純資産総額 1,000億円突破(2021.2.5)
1本のファンドで日本を含む全世界の株式に投資するインデックスファンド、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)について解説します。
[最終更新日:2021.2.6]2021/2/5に純資産総額1,000億円突破。
[2021.2.2]純資産総額、「最新の騰落率」を2021.1末時点の情報に更新。
[2020.10.8]10/7に純資産総額500億円を突破し、受益者還元型信託報酬適用。
iDeCo販売会社に松井証券追加。
[2020.10.2]「最新の騰落率」を2020.9末時点の情報に更新。
[2020.9.14]全て最新の情報に更新。
本記事は原則2020.8末日時点の情報に基づき記載しています。
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eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の基本情報
eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)シリーズは「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」をコンセプトとした三菱UFJ国際投信が運用するインデックスファンドで、「他社類似ファンドの運用コストに注意を払い、機動的に信託報酬を引き下げることによって、今も、そしてこれからも業界最低水準を目指し続ける」と公表しています。実際、設定から既に数回の信託報酬引下げを行い、常に最低水準の座を維持しています。
今回解説するのは1本のファンドで日本を含む全世界の株式に投資するeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)。
先ず、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の基本情報をまとめます。
運用会社 | 三菱UFJ国際投信 |
設定日 | 2018年10月31日 |
運用形態 | インデックスファンド |
投資形態 | ファミリーファンド |
ベンチマーク | MSCI All Country World Index(配当込み・ネット) |
購入時手数料 | 無 |
信託財産留保額 | 無 |
信託報酬(税込) | 0.1144% |
実質コスト | 0.205% |
純資産総額 | 924.4億円(2021.1.29時点) |
(マザーファンド) 純資産総額 | [先進国株式]4,498億円(2020.5.12時点) [新興国株式]1,041億円(2020.5.12時点) [日本株式] 18.4億円(2020.4.27時点) |
分配金実績 | 無 |
つみたてNISA | 対象商品 |
SBI証券ポイント還元年率 | 0.03% |
楽天証券ポイント還元年率 | 0.048% |
投資対象
ベンチマークはMSCI All Country World Index [ACWI][配当込み・ネット]で日本を含む先進国、新興国の株式に投資します。
MSCI ACWIは全世界49カ国(先進国23カ国+新興国26)の大型株、中型株、約3,000の銘柄から構成される時価総額加重平均型の指数です。これだけで全世界株式の時価総額の約85%をカバーします。
尚、ネットとは配当に対する源泉徴収税を考慮した指数ですが、その税率が日本に対して適切に考慮されているかは定かではありません。
*インデックスファンドのベンチマークは[除く配当]と[税引前配当込/グロス]、[税引後配当込/ネット]の3種類ありますが、ベンチマークの配当除く・含むは運用成績に直接関係するものではありません(少なくとも過去においては)。但し、運用報告書などに記載されているベンチマークとの乖離を見る時は注意が必要です。詳細は下記記事を参照して下さい。
参考記事インデックスファンドのベンチマーク(除く配当/プライス、配当込/グロス・ネット)と乖離の評価方法。
マザーファンド
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、ファミリーファンド方式で下記マザーファンドに投資します。
外国株式インデックスマザーファンド、新興国株式インデックスマザーファンドは、それぞれeMAXIS Slim先進国株式インデックス、eMAXIS Slim新興国株式インデックスと同じマザーファンドで既に大きな純資産総額を有します。
一方、日本株式インデックスマザーファンドは、本ファンドと同時に新規設定されたもので自己設定額3億円でのスタート、2020年4月には約18億になっています。
投資地域別比率
国内株式、先進国株式、新興国株式の比率は現時点(2020.8末)で下表のようになります。
地域 | 比率 |
国内株式 | 6.7% |
先進国株式 | 81.0% |
新興国株式 | 12.3% |
尚、ベンチマーク MSCI ACWIは時価総額加重平均型指数ですので、その時点の時価総額で国内、先進国、新興国比率が変化します。例えば、他の先進国株式に対し国内の株価が低迷すれば国内株式の比率が小さくなります。
投資国比率
投資国比率は下図のようになります(2020.8末時点)。
トップはアメリカで59%、全体の半分以上を占めます。そして日本 7%、中国 5%続きます。
詳細は下記記事を参照して下さい。
参考記事【外国株式インデックスファンド】各インデックス(指数)、そして先進国、新興国ってどこの国?
