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年金全般

年金のもらいすぎに注意。 ~確定拠出年金や私的年金の出口戦略~

投稿日:2016年9月30日 更新日:

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国民年金、厚生年金に加え、確定拠出年金(企業型、個人型)、さらに企業年金や私的年金など、複数の年金制度や年金保険に加入している方が多いかと思います。

国民年金・厚生年金は基本的に受給開始年齢が決まっていますが(*1)、その他の年金は、受給開始年齢、受給年数、さらに一時金でもらうなど任意に選択できる場合があります。

例えば、確定拠出年金の場合、一時金、年金の選択、または、その併用。さらに年金の場合は受給期間を5~20年の間で選択等が可能です。(*2)

(*1)受給開始年齢を繰上げ、繰下げする事も可能ですが。
(*2)運営管理機関により異なります。

*本記事は2020年度からの税制改正(基礎控除、公的年金等控除)を考慮していませんのでご注意下さい。

受給方法により、思わぬ負担増を強いられることも。

確定拠出年金は、一時金として受取る場合は退職所得控除、年金として受取る場合は公的年金等控除が適用されます。

但し、これらは確定拠出年金だけで計算してくれるのではありません。会社からもらう退職金や、国民年金・厚生年金等の公的年金と合計した金額に対して控除されるのであって、退職金や公的年金が多い方は、それだけで控除額以上になり、確定拠出年金の給付には、丸々課税されることになってしまいます。

しかも損益に関わらず、個人が拠出した元本に対しても課税されてしまうのです(*3)

因みに一般の私的年金保険では、掛金を引いた利息相当分のみに課税されるだけです。

詳細は、こちらの記事でも解説していますので、ご参考にして下さい。

(*3)正確には、公的年金等控除を超える額が雑所得となり、これに他の所得を合算し、基礎控除などの各種所得控除を引いた額が課税所得となります。

 

公的年金等控除

国民年金(老齢基礎年金)や厚生年金(老齢厚生年金)などの公的年金、それに確定拠出年金等の収入は、雑所得に分類されますが、下表に示す金額が控除されます。

(*) 下表の(a) x (b) + (c) が控除額となります。

年齢(a)公的年金等の収入金額(b)割合(c)控除額
65歳未満130万円未満0%70万円
130万円以上 410万円未満25%37.5万円
410万円以上 770万円未満15%78.5万円
770万円以上5%155.5万円
65歳以上330万円未満0%120万円
330万円以上 410万円未満25%37.5万円
410万円以上 770万円未満15%78.5万円
770万円以上5%155.5万円

公的年金収入額により控除額は異なりますが、65歳未満で70万円以下、65歳以上で120万円以下であれば、雑所得は0となります(*4)

(*4)勿論、他の雑所得(例えば私的年金など)があれば、これに足されます。

 

国民健康保険料が上がってしまう。

年金を受給する年代になると、多くの方が国民健康保険に加入する事になります。

国民健康保険料は、市区町村によって異なりますが、多くは、総所得金額から基礎控除(33万円)を引いた額により決まります。

例えば、収入が確定拠出年金を含む公的年金だけの場合、

年金収入額の合計 - 公的年金控除 - 基礎控除額

に対して、国民健康保険料の保険料率がかかります。(その他にも、所得に関係しない均等割等が足されます。)

保険料率は、例えば、東京都新宿区の場合では8.88%、40~64歳までは介護分も足され10.31%となります。

即ち、公的年金等控除額を超えた額に対しては、税金だけでなく、約10%の国民健康保険料が加算されるという事になります。

私的年金にも加入している方は、その所得(利息相当分)に対しても国民健康保険料が加算されます

 

医療費自己負担が上がる可能性も有り得ます。

現在の健康保険制度では、70歳以上(国民健康保険)は医療費自己負担2割(*5)、75歳以上は後期高齢者医療制度の被保険者となり1割負担となります。

(*5)平成26年4月以降70歳になった方。それ以前は1割負担。

但し、現役並み所得者は3割負担のままです。

現役並み所得者とは、下記の全てに該当する場合の方を言います。

  • 世帯内に住民税課税所得が145万円以上の被保険者(*6)がいる。
    但し、昭和20年1月2日以降生れの被保険者(*6)の場合、本人と世帯内の被保険者(*6)の基礎控除後の総所得金額の合計210万円以下の場合を除く。
  • 同じ世帯に被保険者(*6)が1人の場合、収入(*7)が383万円以上
    同じ世帯に被保険者(*6)が2人以外の場合、収入(*7)の合計額が520万円以上

