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前回、前々回とインフレを考慮した場合の、年代別必要老後資金について書いてきましたが、今回は、その資金を準備する為に、毎年、どの程度、貯蓄、積立てていけば良いかを計算してみます。
前回同様、「60歳定年後も、年金を受給できるまで(64歳)、その間の生活費を賄う分だけの収入は確保する事」とします。
また、老後の生活費は「プチゆとり」として年間支出350万円、最低限とゆとりある生活の中間とします。
尚、貯蓄、資産運用の年利回りはインフレ率と同じとします。
(注)ここで計算する貯蓄額は全て老後資金の為のものです。教育資金や住宅購入資金が必要な方は別途用意する必要があります。
見出し
老後資金として59歳までに必要な老後資金
前回のおさらいになりますが、この条件での必要な老後資金は、
インフレ 率 | スライド 調整率 | 現時点での年齢 | ||||
45歳 | 50歳 | 55歳 | 60歳 | |||
1 | 0% | 0% | 2,189万円 | |||
2 | 2.0% | 0% | 2,946万円 | 2,668万円 | 2,417万円 | 2,189万円 |
3 | 2.0% | 0.9% | 5,298万円 | 4,508万円 | 3,807万円 | 3,187万円 |
4 | 2.0% | 1.3% | 6,139万円 | 5,186万円 | 4,335万円 | 3,577万円 |
となります。
老後資金を準備する為の毎年の貯蓄・積立額
上記の老後資金を準備する為、必要な毎年の貯蓄・積立額を計算します。
貯蓄・積立は、現時点からスタートするとします。例えば、現時点で50歳ならば、50歳から老後資金の為の積立を開始します。(現時点で60歳の方は計算の対象外になります)
退職金がない場合
先ずは、退職金がないという前提で、老後資金を全て毎年の貯蓄だけで準備する場合の年間貯蓄額です。
インフレ 率 | スライド 調整率 | 現時点での年齢 | ||||
45歳 | 50歳 | 55歳 | 60歳 | |||
1 | 0% | 0% | 146万円 | 219万円 | 438万円 | --- |
2 | 2.0% | 0% | 170万円 | 244万円 | 464万円 | --- |
3 | 2.0% | 0.9% | 306万円 | 412万円 | 732万円 | --- |
4 | 2.0% | 1.3% | 355万円 | 474万円 | 833万円 | --- |
45歳からスタートするとしても、マクロ経済スライドが適用されたら、結構な金額ですね。
詳細は省きますが、国税庁の「民間給与実態統計調査結果」の平均給与に、インフレ率と同じ賃金上昇率を加味したとしても総収入(税引前)の50%を老後資金の貯蓄にまわす必要があります。平均給与の方だと、ちょっと非現実的な数字です。
50歳以上になると、もう手遅れとも思われる金額です。
退職金がある場合
次に、退職金を考慮して計算してみます。
退職金額は、厚生労働省が公表している、「平成25年就労条件総合調査結果」の値を使います。これによると、大卒、勤続年数35年以上という条件で、2,156万円となっています。高卒・現業職だと1,484万円です。
ただ、これも現時点(正確には平成25年)での数字ですので、インフレ率と同率で伸びていくと仮定すれば、各年齢に応じて下記の金額になります。
インフレ 率 | 現時点での年齢 | ||||
45歳 | 50歳 | 55歳 | 60歳 | ||
1 | 0% | 2,156万円 | |||
2 | 2.0% | 2,902万円 | 2,628万円 | 2,380万円 | 2,256万円 |
インフレ 率 | 現時点での年齢 | ||||
45歳 | 50歳 | 55歳 | 60歳 | ||
1 | 0% | 1,484万円 | |||
2 | 2.0% | 1,997万円 | 1,809万円 | 1,638万円 | 1,484万円 |
この退職金を差引いて、必要な貯蓄額を計算してみます。
退職金は全て老後資金にまわすという前提です。
インフレ 率 | スライド 調整率 | 現時点での年齢 | ||||
45歳 | 50歳 | 55歳 | 60歳 | |||
1 | 0% | 0% | 2万円 | 3万円 | 7万円 | --- |
2 | 2.0% | 0% | 3万円 | 4万円 | 7万円 | --- |
3 | 2.0% | 0.9% | 139万円 | 172万円 | 274万円 | --- |
4 | 2.0% | 1.3% | 187万円 | 234万円 | 376万円 | --- |
インフレ 率 | スライド 調整率 | 現時点での年齢 | ||||
45歳 | 50歳 | 55歳 | 60歳 | |||
1 | 0% | 0% | 47万円 | 71万円 | 141万円 | --- |
2 | 2.0% | 0% | 55万円 | 78万円 | 150万円 | --- |
3 | 2.0% | 0.9% | 191万円 | 246万円 | 417万円 | --- |
4 | 2.0% | 1.3% | 239万円 | 308万円 | 518万円 | --- |
やはり退職金の威力は大きいです。45歳なら、スライド調整率1.3%でも、大卒、高卒(現業職)、それぞれ187万円、239万円ですので、だいぶ現実的な数字に近くはなってきます。
インフレ率と同等の賃金上昇を考慮すると、大卒の場合、総収入(税引前)の約25%を老後資金として貯蓄する事になります。25%なら可能かもしれません。ただ、教育資金や住宅購入資金も合わせて考えると、厳しい事に変わりありません。
50歳、55歳からスタートだと、依然、巨額の貯蓄が必要です。
それでは、どうすれば良いの?