投資銘柄
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は2,994銘柄に投資しています。
ベンチマークを構成する殆どの銘柄を保有している事になります。
画像引用:eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー) マンスリーレポート(2020/8)
組入上位10銘柄中8銘柄を米国企業が占めており、残り2銘柄が中国(ケイマン諸島籍)となっています。
ただ組入比率トップのアップルでさえ3.9%ですので広く分散されている事が分かります。
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手数料(信託報酬、実質コストなど)
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の最大の魅力は何と言っても信託報酬の低さ。
全世界株式インデックスファンドとしては最低水準の0.1144%(税込)です。
実質コストは2期目決算で0.205%、(配分比率の小さい)国内株式以外はマザーファンドが既存のもので巨額の純資産を有するだけに問題のないレベルです。
勿論、購入時手数料無料(ノーロード)、信託財産留保額は無です。
*実質コストは信託報酬以外のコストに全て消費税がかかると仮定して消費税8%から10%に換算した概算値です。
受益者還元型信託報酬
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は下表のように純資産総額に応じて信託報酬率が変わる受益者還元型信託報酬を採用しています。
純資産総額 | 信託報酬(税込) |
500億円未満の部分 | 0.1144% |
500億円以上1,000億円未満の部分 | 0.11385% |
1,000億円以上の部分 | 0.1133% |
500億円以上の部分に対する信託報酬がさらに低くなります。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の純資産総額は設定から2年弱、2020年10月7日に500億、さらに2021年2月5日には1,000億円を突破し、受益者還元型信託報酬が適用されています。
*今後の市場状況によっては再度下回る可能性もあります。
純資産総額に対する信託報酬率を下図に示します。
尚、eMAXIS Slimシリーズで1,000億円を突破したのは、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)、eMAXIS Slim先進国株式インデックスについで3本目です。
他社 全世界株式インデックスファンドとの信託報酬・実質コスト比較
MSCI ACWIをベンチマークとする他社のインデックスファンド、及びベンチマークは異なりますが(日本を含む)全世界の株式に投資するインデックスファンドと比較してみます。
さらに、eMAXIS Slimシリーズの個別のファンド(TOPIX、先進国株式、新興国株式)を7%:81%:12%の比率で組み合わせた場合も参考までに記載します。
(注)下表は基本的に最新の情報に随時更新しています。よって記事中の記載と異なる場合がありますが、その際は下表の値が最新の情報となります。
*ファンド名下の[]内はベンチマーク。[FTSE]はFTSE Global All Cap Index、[MSCI]はMSCI All Country World Indexの略。
ファンド | 信託報酬 | 実質コスト | |
---|---|---|---|
1 | SBI・全世界株式インデックス・ファンド [FTSE] | 0.1102% | 0.133% |
2 | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) [MSCI] | 0.1144% | 0.205% |
- | 個別ファンドの組合せ | 0.1161% | --- |
3 | たわらノーロード 全世界株式 [MSCI] | 0.1320% | 0.240% |
4 | 楽天・全世界株式インデックス・ファンド [FTSE] | 0.2120% | 0.261% |
5 | つみたて全世界株式 [MSCI] | 0.2200% | 0.315% |
6 | ステート・ストリート 全世界株式インデックス [MSCI] | 0.5280% | 0.617% |
*実質コストは信託報酬以外のコストに全て消費税がかかると仮定して消費税8%から10%に換算した概算値です。
日本を含むMSCI ACWIをベンチマークとするファンドはeMAXIS Slimとステート・ストリート、それに2019年7月22日設定のたわらノーロード全世界株式、2020年3月6日設定のつみたて全世界株式の4本しかなく、その信託報酬はeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が単独で最安値。
ベンチマークは異なりますが、同じく日本を含む全世界の株式に投資するファンドを含めてもSBI・全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま)と概ね同率で最低水準です。
尚、実質コストでは若干SBI・全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま)に負けますが、後述する3重課税を考慮すると、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が最も低コストで全世界株式に投資できるファンドという事になります。
個別のインデックスファンドとの組合せと、どちらがお得か?
