ピクテ投信投資顧問が運用し、アクティブファンドながらノーロード、そして比較的信託報酬を抑えたiTrustノーロード・シリーズの一つで、国内の株式に投資するiTrust日本株式、楽天証券の個人型確定拠出年金(iDeCo)にも採用されているファンドです。
そのiTrust日本株式のパフォーマンスを、国内株式の代表的指数で本ファンドの参考指数にもなっているTOPIXとの比較を中心に評価します。
[最終更新日:2021.3.26]最新の情報に更新。
本記事は原則2021年2月末日時点の情報に基づき記載しています。
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見出し
iTrust日本株式の基本情報
先ず、iTrust日本株式の基本情報をまとめます。
運用会社 | ピクテ投信投資顧問株式会社 |
設定日 | 2016年6月30日 |
信託期間 | 無期限 |
運用形態 | アクティブファンド |
投資形態 | ファミリーファンド |
ベンチマーク | 無 |
参考指数 | TOPIX(配当込) |
購入時手数料 | 無(ノーロード) |
信託財産留保額 | 無 |
信託報酬(税込) | 0.979% |
実質コスト | 1.126%(2020.7.20決算時点) |
純資産総額 | 19.2億円(2021.3.25時点) |
マザーファンド 純資産総額 | 91.10億円(2020.1.20時点) |
分配金実績 | 無 |
つみたてNISA | 対象外 |
個人型確定拠出年金(iDeCo) | 楽天証券 |
SBI証券ポイント還元年率 | 0.10% (対象投資信託1,000万円以上保有で0.20%) |
楽天証券ポイント還元年率 | ---%(*) |
松井証券現金還元年率 | 0.030% |
(*)楽天証券 2022.4より投資信託保有による毎月のポイント還元は廃止され、残高が初めて一定の金額を超えたときのポイント付与に変更。
iTrust日本株式は、設定が2016年と比較的新しく純資産総額は20億円にも満たないファンドです。
但し、マザーファンドは2009年設定と10年以上の実績があり、同じマザーファンドで運用するファンドとしてピクテ日本ナンバーワン・ファンド(毎月決算実績分配型)[2009.1.30設定、信託報酬 1.595%]があります。
iTrust日本株式の運用方針、投資対象
運用方針
主に日本のナンバーワン企業の株式に投資するファンドです。
ナンバーワン企業の抽出 (流動性・売上高トップシェア、ブランド力などの競争優位性)
ボラティリティ・スクリーニング (ボラティリティの高い銘柄を除外)
最終ポートフォリオ (重点分析でポートフォリオ構築、約30-60銘柄)iTrust日本株式 交付目論見書(2020/10)より抜粋して引用。
ベンチマークはありません。参考指数はTOPIX(配当込)です。
投資対象
2020年2月末時点の組入上位10銘柄は下記の通り。また組入銘柄数は53銘柄です。
銘柄名 | 業種 | 比率 | |
1 | 東京エレクトロン | 電気機器 | 2.3% |
2 | 日立製作所 | 電気機器 | 2.2% |
3 | デンソー | 輸送用機器 | 2.2% |
4 | ソニー | 電気機器 | 2.2% |
5 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 銀行業 | 2.2% |
6 | 富士通 | 電気機器 | 2.1% |
7 | 豊田自動織機 | 輸送用機器 | 2.1% |
8 | 日本電産 | 電気機器 | 2.1% |
9 | 村田製作所 | 電気機器 | 2.1% |
10 | セブン&アイ・ホールディングス | 小売業 | 2.1% |
No.1というだけあって有名企業、時価総額上位の企業が組入上位を占めています。また、トップ10を見る限り概ね均等に保有しているようです。
iTrust日本株式のパフォーマンス (TOPIXと比較)
*以下、年率リターン・リスクは月次データ(終値)より計算。またシャープレシオは、無リスク資産の収益率0としています。
*基準価額は、各運用会社のサイトまたは投資信託協会より入手。分配金がある場合は、分配金再投資の価額に独自に変換。
*TOPIXは野村 NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信【1306】のデータ使用。
ピクテ日本ナンバーワン・ファンド(毎月決算実績分配型)で比較・評価
前述のようにiTrust日本株式は設定から日が浅く、評価するのに十分な運用期間があるとは言えませんので、同じマザーファンドで運用するピクテ日本ナンバーワン・ファンド(毎月決算実績分配型)(以下、ピクテ日本NO1と略して表記する場合があります)の基準価額で評価します。
