近年、多くの企業が、従来の確定給付企業年金にかわり確定拠出年金の導入を進めています。
また、「確定拠出年金等の一部を改正する法律」(改正DC法)により、2017年より多くの方が個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できるようになりました。
このように注目されている確定拠出年金ですが、まだまだ、その中身を良く理解できていない方も多いかと思います。
いきなり会社から確定拠出年金に代わったと言われて困っている方、また自営業者(無職含む)や主婦(夫)、さらに一部の会社員で、個人型確定拠出年金(iDeCo)に興味はあるけどよく分からないといった方のために、確定拠出年金についてわかりやすく解説します。
*本記事を含め一連の解説は基本的に個人型確定拠出年金(iDeCo)に対するものです。しかし、基本的な考え方は企業型確定拠出年金でも同じと思ってください。
[最終更新日:2020.6.30]最新の情報に更新。
本記事は記事執筆時点の情報に基づき記載しています。
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確定拠出年金とは? iDeCo/イデコとは?
公的年金制度(国民年金、厚生年金)に上乗せする形で企業年金があります。そして、企業年金と言えば、かつては確定給付企業年金が一般的でした。社員が将来年金としてもらえる金額は、あらかじめ定めた規定に基づき決定されます(当然、在職中の給与などに依存します)。実際に拠出金を運用するのは会社側です。もし、運用がうまくいかず、その規定で決まった額を支払えなくなると、会社側はその分を補てんしなければならず、結果的に企業側の負担が増します。
そこで登場したのが確定拠出年金です。DCや日本版401Kとも言われます。
毎月の掛金は会社が負担します。しかし、後は、社員一人一人が、それぞれの責任で好きなように運用してください。
と簡単に言えばこういう制度です。
ハイリスク・ハイリーターンを求めるもよし、安全第1で運用するもよし、あなた自身が決めることができます。勿論、その結果、運用に失敗したとしても全てあなたの責任という事です。
今まで資産運用なんて興味なかった方にとって、いきなりそんな事言われても戸惑われる事でしょう。勿論、会社側は説明会や投資教育を行っているはずですが、そんな話を聞いてもわからないという方も多いかと思います。
しかし、入社して定年まで働けば、老後まで会社が面倒を見てくれるという時代は終わりました。これからは、豊かな老後生活を送る為に、自分自身が勉強し、そして運用していかなければならないのです。
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)
確定拠出年金には、企業年金の一つとして導入される企業型確定拠出年金だけでなく、自営業者(無職含む)などが加入できる個人型確定拠出年金(iDeCo)もあります。個人型確定拠出年金(iDeCo)は、2017年より加入できる方が大幅に増え、20才以上60才未満であれば、自営業者のみならず、会社員や公務員、そして専業主婦(夫)も加入できます。
2022年10月以降、企業型DCに加入している方がiDeCoに加入する要件が緩和され、さらに多くの方がiDeCoを利用できるようになります。
但し、毎月拠出できる金額は加入者により異なります。下表に最大拠出額をまとめます。
加入者 | 最大拠出額(月額) | |
自営業など | 第1号被保険者 | 68,000円 |
会社員 (第2号被保険者) | 企業年金無 | 23,000円 |
企業年金有 DCのみ | 20,000円 | |
企業年金有 DBのみ or DBとDC | 12,000円 | |
公務員 | 第2号被保険者 | 12,000円 |
専業主婦(夫) | 第3号被保険者 | 23,000円 |
*DBとは確定給付年金、DCは企業型確定拠出年金の事です。
*DCに加入している方は、事業主掛金の引下げ等を規約に定めた場合に限り、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する事が出来ます。但し、2022年10月より規約変更無しでiDeCoとの併用が可能になります。
上表は最大拠出額であって、最低5,000円から拠出する事が出来ます。
引出せるのは原則60歳以降
注意しなければならないのは、原則、60歳以降でないと引き出せない事。