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬は0.1144%(税込)。
一方、eMAXIS Slim先進国株式[0.10230%]、eMAXIS Slim新興国株式[0.1870%]、eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)[0.1540%]を81%:12%:7%の比率で組み合わせた場合の信託報酬は上表にも示したように0.1161%、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の方が若干低くなります。
各地域に時価総額比率で投資する方は、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)1本を購入するだけでコスト的にも優位になるという事です。
(注)eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の国内株式部分のベンチマークはMSCIジャパンでTOPIXとは異なります。
信託報酬の変更履歴
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は設定から2回、信託報酬引下げの実績があります。
引下げ日 | 信託報酬(税込) | 備考 |
2018/10/31 | 0.15336% | 新規設定(SBI・全世界株式に対抗した設定) |
2019/8/9 | 0.1296% | たわらノーロード全世界株式に対抗 |
2019/10/1 | 0.1320% | 消費税増税(8%-->10%) |
2019/11/12 | 0.1144% | SBI・全世界株式に対抗 |
ベンチマークは異なりますが全世界の株式に投資するSBI・全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま)の引下げに対抗し、eMAXIS Slimも2019.11.12に2回目の信託報酬引下げを行いました。
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)とSBI・全世界株式インデックス(雪だるま)、楽天・全世界株式インデックス(楽天バンガード)の比較
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のライバルとなるのはベンチマークは異なりますが日本を含む全世界の株式に投資する
の2本でしょう。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)との大きな違いは、
- FTSE・グローバル・オール・キャップ・インデックスをベンチマークとするSBI・楽天全世界株式は小型株までも含むのに対し、eMAXIS Slimは大型・中型株だけ。
- SBI・楽天全世界株式は事実上FOFで米国ETFを介して全世界の株式に投資するのに対し、eMAXIS Slimは直接日本から全世界の株式に投資する。
1の小型株の有無に関しては、もともと小型株は全体に占める割合が小さく、かつ、その小型株によって確実にパフォーマンスが良くなるというわけでも無いので好みの問題と言って良いでしょう。
2は配当に対する源泉徴収税が大きく異なります。eMAXIS Slimのように直接海外に投資する場合、所有する株式の配当に対する源泉徴収税は、その現地国のみです。そして分配金を出さないファンドでは最終的には譲渡益として国内で課税されます。
一方、米国ETFを介して投資すると、現地国に加え米国での課税が加わります(米国企業の配当を除く)。
このように米国ETFを介して投資する場合、例えば配当利回りが2%だとすると約0.1%リターンが低下します。言い換えれば、信託報酬・実質コストが0.1%上乗せされるのと同じです。
より詳しくは下記記事をご覧ください。
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eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の運用状況
資金流出入額 & 純資産総額 (評判・人気は?)
月次資金流出入額、純資産総額からeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の売れ行き・人気を見てみます。
(*)月次資金流出入額は、日々の純資産総額の増減額に騰落率を考慮して算出した概算値になります。
2018年10月31日設定と未だ新しいファンドですが、設定以来多くの人気を集め、特に2020年に入ってからは25~50億/月と巨額の資金流入が続いています。それに伴い純資産総額も順調に伸びています。
今、最も売れている全世界株式インデックスファンドです(管理人調べ、2020.8末時点)。
運用状況は?