ただし、両者には信託報酬に大きな差があります。そこで、リターン(年率)を評価する際は、ピクテ日本ナンバーワン・ファンドのリターンをiTrust日本株式のリターンに換算して表記します。
ピクテ日本ナンバーワン・ファンドの年間騰落率をT1、実質コストをS1、iTrust日本株式の年間騰落率をT2、実質コストS2としたとき、
T2 = (T1+1) x (1-S2) / (1-S1) -1
尚、2020年の年間騰落率はピクテ日本ナンバーワン・ファンドが10.1%、iTrust日本株式が10.9%ですが、上式でピクテ日本NO1の騰落率からiTrust日本株式の騰落率を計算すると10.8%となり概ね一致します。また2017~2019年の3年間で年間騰落率の差(換算値と実際の値の差)は最大でも0.06%ptと十分小さく、この換算値で評価しても問題ないでしょう。
基準価額のチャート
ピクテ日本ナンバーワン・ファンドの設定日(2009年1月30日)を基準日(基準価額10,000)とし、TOPIX【1306】と比較したチャートを示します。
さらに、2016年6月30日に設定されたiTrust日本株式の基準価額を、設定日時点でピクテ日本ナンバーワン・ファンドの基準価額に合わせた値もプロットします。
チャートを見る限り、ピクテ日本ナンバーワン・ファンドはTOPIXに対して大きく下回っています。ただ、これは設定直後の一時期だけの影響を大きく受けた結果のようにも見えます。
また、iTrust日本株式は、ピクテ日本ナンバーワン・ファンドより若干ですがその信託報酬が低い分、上回っている事がわかります。
以下、運用成績を詳細に分析していきます。
設定来の運用実績(リターン・リスク)
2021年2月末日時点の設定来(12年1カ月)のリターン・リスクを見てみます。
表中、赤字はピクテ日本ナンバーワン・ファンドから信託報酬/実質コストの差分を考慮して計算したiTrust日本株式の騰落率です。(リスクも厳密には異なりますが、ここでは一定と仮定)
ピクテ日本ナンバーワン [iTrust日本株式] | TOPIX | |
年率リターン | 7.84% [8.52%] | 9.50% |
年率リスク | 16.01% | 16.92% |
シャープレシオ | 0.49 [0.53] | 0.56 |
*一般的にシャープレシオが大きいほど投資効率が良いとされています。
設定来では、ピクテ日本ナンバーワン・ファンドはTOPIXに対して若干リスクは小さくなっているもののリターンで大きく負けており、シャープレシオも小さくなっています。
信託報酬が低くなったiTrust日本株式でも、その差は小さくなるとはいえ依然TOPIXには勝てていません。
5年間の運用成績(2009年1月~2021年2月)
上述の現時点までの運用成績は、ある一期間の基準価額の暴騰・暴落に大きく左右され、ファンドの比較・評価として十分とは言えません。
そこで、2009年1月から5年間、さらに2009年2月から5年間・・・2016年2月から5年間と、起点(投資月)を1カ月ずつずらして、それぞれの5年間のリターン、リスクを計算します。全部で86個(区間)のデータとなります。
この複数の5年間のリターンの平均、最大値、最小値をプロットしたのが下図。
ピクテ日本ナンバーワン・ファンドはTOPIXに対して最小値以外は負けていますが、信託報酬の差分を考慮して計算したiTrust日本株式だと若干ですがTOPIXを上回っています。
下表に5年間のリターン、リスクの平均値をまとめます。(ここでのリターン、リスク、シャープレシオは86区間の平均値を示したもので、厳密な意味でのリスクやシャープレシオとは異なります。)
表中、赤字はピクテ日本ナンバーワン・ファンドから信託報酬・実質コストの差分を考慮して計算したiTrust日本株式の騰落率です。(リスクも厳密には異なりますが、ここでは一定と仮定)
ピクテ日本ナンバーワン [iTrust日本株式] | TOPIX | |
年率リターン | 10.32% [11.01%] | 10.81% |
年率リスク | 15.71% | 16.68% |
シャープレシオ | 0.66 [0.70] | 0.65 |
リターンでTOPIXより若干負けるピクテ日本ナンバーワン・ファンドですが、リスクは小さく、シャプレシオはTOPIXより僅かですが大きくなっています。
さらに実質コストの差分を考慮して計算したiTrust日本株式だと、リターンでも勝りシャープレシオの差も大きくなります。
尚、この86区間の5年間で(信託報酬の差分を考慮して計算した)iTrust日本株式のリターンはTOPIXに対し65勝21敗と勝ち越しています。(ピクテ日本ナンバーワン・ファンドだと44勝42敗)
また、2010年8月以降で見ると(iTrust日本株式換算で)65勝2敗とさらに大きく勝ち越しています。
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1年間騰落率 年別比較
