ある利率で運用したら将来いくらになるの?
目標とする金額を貯めるには毎月どれだけ積立すればよいの、
一生懸命貯めた老後資産、これからどれだけ受け取れるの?
等々、
資産運用、そして将来のライフプラン、キャッシュフローを考えるうえで必要となる計算方法について解説します。
ここでは、直接数式で計算する方法、EXCELの関数を使う方法、二つの方法を紹介します。
スポンサーリンク
見出し
一定の利率で複利運用した場合の将来の資産額
今ある資金(元本)を、ある利率で運用したら将来いくらになる? ~終価係数~
例えば、100万円を年利2.0%(1年複利)で運用したら10年後にいくらになる? といった計算です。
元本P円、年利をr%、運用年数をn年とすれば、将来の資産額Fは、
F = P x ( 1 + r ) n (式1)
で簡単に計算できます。
下線部の係数をファイナンシャルプランナーの世界では終価係数と言います。
これぐらいなら電卓でも計算できますね。
EXCEL FV関数
次は、EXCEL関数を使って計算してみます。
FV関数を使います。
F = FV (r, n, 0, -P) (式2)
元本Pにはマイナスをつけて下さい。
これだけで式1と同じ計算ができます。
積立貯蓄・投資した場合の将来の資産額
前章で、ある元本が将来いくらになるかの計算を解説しましたが、実際の貯蓄・運用では毎月・毎年、積立てていく場合が多いですね。
毎年(毎月)積立しているけど、将来いくらになるの? ~年金終価係数~
毎年10万円ずつ積立してるけど、年利2%だと10年後いくらになるの? といった計算です。
毎年の積立額をT円、年利をr%、運用年数n年とすれば、n年後の資産額Fは、
F= T x { ( 1 + r ) n - 1 } / r (式3) *詳しくは本記事最後の備考欄参照
下線部の事を年金終価係数と言います。
EXCEL FV関数
または、今回もFV関数を使って、
F= FV (r, n, -T) (式4)
式3,4とも積立は期末に行う場合です。要は年間の積立を12月31日に行う、即ち、積立を開始した年の利息は付かないとして計算しています。
もし、期首(1月1日)に積立を行って、その年も1年分の利息が付く場合は、下記のように計算してください。
F= T x { ( 1 + r ) n - 1 } / r x (1+ r) (式5)
F= FV (r, n, -T, 0, 1) (式6)
毎月積立の場合
実際は、毎月、積立する場合が多いですよね。その時は、
式3~式6の年利を月利に、運用年数を月数に、そして毎月の積立額に変えるだけです。
例えば、(式6)の場合、
F= FV (r/12, n年 x 12 , -T/12 , 0, 1) (式7)
でOKです。
月利ですが、(式7)では単純に年利を12で割ってます。多くのサイトでもこのように紹介されているようです。しかし、複利での計算では、
月利 = (1 + 年利r )1/12 -1 (式8)
となりますので、注意して下さい。
将来の資産を用意するのに必要な元本
将来必要な資金、ある利率で運用する場合、元本いくら必要? ~現価係数~
例えば10年後に100万円必要。年利2.0%(1年複利)で運用したとして、元本がいくら必要? といった場合です。
将来必要な資金をF円、年利をr%、運用年数をn年とすれば、元本Pは、
P= F x ( 1 + r ) -n (式9)
(式1)のn乗にマイナスが付くだけです。下線部を現価係数といいます。終価係数の逆数です。
EXCEL PV関数
あるいは、EXCELのPV関数を使って、
P= PV (r, n, 0, -F) (式10)
今回もFの前にはマイナスをつけてください。
スポンサーリンク
将来の資産を用意するのに必要な積立額
前章で解説した現価係数の積立版です。
将来必要な資金、ある利率で運用する場合、毎年(毎月)いくら積立てれば良いの? ~減債基金係数~
何か具体的な目標、例えば住宅資金、教育資金などの決まった額が将来必要になる、その為に毎年(毎月)いくら積立しなければならないか、資産運用するにあたって最も重要な計算ですね。
例えば、10年後にマンション購入の頭金1,000万円が必要、毎月いくら積立てれば良いの? といったケースです。
将来必要な資金をS円、年利をr%、運用年数をn年とすれば、毎年の積立額Tは、
式5から、
T = S x r / { ( 1 + r ) n - 1 } (式11)
これで毎年(毎月)の積立額がわかります。下線部を減債基金係数と言います。年金終価係数の逆数です。
EXCEL PMT関数
または、EXCELのPMT関数を使います。
T = PMT (r, n, 0, -S) (式12)
式11,12は期末に積立を行う場合ですが、期首の場合は、
T= S x r / [{ ( 1 + r ) n - 1} x (1+ r) ] (式13)
T = PMT (r, n, 0, -S, 1) (式14)
となります。
毎月積立で計算する場合は、年利を月利、運用年数を運用月数に変えてください。
資産の取り崩し、可能な取り崩し額
貯めた資産、これから毎年いくらずつ受け取れる? ~資本回収係数~
例えば老後資金として1000万円貯めました。これからも年利2.0%(1年複利)で運用しながら取り崩す(おろしていく)場合、毎年、いくらもらえる? 年金みたいなものですね。
現時点での資産額P円、年利をr%、これからn年かけて取り崩すとすれば、毎年受け取れる金額Wは
W = P x r x (1+r)n / {(1+r)n -1} (式15) *詳しくは本記事最後の備考欄参照
