2018年よりスタートした「つみたてNISA」、その制度の概要、そしてお勧めの金融機関(証券会社、銀行)、商品(投資信託)について、初心者(初めて投資をする方)にも分かりやすく解説します。
[最終更新日:2018.9.6] 最新の情報に更新しました。
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NISAって何? 非課税ってどういう事?
NISA制度は2014年にスタートした、一定の投資額の範囲内であれば、その配当(分配金)、及び売却益が非課税となる制度の事です。
通常、株式や投資信託の配当、売却益には20.315%(*1)の税金がかかります。例えば、100万円で購入した株式を120万円で売却すると20万円の利益となりますが、ここから税金が4万円引かれ、実際の税引き後利益額は16万円となります。
(*1)2037年までの復興特別所得税を含む
しかし、NISAでは、この4万円の税金が免除され、元々の利益20万円を丸々手にする事が出来るのです。
NISA口座は、金融機関(証券会社や銀行等)に申し込む事で利用できるようになります。また金融機関は年単位で変更する事も出来ます。(同一年に複数の金融機関でNISA口座を開設することは出来ません)
(一般)NISA制度とは
先ず、既に2014年から始まっているNISA制度(以降、これを一般NISAと呼びます)について概略をご説明します。
毎年、120万円を限度として(2014,2015年は100万円)、5年間に限り非課税になるというものです。
例えば、2017年にNISAで購入した株式や投資信託は、2021年までの5年間非課税となります。5年間の間ずっと保有している必要はありません。この5年間の期間中なら、いつ売却しても構いませんし、その売却益は非課税となります。
もし途中売却しないで5年間保有し続けた場合、非課税期間終了後、その時点で売却するか、あるいは、一般の課税口座に移す、さらに、ロールオーバーといって、例えば、2017年のNISAで購入した株式・投資信託等を、2022年のNISA枠に移す事も出来ます。これにより、実質、非課税期間が10年間に延びます。
但し、2022年の新しいNISAで投資できる額は、120万円からロールオーバーした額を引いた分になります。
尚、2017年に購入した株式・投資信託が、ロールオーバー時に時価で120万円を超えていたとしても、全てを2022年分に移管する事が出来ます。
この一般NISA、現時点では2023年までの制度となっています。
つみたてNISA(積立NISA)とは
2018年から新しくつみたてNISA(積立NISA)という制度が始まりました。
今後は、前章で説明した一般NISAか、つみたてNISA、どちらか一方を選択する事になります。
毎年変更は出来ますが、同じ年に両方のNISAを利用する事は出来ません。
また、一般NISAの資産をつみたてNISAに移す事(ロールオーバー)も出来ません。
つみたてNISAの制度の概要
非課税期間、毎年の投資額
一般NISAが毎年の投資可能額120万円、非課税期間5年なのに対して、つみたてNISAでは、毎年40万円、非課税期間20年となります。
少額を長期にわたって投資する為の制度なのです。
現時点では、2018年に始まり、2037年までの20年間の時限的な制度となっています。
購入出来る商品の制約
一般NISAでは、国内外の株式、(殆どの)投資信託などを購入する事が出来ましたが、つみたてNISAでは、金融庁が定めた基準に適合する投資信託(ファンド)のみとなります。
個別銘柄の株式は購入出来ません。
詳細は金融庁のこちらの資料を参照して頂くとして、
一部抜粋してご紹介すると、(上記資料より引用)
インデックスファンド
- 指定されたインデックスに連動する事
- 主たる投資の対象資産に株式を含む事
- 購入時手数料無料(ノーロード)
- 信託報酬が 国内資産に投資するもの 0.5%以下、海外資産に投資するもの0.75%以下。(税抜き)
アクティブファンド
- 純資産総額 50億円以上、設定から5年以上経過
- 購入時手数料無料(ノーロード)
- 信託報酬が 国内資産に投資するもの 1.0%以下、海外資産に投資するもの1.5%以下。(税抜き)
ETF
- 指定されたインデックスに連動する事
- 株式投資
- 最低取引額 1,000円以下
- 販売手数料 1.25%以下
- 信託報酬 0.25%以下
- 最小取引単位 1,000円以下。
*ETFをつみたてNISAで取扱っているのは現時点(2018.9)で大和証券のみです。
その他、全ての商品に対して、
- 信託契約期間が無期限又は20年以上
- 分配頻度が毎月でない事
- ヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていない事。
など、厳しい制約が設けられています。