アクティブファンドの評価として重要な要素は、常にインデックスに対して勝ち続ける事が出来るかという点です。
そこで1年騰落率(リターン)を年別に比較してみます。
2017年以降はiTrust日本株式の実際のデータ、2016年以前はピクテ日本ナンバーワン・ファンドから換算した値を用います。
騰落率が高い方 |
年 | iTrust日本株式 | TOPIX | 差 |
2020年 | 10.9% | 7.3% | 3.6% |
2019年 | 16.9% | 18.0% | -1.1% |
2018年 | -15.0% | -16.1% | 1.1% |
2017年 | 21.1% | 22.1% | -0.9% |
2016年 | 1.8% | 0.2% | 1.6% |
2015年 | 13.0% | 11.9% | 1.1% |
2014年 | 14.3% | 10.1% | 4.2% |
2013年 | 51.5% | 54.1% | -2.6% |
2012年 | 15.3% | 20.6% | -5.4% |
2011年 | -12.1% | -17.0% | 4.9% |
2010年 | -11.6% | 0.9% | -12.6% |
2010年~2020年の11年間でiTrust日本株式はTOPIXに6勝5敗と僅差ながら勝ち越しています。
尚、TOPIXとの差が小さい事もiTrust日本株式の特徴です。2010年こそ10%を超える差がついていますが、それ以降は最大5%程度の差に収まっています。
iTrust日本株式の分配金
iTrust日本株式は分配金を出した実績はありません。
姉妹ファンドとも言えるピクテ日本ナンバーワン・ファンド(毎月決算実績分配型)が原則毎月分配金を出しているのとは対照的です。
これから資産を築いていこうとする資産形成期においては分配金を出さない投資信託の方が有利です。
分配金を出すか否かは運用会社が決定しますが、iTrustシリーズは「分配金をお支払いする事よりも、中長期的な基準価額の上昇を目指した運用を行っています。」(ピクテ公式サイトより引用)となっており、なるべく分配金を出さない方針のようで、ここは評価できるポイントです。
勿論、保有する株式から出た配当はファンドの資産となり、基準価額の上昇につながります。
iTrust日本株式の人気・評判
月次資金流出入額、純資産総額からiTrust日本株式の売れ行き・人気を見てみます。
*月次資金流出入額は純資産総額の増減に日々の基準価額変動を考慮して計算した概算値。
毎月1億以下の資金流入に留まり、あまり売れているとは言えません。ただ、資金流出の月は殆どありません。
純資産総額も設定から5年近くで漸く20億円と決して大きな資産額ではありません。
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まとめ
以上、iTrust日本株式のパフォーマンスを、同じマザーファンドで運用するピクテ日本ナンバーワン・ファンドのデータも用いてTOPIXと比較してきました。
iTrust日本株式はピクテ日本ナンバーワン・ファンドから信託報酬を大幅に引き下げたファンドですが、その引下げの効果もあってTOPIXと概ね同等、シャープレシオをも考慮すると若干上回る成績を残していると言って良いでしょう。特に、ここ数年は好調な成績を残しています。
ただ、そのパフォーマンスはTOPIXと大きく変わるものではありません。No.1企業という事で必然的に時価総額上位の企業が多くなり、結果的にTOPIXと類似してくる点は致し方ないところかもしれません。
尚、ピクテ投信投資顧問は各種情報発信(投資情報サービスinfoなど)にも力を入れている会社です。また、投資の基礎となる学習資料も充実しています。例えば「資産運用の基礎」などをご覧になってみては如何でしょう?
販売会社
iTrust日本株式は下記ネット証券などで購入できます。
SBI証券
投資信託保有で毎月Tポイント/Pontaポイント/dポイントがもらえます。さらにT or Pontaポイントで投資信託を購入する事も出来ます。
公式サイト SBI証券
楽天証券
楽天ポイントで投資信託を購入出来ます。また、楽天カード(クレジットカード)で投資信託を積立購入する事が出来ます(上限5万円/月)。勿論ポイント還元があります。
公式サイト楽天証券、楽天カード
また個人型確定拠出年金(iDeCo)では楽天証券で購入出来ます。
*これらは全て過去のデータですので、将来のリターンを保証するものではありません。投資は自己責任でお願いします。また、iTrust日本株式のデータはピクテ日本ナンバーワン・ファンドから推測したデータに基づい評価している事にも注意して下さい。
iTrustシリーズで海外株式(主に先進国)に投資するiTrust先進国株式は下記記事を参照してください。
他の人気・低コストのアクティブファンド一覧(国内株式)は下記ページを参照して下さい。