    (*6)被保険者とは、70~74歳の場合、国民健康保険の被保険者、75歳以上の場合、後期高齢者医療制度の被保険者。ただし、後期高齢者医療制度で、世帯内の被保険者数を判定する場合、70~74歳の被保険者を含む。

    (*7)所得ではなく収入である事に注意。例えば、株式の譲渡所得を申告すると、譲渡益でなく売却代金すべてが収入とみなされます。私的年金についても、利息相当分だけでなく、年金額すべてが収入となります

70歳以降に、年金を含む所得が多い方は注意が必要です。

因みに公的年金だけで課税所得が145万円以上になるのは、基礎控除だけだとすると、298万円以上の年金収入に相当します。(月額24.8万)

 

介護保険の負担も上がる可能性があります。

現在、介護保険の自己負担額も基本的に1割です。しかし、健康保険同様、一定以上の収入のある方は2割負担となってしまいます。

2割負担になる方は、

  • 本人の合計所得金額(*8)が160万円以上
  • 同一世帯の第1号被保険者の、年金収入+その他の合計所得金額が、単身なら280万円以上、2人以上なら346万円以上

    (*8)基礎控除や人的控除などの控除前の所得金額。すなわち、収入が公的年金だけならば280万円に相当します

の場合です。

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まとめ & じゃ、どうすれば良いか?

国民年金、厚生年金、確定拠出年金、企業年金、さらに私的年金、その収入・所得額が多い方は、税金は言うまでもなく、国民健康保険料や医療費自己負担額の増大につながる危険があります。

国民年金・厚生年金は自分ではどうする事も出来ませんが、他の年金の加入、拠出金額の決定、さらに受給方法については、これらを良く考えて総合的に判断する必要があります。

とにかく、老後の収入・所得を必要以上に増やさない事です。

 

公的年金の受給が開始される65歳到達時までに、他の年金を公的年金等控除(確定拠出年金の場合)+基礎控除内で受給する。

確定拠出年金の場合は、退職所得控除が残っている場合は、それを一時金として受け取ったうえで、残りを公的年金等控除の範囲内で60~64歳の間に受給すれば、税金・国民健康保険料ともに低く抑えらます。

そして、確定拠出年金を受給しても、まだ[公的年金等控除+基礎控除]が余っている方は、他の私的年金も、この60~64歳の間に受給するのが良いかと思います。

言い換えれば、この範囲内に収まるよう、確定拠出年金等の拠出金額を決めるという事も検討されてはどうでしょう。

勿論、65歳以降に受給する公的年金額が、公的年金等控除額より少なく、まだ控除額に余裕がある方は、このような事を考える必要はありません。

 

70歳以前に私的年金は全て受給する。

公的年金額が多い方や、他に所得があり、現役並み所得者としてみなされる可能性がある方は、70歳以前に確定拠出年金や私的年金を全て受け取る事も考えてはいかがでしょう。

 

そもそも、むやみに私的年金に加入しない。

老後資金の確保に、私的年金は有効な資産運用の一つではありますが、公的年金の多い方は、そもそも、むやみに私的年金に入らないというのも選択肢の一つです。

 

最も考えないといけないのはアーリーリタイアした方

以上のように、年金で受給する事で、税金、国民健康保険料、医療費負担増大などの可能性がありますが、一般の課税所得者なら、確定拠出年金なら掛金が全額所得控除されていますし、私的年金でも年金保険料控除等で、既に十分な恩恵を受けていると言えます。

また、来年から個人型確定拠出年金に加入できる専業主婦などの方も、所得控除のメリットは受けられませんが、そもそも拠出限度額が年間27.6万円ですので、退職所得控除や公的年金等控除の範囲内で収まるかと思います。

最も考えないといけないのはアーリーリタイア組。「しんたろう」もその一人なのですが、会社退職時に退職金をすでに受取り、退職所得控除額が残り少ない、そこそこの老齢厚生年金をもらえるので公的年金等控除はそれに使われる、そしてリタイア後も個人型確定拠出年金に拠出している、だけど所得控除の恩恵を受けられない、そういった場合、年金の受取方法を良く考えないと、思わぬ負担を負う事になります。

 

最後に

税制、国民健康保険料、医療費負担などは、現時点の情報に基づいて記載していますが、当然、今後、変更される可能性も十分あり得ます。個人的な推測ですが、医療費負担や、現役並み所得者の基準など、今後さらに厳しくなっていくのではないでしょうか。

また、「しんたろう」は残念ながら、税理士や社会保険労務士の資格を持っていません。正確な情報に基づいて記事にしたつもりですが、より詳細は、税理士、税務署、社労士、また国民健康保険については各市町村、後期高齢者医療制度については各都道府県の広域連合にお問い合わせください。

 

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