サラリーマンの方、厚生年金(第2号被保険者)に加入されてますよね。
もし退職してアーリーリタイアしようと考えている方、もしくは、脱サラして自営業を始めようと思っている方、厚生年金の加入年数は何年ですか?
もし、配偶者などの扶養家族がいて、かつ厚生年金の加入期間が20年未満であれば、ちょっと考えた方が良いかと思います。特に20年にちょっと足りないという方は注意が必要です。
(退職後、別の会社に再就職するという方は対象外です。)
さらに、就職前の国民年金保険料納付期間と合わせて25年以上たってから退職するのが、より安全です。
具体的に20年以下だと何が困るか、また25年以上だと安全な理由を以下に解説します。
加給年金がもらえない
加給年金とは年金の家族手当のようなもので、あなたが年金を受給する時(殆どの方が65歳)、65歳未満の配偶者がいれば加給年金がもらえます。もしくは(概ね)18歳未満の子供がいる場合でももらえます。
配偶者の場合で、受給額は現在、年額390,100円です(昭和18年4月2日以後生まれの場合)。配偶者が65歳に到達するまでもらえますので、ご自分より若い奥さんがいるほど、より多くもらえることになります。例えば、5歳年下の配偶者だと、合計195万円ほどになります。
ただし、この加給年金を受給できる方は、「厚生年金の被保険者期間が20年以上」でなければなりません。
厚生年金の被保険者期間が20年未満では、全くもらえないのです。
中高齢寡婦加算がもらえない
現役のサラリーマンだと、ご自分にもしもの事があれば、配偶者に遺族厚生年金が支給されます。さらに、40歳以上65歳未満の妻(*)には「中高齢寡婦加算」が追加されて支給されます。
(*)(概ね)18歳未満の子がいない妻。(概ね)18歳の子がいる場合は、中高齢寡婦加算ではなく、遺族基礎年金が支給されます。
中高齢寡婦加算の額は、年額584,500円(平成29年)です。
仮に、あなたが亡くなった時に、奥さんがちょうど40歳であれば、40歳から65歳到達までの間、合計1,461万円も受給できる事になります
しかし、サラリーマンを辞めて、リタイア、あるいは脱サラした場合はどうでしょう?
厚生年金の納付期間と、入社前、あるいは退社後の国民年金納付期間(免除期間を含む)の合計が25年以上あり、かつ、厚生年金の加入期間が20年以上あれば、サラリーマンを辞めていても、この中高齢寡婦加算を受給できるのです。
言い換えれば、厚生年金の加入期間が20年未満だと、中高齢寡婦加算は受け取ることが出来ません。今の受給額で最大1,461万円の損失です。
遺族厚生年金 25年の納付期間があれば、もっと安心。
あなたに、もしもの事があったとき、遺族に老齢厚生年金(報酬比例部分)の3/4相当額が支給されます。これが遺族厚生年金です。
現役のサラリーマンが亡くなったり、現役時代の病気やケガが原因(初診日が現役時代)で5年以内になくなった時に支給されます。
この、遺族厚生年金、サラリーマンを辞めても(厚生年金の被保険者じゃなくなったとしても)、厚生年金の受給資格を満たしていれば、受給する事が出来ます。
受給資格とは、25年以上の国民年金を含む保険料加入期間(免除期間含む)がある事です。
(注)2017年8月1日より資格期間が25年から10年に短縮されますが、遺族年金の受給資格(長期要件)の25年は変更ありません。
例えば、20歳になり2年間国民年金保険料納付、その後就職して22年間厚生年金に加入、そして退職、個人事業主として国民年金に加入したとします。
もし、退職後すぐに亡くなった場合、遺族厚生年金は受け取ることが出来ません。22年間払った厚生年金が全く無駄になってしまうのです。
しかし、個人事業主として国民年金保険料を支払い、1年以上後に亡くなった場合は、合計の納付期間が25年以上になりますので、ちゃんと遺族厚生年金を受給する事が出来るのです。
万が一の事を考えるなら、就職前の国民年金保険料納付期間と、就職後の厚生年金加入期間合わせて25年以上たってから退職するのが、最も安全な方法です。
まとめ
会社を辞めることは、それなりに大きな理由があっての事だと思いますが、もし厚生年金加入期間が、ちょっとだけ20年に満たないような場合、退職を少しだけ先延ばしする事も検討されてはいかがでしょう?
加給年金は、若い奥さん、あるいは、40歳後半以降に生まれたお子さんがいらしゃる場合に注意が必要です。
遺族厚生年金や中高齢寡婦加算は、自分にもしもの事があった時の話ですので、自分自身の損得には関係ない事ですが、家族の生活を守るのも重要な役目。
多くの方が民間の生命保険に加入されていると思います。結構な保険料ですよね。公的年金の遺族補償を知る事で、今加入している生命保険の保険金額が適正なものか見直されてみるのも良いかと思います。
注意
- 本記事では、大まかな概要をご説明しましたが、他にも細かい条件や特例などがありますので、詳細は年金事務所などにご確認下さい。
- 本記事は、なるべくわかりやすい表現とするため、一部正式な名称と異なる用語を使用している場合があります。
- 年金制度は、毎年のように見直されますのでご注意ください。ここに書いたものは現時点での制度に従っています。
例えば、年金の受給資格は現在25年ですが、2017年8月1日以降は10年になります。