを乖離が大きいと判定します。
*騰落率は各ファンドの基準価額から「しんたろう」が独自に計算した結果です。
*実質コストに対する騰落率を見ていきますが、期中に信託報酬の変更があったファンドは、その期間に応じて按分した実質コストを用います。
*騰落率は全て分配金再投資時(分配金課税無)の基準価額より計算。
騰落率とコストの関係は、理想的にはインデックス騰落率から決まる傾き、切片の直線になります。ただ、外国株式の場合、配当課税を適切に考慮したインデックス騰落率がわかりませんので、管理人の主観で、図中グレーの点線を引いています。
NYダウ連動型インデックスファンドのベンチマークとの乖離
2019.1末日時点の1年騰落率と実質コストの関係を見てみます。
iFree、eMAXIS、日興の各ファンドは、そのコストに応じた騰落率を示しています。
一方、SMTは若干上振れしているようです。
たわらノーロード、先月までは実質コストの高さに起因した低い騰落率で同一直線上にのっていたのですが、今月は上振れしているように見えます。コスト要因以外で上方に乖離しているか、あるいは実質コストが低下してきている可能性もあります。今後も、継続して監視していきます。
そして最もコストの低いiFreeが騰落率でもトップとなっています。
S&P500連動型インデックスファンドのベンチマークとの乖離
データ数を増やすため、日興AMのETF(1547) 上場インデックスファンド米国株式(S&P500)(分配金再投資)、及び農林中金<パートナーズ>つみたてNISA米国株式S&P500を追加します。
*1547は、現在、先物運用ですが、現物運用への変更、さらに信託報酬引下げ、そしてつみたてNISA対象となるよう約款変更を予定しています。
1年騰落率
先ずは2019.1末日時点の1年騰落率と実質コストの関係を見てみます。
(eMAXIS Slim、農林中金は設定から1年未満の為データはありません)
S&P500の場合、騰落率のコスト依存性があまり明確でなく、どのファンドがベンチマーク通りの運用がなされているか分かりません。
ただ、日興ETFは大きくマイナス乖離、そしてiSharesは上振れしている可能性が高いと推測します。
3カ月騰落率 ~eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の運用成績はいかに?~
次に設定から半年のeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の運用成績を見る為、2019.1末日時点の3カ月騰落率を見てみます。
*eMAXIS Slim、農林中金は実質コストが初回決算前で不明の為、信託報酬でプロットしてあります。
圧倒的に信託報酬の低いeMAXIS Slim、漸く騰落率でもiFreeを上回るようになりました。
iSharesは2018年10月に大きな上振れを起こしている事、さらに多くの月で騰落率が高い傾向にあり、これが上図3カ月騰落率に反映されています。
おすすめの米国株式インデックスファンドは?
(注)「おすすめ」というのは必ず利益が出るという意味ではありません。他の類似ファンドに比べ、同等以上の成績を残すであろうと管理人の主観・推測で選んだものです。最終的なファンドの選択はご自身の判断で行ってください。
NYダウ
iFree NYダウ・インデックス
設定から1年半以上たち、順調に純資産を伸ばしている事、そして低いコストに応じた高い騰落率となっています。
S&P500
信託報酬最安値の
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
S&P500の場合、運用の安定性の確認が難しいのですが、漸く騰落率でもiFree S&P500インデックスを上回るようになった事から、今後の期待も込めてeMAXIS Slimをお薦めとしました。
ただ、慎重を期す方は、もうしばらく様子を見た方が良いでしょう。
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)
CRSP USトータル・マーケット・インデックス、そしてVTIに気軽に投資できるファンド。
初回決算では実質コスト0.311%と高めでしたが、2期目の途中結果で下がっていると確認された事、そして小型株を含めた米国株式に投資できる唯一無二の存在だけに、そのベンチマークに拘りがあり、米国ETF VTIへの直接投資の代わりとして、つみたてNISA等で購入したい方にはお勧め。
まとめ
以上、米国株式に投資するインデックスファンドについて、純資産総額、資金流出入額、騰落率、及びベンチマークとの乖離を調査しました。
圧倒的な人気を誇るのが楽天・全米株式・インデックスファンド。毎月10~40億円程度の資金流入があり、純資産総額も既に300億円を超えています。
NYダウでは、iFree NYダウ・インデックス。低い信託報酬と、それに応じた高い騰落率で、純資産総額も古参のSMT、eMAXISを追い越しました。
S&P500は、2018年7月に新規設定されたばかりのeMAXIS Slim米国株式(S&P500)が、今まで人気だったiFree S&P500インデックスを資金流入額で追い越し、圧倒的な強さを見せています。そして、騰落率でもiFreeを上回るようになってきました。
楽天・全米株式インデックスファンドやeMAXIS Slim米国株式(S&P500)は、
販売会社 SBI証券、楽天証券 、マネックス証券、カブドットコム証券
などのネット証券で取扱っています。
また、個人型確定拠出年金(iDeCo)では、
楽天・全米株式インデックスファンドを楽天証券 iDeCo、
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は、マネックス証券 iDeCo、SBI証券 iDeCo(セレクトコース)
で取扱っています。
米国株式の各種インデックスについての解説は下記記事を参照して下さい。
他のアセットクラスの最新の情報・結果は下記記事を参照して下さい。
米国株式インデックスファンド(本記事)