かなり悲観的に数字になってしまいましたが、
「こんな貯蓄とても無理、このままだと下流老人になるか、老後破産してしまう」という方も多いかと思います。
今回、運用利回りをインフレ率と同じ2%と仮定しましたが、インフレ率を上回る投資をすれば良い? そりゃそうですが。。。
そんなところに、勧誘の電話、「年利回り5%のリターンが期待できる商品があります。リスクも20%ありますけど。」。
しかし、リスクをとる十分な覚悟が無いなら、安易に投資に走るべきではないと「しんたろう」は考えています。
もっと確実な方法があります。それは支出を減らす事です。
月額22万円って本当に最低限?
最低限と言われる生活費、月額22万円。生活保険文化センターの調査結果ですが、別の調査結果も見てみましょう。
総務省統計局が公表している 「家計調査(二人以上の世帯)平成28年(2016年)7月分速報 (平成28年8月30日公表)」によると、
無職世帯(年齢73.3歳、世帯人数2.43人)の実際の支出額は、
実支出が25.1万円、ここから住居費、贈与金、自動車等購入費を除くと、20.5万円となっています。
先の最低限の生活22万円よりむしろ少ないぐらいです。これから考えると、決して22万円でも最低限というほどの生活ではないように思われます。
最低限と言われる生活費での必要貯蓄額
この最低限の生活22万円の生活費で、必要な貯蓄額を計算すると、(60~64歳も収入有)
インフレ 率 | スライド 調整率 | 現時点での年齢 | ||||
45歳 | 50歳 | 55歳 | 60歳 | |||
1 | 0% | 0% | 0 | |||
2 | 2.0% | 0% | 0 | |||
3 | 2.0% | 0.9% | 132万円 | 163万円 | 257万円 | --- |
4 | 2.0% | 1.3% | 181万円 | 225万円 | 359万円 | --- |
となります。
退職金を入れると、45歳、スライド調整率=1.3%で、大卒、高卒(現業職)、それぞれ年間貯蓄額13万円、66万円です。これなら十分可能ですよね。
まとめ
今後、2%のインフレが続くとすれば、巨額な老後資金が必要になり、それをこれから毎年積立てて備えるにしても、その年間貯蓄額は「プチゆとり」でも厳しい数字になります。
ただし、最低限と言われる生活費なら、十分貯蓄可能な金額かと思えます。
先ず、この最低限と言われる生活費を確保する事から考えてみてはどうでしょう?
そして、これが確保できる見通しが立った後で、それ以外の資金を投資にまわし、リスクを覚悟しつつも、「プチゆとり」を目指すのも一つの方法かと思います。
ただ、現時点での生活費が、最低限と言われる生活費を大きく上回っている場合は、老後になってから急に節約しようと思っても難しいものがあります。今から節約する事が重要です。
もう一点、今回の計算は、死ぬまで通常の生活を送れるという前提です。通常の生活とは、決められた支出の中でやりくりできる生活という意味です。例えば、食事が作れなくなる、介護が必要となる、さらに有料老人ホームに入るなどの費用は一切含まれていません。
繰返しになりますが、本記事は、不安を煽って、積極的な投資を勧めるものではありません。
インフレに負けない資産運用なら定期預金でも十分です。(少なくとも今までは)
最新の銀行、信用金庫の定期預金金利は姉妹サイトの下記記事にまとめてあります。
第1回本当に必要な老後資金(1) ~インフレを考慮した年齢別の必要資金~
第2回本当に必要な老後資金(2) ~インフレを考慮した年齢別の必要資金~ 64歳まで働いた場合
本記事本当に必要な老後資金(3) ~今から準備する場合、年間いくら積立てたらよいか?~