下線部の係数を資本回収係数と言います。
EXCEL PMT関数
またはEXCELのPMT関数を使うと、
W = PMT(r, n, -P, 0) (式16)
Pの前にはマイナスをつけます。
この計算、実は、
Pが借入額、rがローン金利、nは返済年、Wが毎年の返済額と考えると、ローンの返済額の計算にもなります。
尚、上記計算 式15,16は、毎年期末におろしていった(年金を受取った)場合です。
期首におろす(受取る)場合は、
W = P x r x (1+r)n / [(1+r) x {(1+r)n -1}] (式17)
または、
W = PMT(r, n, -P, 0, 1) (式18)
となります。
一定金額(年金)を一定の期間、取り崩す(受け取る)為に必要な資産額
ある年金額をもらうためには、いくら貯める必要があるの? ~年金現価係数~
例えば毎年100万円、10年間の私的年金が欲しい、その為には、いくら貯めておく必要があるの? 老後の資金計画に必要な計算ですね。
毎年受取る年金をW, 年利をr%、これからn年かけて取り崩すとすれば、現時点で必要な元本Pは、
P = W x {(1+r)n -1} / {r x (1+r)n } (式19)
下線部の係数を年金現価係数と言います。資本回収係数(式15)の逆数です。
EXCEL PV関数
あるいはEXCEL PV関数を使い、
P = PV(r, n, -W) (式20)
となります。
この計算もローンの場合にも使え、毎年の返済額をW円とした場合の借入可能総額となります。
尚、式19,20とも、期末に年金を受け取る時の計算です。
期首に受取る場合には、
P = W x (1+r) x {(1+r)n -1} / {r x (1+r)n } (式21)
P = PV(r, n, -W, 0, 1) (式22)
となります。
将来目標とする資産額、決まった元本(積立額)、必要な運用利回りは? ~EXCEL RATE関数~
あるいは、元本、積立額、将来の受取額がわかっている金融商品、この商品の利率っていくら? って場合も同じです。
ここでは、すべてEXCELのRATE関数を使います。
EXCELのヘルプによると
RATE(期間, 定期支払額, 現在価値, [将来価値], [支払期日], [推定値])
[]は省略可能
目標とする金額に増やしたい、必要な年利まわりは?
元本Pをn年後、資産額Fに増やしたい場合の必要年利回りです。(積立ではありません)
年利r = RATE(n, 0, -P, F) (式23)
積立貯蓄・運用で目標とする金額に増やしたい、必要な年利まわりは?
今回は積立の場合です。
毎年の積立額T、n年後の目標資産額F、必要な年利回りはいくらかを求める計算です。
年利r = RATE(n, -T, 0, F) (式24)
毎月の積立の場合、*Tは年間の積立額です。
月利 = RATE(n x 12, -T/12, 0, F) (式25)
年利になおすには、
(1) 月利 x 12 : 単利
(2) (1+月利)12 -1 : 複利
のどちらかで計算してください。
既に蓄えた資産、一定期間・金額受け取るために必要な年利まわりは?
蓄えた元本P、これを運用しながらn年間、年額W円ずつ取り崩す場合に必要な年利回りもRATE関数で計算出来ます。
年利r = RATE(n, -W, P) (式26)
最後に
以上、資産運用に必要となる計算方法について解説しました。
電卓で計算できる事もありますが、やはりEXCELが便利。
EXCELのFV関数、PV関数、PMT関数、そしてRATE関数を使うだけで、多くの計算が出来ます。
是非、皆様の資産運用に役立ててください。
スポンサーリンク
備考 ~数式の解説~
数学が苦手な方は読み飛ばしてください。
年金終価係数(式3)の解説
毎年の積立額をT円、年利をr%、運用年数n年とすれば、n年後の資産額Fは、
F = T x (1+r)n-1 + T x (1+r)n-2 + T x (1+r)n-3 ・・・ T x (1+r)0
n
= Σ T(1+r)k-1
K=1
m=1+rとして
= T (mn-1 + mn-2 + mn-3 + ・・・m0)
= T / (1-m) x (1-m) x (mn-1 + mn-2 + mn-3 + ・・・m0)
= T / (1-m) x (mn-1 + mn-2 + mn-3 + ・・・m0 - mn - mn-1 - mn-2 - ・・・- m1 )
= T / (1-m) x (1 - mn )
= T {(1+r)n-1} / r
という事で式3になります。
所謂、等比級数の公式ってやつです。
資本回収係数(式15)の解説
現時点での資産額P円、年利をr%、これからn年かけて取り崩すとすれば、毎年受け取れる金額Wは
1年目の残金 P x (1+r) - W
2年目の残金 {P x (1+r) - W)} x (1+r) - W = P x (1+r)2 - W x (1+r) -W
3年目の残金 P x (1+r)3 - W x (1+r)2 - W x (1+r) - W
n年目の残金 P x (1+r)n - W x (1+r)n-1 - W x (1+r)n-2 - W x (1+r)0
n
= P x (1+r)n -Σ W(1+r)k-1
K=1
前回の記事の備考で示した等比級数の公式を使って
= P x (1+r)n + W x {1-(1+r)n)} / r
n年目の残金が0なので、 W = P x r x (1+r)n / {(1+r)n -1}
式15になります。