要は、株式を含まないもの(債券やREITだけ等)はダメ、高い信託報酬はダメ、購入時手数料のかかるものはダメ(ETFを除く)、毎月分配型はダメという事です。
初めて投資信託を購入する方、購入時手数料、信託報酬、インデックスファンド、アクティブファンドなどの意味がわからない方は↓の記事などを参考にして下さい。
一般NISA、つみたてNISA、そして個人型確定拠出年金(iDeCo)の特徴、違いを比較。
一般NISA、新しく始まったつみたてNISA、そして、もう一つ、(場合によっては)大きな税制優遇を受けられる個人型確定拠出年金(iDeCo)の特徴、違いを比較します。
一般NISA、つみたてNISA、iDeCoの比較
*他に19歳以下を対象にしたジュニアNISAもありますが、ここでは割愛します。
一般NISA | つみたてNISA | 個人型確定 拠出年金 (iDeCo) | |
年間最大 投資額 | 120万円 | 40万円 | 14.4~ 81.6万円 (加入者資格 による) |
上限であって、これより少ない額でも構いません。 | |||
投資可能 期間 | 2023年 | 2037年 | 60歳到達まで |
非課税 期間 | 5年 | 20年 | 60~70歳到達 から受給終了 まで。 但し非課税 ではなく 税の繰延べ(*1) |
購入出来 る商品 | 国内外株式、 投資信託 など | 指定された投資 信託で口座開設 した金融機関で 扱っている 投資信託 (ETF含む) | 加入金融機関 のプランにある 投資信託、 定期預金、 保険商品 |
購入 ・積立 方法 | 1年の間に いつでも 購入可能。 | 定期的・ 継続的に積立 | 毎月拠出 (2018年より 年単位の拠出 も可能に) |
口座管理 手数料 | 無 | 無 | 最低年額 2,004円 (金融機関 による) |
途中解約 ・売却 | 可能 | 可能 | 原則60歳 未満(*2)での 引出し、 脱退不可。 |
商品の 変更・乗換 | 不可 | 不可 | 可能 |
例えばファンドAを売却しファンドBを購入する事。 一般NISA、つみたてNISAともに、ファンドAを売却したら、その非課税枠は 使えなくなります。 iDeCoでは自由にファンドや定期預金などの入れ替えが可能(スイッチング)。 | |||
金融機関 変更 | 年毎に可能 | 年毎に可能 | 可能。 但し手数料 必要。 |
拠出時の 税制優遇 | 無 | 無 | 所得控除 |
(*1)個人型確定拠出年金は、運用期間中は非課税ですが、受給時に退職所得控除、公的年金等控除を超える分については課税されます。
(*2)加入期間によっては、60歳以降になる場合もあります。
個人型確定拠出年金の税制優遇については、下記の記事などをご覧ください。
参考記事個人型確定拠出年金(iDeCo) 徹底解説
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NISA(ニーサ)、iDeCo(イデコ) どちらを選ぶ?
毎年、多額の投資を行う方は、一般NISA/つみたてNISAとiDeCoを併用して非課税制度の恩恵を十分に受ければ良いのですが、投資額が限られている方は、どちらの制度を使った方が良いのでしょうか?
所得控除を受けられる方
所得控除を受けられる方、即ち、所得税・住民税を支払っている方なら、先ず第一に優先すべきは個人型確定拠出年金(iDeCo)でしょう。
但し、60歳までは引出し不可な事、また受取時の税制優遇が複雑で、場合によっては元本まで課税される場合も有り得ますので拠出額には注意して下さい。特に、企業からの退職一時金や公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)が多い方は、受給方法なども十分に検討する必要があります。
参考記事【個人型確定拠出年金(iDeCo)】 併給、年金受給年数を含めた受取方法(出口)の重要性。
所得控除を受けられない方
専業主婦(夫)や無職の方は、引き出しの制限、手数料もかかる、そして税の繰延べであって完全な非課税ではない個人型確定拠出年金(iDeCo)よりも、一般NISAやつみたてNISAの方が、より使いやすい制度でしょう。
一般NISA、つみたてNISA、どちらを選択?
一般NISA、つみたてNISA、どちらを選択するかは毎年の投資額、年齢、投資対象、投資方針にもよりますので、それぞれお好きな方を選択されれば良いかと思います。
例えば、既に一般NISAを使用している方でロールオーバーを考えている方、個別銘柄の株式にも投資したい方などは一般NISA。
*毎年、一般NISA、つみたてNISAの変更が可能ですので、一般NISAのロールオーバーを行いたい年だけ一般NISAを選択し、それ以外はつみたてNISAという方法も可能です。
ただ、これから初めて投資しようという、特に若い方には、つみたてNISAをお勧めします。
年額40万円と、一般NISAよりは少なくなりますが、初めて投資する方には十分すぎる金額でしょう。
つみたてNISA、どこの金融機関で何に投資する?