インデックスファンドでは、ベンチマークとの乖離が小さい事がファンド評価の重要な要素です。そして、乖離がなければ、そのコストに応じた騰落率になる筈です。
下図は2020年8月末日時点の実質コストに対する1年騰落率をプロットしたものです。
ベンチマークが同じeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)と[ステートストリート/SSGA]全世界株式インデックス・ファンドをプロットしてあります。
2本のファンドしかなく正確なところは判断しかねますが、SSGA全世界株式インデックスファンドとの関係、及び2本の騰落率を結んだ線のY切片(これが配当課税を適切に考慮した真のベンチマークとなります)が、グロスとネットの中間に位置する(*)こと等から、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、(コスト要因以外での)ベンチマークとの乖離がない安定した運用になっていると推測されます。
(*)ベンチマークには配当課税を考慮しないグロスと、配当課税を考慮したネットがありますが、ネットと言っても日本に対する課税を適切に計算した指数ではなく、通常はグロスとネットの中間に、日本への配当課税を適切に考慮した真のベンチマーク値が存在します。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の分配金
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は分配金を出した実績はありません。
これから資産を築いていこうとする資産形成期においては分配金を出さない投資信託の方が有利です。
分配金を出すか否かは運用会社が決定しますが、本ファンドは「信託財産の成長を優先とし、原則として分配を抑制する」方針です。
勿論、保有する株式から出た配当はファンドの資産となり、基準価額の上昇につながります。
最新の騰落率[利回り](たわらノーロード、楽天・全世界株式などと比較) ~2021年1月末日時点~
最新の騰落率をライバルファンドとともにまとめます。
*3年・5年騰落率は年率表記。
[表をクリックすると拡大します]
*1月の結果ですので年初来と1カ月騰落率は同じです。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、ベンチマークが同じたわらノーロード全世界株式を騰落率で上回っており、信託報酬のみならず実質コストも低い事で高いパフォーマンスをあげています。
尚、楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)はベンチマークが異なりますので、参考値として見て下さい。小型株を含むからと言って必ずしもリターンが勝るわけでもありませんし、将来どちらが勝つかは分かりません。
まとめ
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、MSCI ACWIをベンチマークとするインデックスファンドの中では最も信託報酬が低く、さらに他のベンチマークを含めた全世界株式インデックスファンドの中でも最低水準の信託報酬です。
資金流入も順調で、最近は楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)をも上回る人気を集めています。
そして、ベンチマークとの乖離がない安定した運用となっています。
先進国株式、新興国株式、国内株式を1本のファンドで投資したい方、大型・中型株で十分、そしてよりコストにこだわる方にお勧めできるのがeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)。
債券・リートが不要なら、この1本だけで全世界の株式に低コストで分散投資できる非常に便利なファンドです。
販売会社
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は下記の金融機関で購入出来ます。
*主にネット証券、ネット取引での取扱いとなります。
SBI証券
投資信託保有で毎月Tポイントがもらえます。さらにTポイントで投資信託を購入する事も出来ます。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイト SBI証券
楽天証券
投資信託保有で毎月楽天ポイントがもらえます。さらに楽天ポイントで投資信託を購入する事も出来ます。また、楽天カード(クレジットカード)で投資信託を積立購入する事が出来ます(上限5万円/月)。勿論ポイント還元があり事実上1%割引で購入出来るようなものです。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイト楽天証券、楽天カード
SMBC日興証券(ダイレクトコース)
大手店頭証券で唯一eMAXIS Slimシリーズを取扱い(ダイレクトコースのみ)。
国内株式を定額(100円~)、買付手数料無料(100万円以下)で買付・積立出来、さらにdポイントも使えるキンカブ・日興フロッギーも魅力の証券会社。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイトSMBC日興証券
松井証券
松井証券は、複数の投資信託を積立する際、設定したポートフォリオ(配分比率)になるよう自動的に購入商品・金額を調整してくれる「リバランス積立」が魅力(無料で利用可能)。
(つみたてNISAでも購入可能、但しリバランス積立はつみたてNISAでは非対応)
公式サイト松井証券
勿論、つみたてNISA対象のファンドです。(上記金融機関でもつみたてNISAを取扱っていない場合があります)
また、個人型確定拠出年金(iDeCo)ではマネックス証券iDeCo、松井証券 iDeCoが取り扱っています。
公式サイトマネックス証券 iDeCo、松井証券 iDeCo
ライバルとなるファンド
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) *本記事
楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド)
他の全世界株式インデックスファンドとの比較、最新の人気・運用状況は下記記事を参照して下さい。
インデックスファンドの信託報酬、実質コスト、純資産総額の一覧は下記記事を参照して下さい。
eMAXIS Slimシリーズの他のファンドの評価・解説は下記記事をご覧ください。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) *本記事