つみたてNISAの申込は証券会社等の口座開設と同時に申込事が出来ます。勿論、年の途中で申込む事も可能です。
お勧めの金融機関は?
つみたてNISAの場合、金融庁が認定した投資信託だけしか購入出来ませんので、どこの金融機関で口座開設しても、いわゆる「ぼったくり投信」と言われる高コストのファンドを購入してしまう危険はありません。
ただ、金融庁が認定したといっても、その信託報酬には結構幅があります。なるべく信託報酬の低い商品を扱っている金融機関を選択する事が重要です。また、今後、つみたてNISA以外の口座で投資を行う事も有り得ると思いますので、本サイトでは基本的にネット証券をおすすめしています。
*信託報酬 : 投資信託の手数料のようなものです。日々、この信託報酬分が引かれた基準価額(株価のようなもの)になります。これは販売した金融機関、運用会社、(資産を管理する)信託銀行の利益となります。
ネット証券といえばSBI証券、楽天証券。
SBI証券【SBI証券】つみたてNISA。豊富な商品ラインアップと多彩な積立方法。プレゼントキャンペーンも!
楽天証券投資信託なら「楽天証券」。投資初心者、「つみたてNISA」(積立NISA)で投資デビューする方にもおすすめのネット証券。
初めて証券会社の口座を開設する方は、SBI証券、楽天証券のどちらかにしておけば間違いないでしょう。この2社であれば、つみたてNISAで認定されたファンドの殆どを取扱っており、信託報酬最低水準のファンドに投資する事が出来ます。
ネット証券とは違いますが、「つみたてNISA」だけで投資を行おうと思っている、特に初心者の方におすすめなのがセゾン投信。
セゾン投信セゾン投信「つみたてNISA」 申込開始。「セゾン・バンガード・グロバールバランスファンド」と「セゾン資産形成の達人ファンド」。
おすすめの商品(投資信託)は?
一般的に株式はハイリスク・ハイリターン、債券はローリスク・ローリターンです。
株式・債券に分散投資する方が値動きがマイルドになります。(今は債券投資は旨みがないという意見もありますが、なにせ20年と長期にわたって運用するわけですから。)
つみたてNISAの対象となる投資信託は必ず株式を含む事とあります。即ち、債券やREITだけのファンドは対象になりません。
ただ、複数の投資対象を組み合わせたバランスファンドなら、株式、債券両方に投資する事が出来ます。
初めて投資する方は、先ずバランスファンドから始めてみるのも良いかと思います。
勿論、銀行預金などの無リスク資産を十分確保した上で、リスク許容度の高い方は株式オンリーという選択もあるでしょう。ご自身のリスク許容度を十分把握したうえで、投資対象、商品を選択していください。
後、投資対象は日本国内だけでは無いという事も忘れてはいけません。もっと広く世界に目を向けましょう。つみたてNISAの対象となるファンドには、海外株式(先進国・新興国)に投資するファンドも含まれています。
株式・債券に分散、日本・海外に分散、ある特定の投資対象に集中するのではなく、分散投資という事を心がけましょう。
おすすめの商品は下記記事にまとめてあります。商品選びの参考として下さい。
「つみたてNISA」の全商品、その信託報酬、そして主なネット証券の取扱商品は下記の記事にまとめてあります。
参考記事「つみたてNISA」(積立NSA)全商品(ファンド)と主要ネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券)の取扱商品。
インデックスファンドの選び方については↓の記事も参考にして下さい。
参考記事初心者のインデックスファンドの選び方。~初めてインデックス投資を行う方へ~
バランスファンドの詳細は、下記のページを参考にして下さい。
参考記事バランス型インデックスファンド徹底比較
最後に
以上、2018年から始まる「つみたてNISA」の解説でした。
金融庁が認定したものだからといって必ず儲かるという保証がある訳ではありません。
また、つみたてNISAの対象となる投資信託は、一発大儲けという部類の投資でもありません。あくまで、長期にわたって積立て、着実に資産形成していく事を目的としています。
もし、今後も世界経済が伸びていくと信じるなら、「つみたてNISA」をきっかけに資産の一部を投資にまわしてみては如何でしょう? もちろん、投資する上でのリスクは十分理解した上で。
リスクについては↓の記事を参考にして下さい。
参考記事投資における期待リターンとリスクの考え方
途中、リーマンショックのような大暴落が起き、大きく元本割れする事もあるかもしれません。その時、「やっぱり投資なんかするんじゃなかった」と後悔するか、あるいは、「お、絶好の買い場が来た」と思うかが、投資に向ているか否かの分かれ目だと思います。
先ずは、大暴落が来ても狼狽える事がないような金額から始めてみる事をお勧めします。