*通算加入者期間が10年未満の場合は、さらに受取可能年齢が繰り下がります。
これをデメリットという方もいますが、あくまで年金制度で老後資金を貯めるものです。安易に解約・引出出来たら意味がありません。寧ろ、メリットと考えるべきでしょう。
重要このような制度が出来たのは、国や企業は老後の面倒は見れない、「制度は整えたから、自分の老後は自分で何とかしろ」というメッセージでもあります。もう、知らない、興味がないというのでは通用しません。
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個人型確定拠出年金(iDeCo)の金融機関の選択
企業型確定拠出年金の場合は、会社と契約した金融機関のプランを使う事になります。個人で選ぶ事は出来ません。
一方、個人型確定拠出年金(iDeCo)は自由に金融機関を選ぶことが出来ますし、途中で、他の金融機関に変更する事も可能です。(変更には手数料がかかる場合があります)
但し、個人型確定拠出年金(iDeCo)は手数料がかかります。国民年金基金連合会、信託銀行、そして加入した金融機関の手数料です。金融機関によっては、手数料を無料としているところもありますが、それでも年間2,052円は絶対にかかります(毎月拠出の場合)。5,000円以上かかる金融機関も多くあります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の金融機関(運営管理機関と言います)選択時には、先ず手数料に注目しましょう。
iDeCoは運営管理期間手数料無料の金融機関を選ぶ!
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確定拠出年金の商品の選択
企業型・個人型確定拠出年金に加入したら、たくさんある運用商品の中から、自分が投資する商品を選ばなければなりません。
企業型の場合は、会社が指定したプランにある商品から、個人型の場合、加入した金融機関により商品ラインアップが異なります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の金融機関選択時には、手数料に加え、商品ラインアップにも注目する必要があります。
その中から、ご自分が投資する商品を選択するわけですが、一度決めたからと言って、後から変更できないわけではありません。自由に変更できますのでご安心を。
商品の中には、複数の投資信託があります。何に投資するかは、普通に投資する場合と全く同じです。本サイトの投資入門の記事などを参考にして下さい。
パッシブ(インデックス)運用・アクティブ運用、国内・海外、債券・株式・リート等の投資信託があります。
また、一つは定期預金などの元本保証の商品が含まれていますので、投資は嫌だという方は、これを選択する事も出来ます。
確定拠出年金のメリット・デメリット
さて、これから具体的な説明を進めていきますが、先ず確定拠出年金のメリット・デメリットを要点だけまとめておきます。
- iDeCoの掛金が全額所得控除の対象になる。
iDeCoの掛金だけでなく、企業型確定拠出年金でも個人で拠出できるマッチング拠出という制度があり(他の企業年金が無ければ、会社の拠出額と合わせて最大55,000円/月で会社拠出額を超えない事)、これも所得控除の対象です。 - 60歳以降、一時金として受け取る時は退職所得控除、年金として受け取れば公的年金等控除が受けられる。
- 運用中の運用益は非課税
- 比較的、信託報酬の安い投資信託がラインアップされている(金融機関によっては必ずしもそうではない場合がありますので注意)。
- 原則60歳以降でないと引き出せない。(これは老後資金・年金として貯蓄する上でメリットでもあります)
- 個人型の場合、手数料がかかる。
- 将来「年金資産に対し課税する特別法人税」(年1.173%)がかかる可能性も否定できない。
現在、この課税は凍結中です。 - 受取時、上記退職所得控除、公的年金等控除を超える部分については、運用益だけでなく元本にも税金がかかる。
- 公的年金、私的年金とあわせて、年金のもらいすぎは損する事も?
次回以降、それぞれの項目について詳しく解説していきます。
第1回(本記事)個人型確定拠出年金(iDeCo) そのメリットとデメリットを徹底解説(1) ~概要編~
第2回個人型確定拠出年金(iDeCo) そのメリットとデメリットを徹底解説(2) ~所得控除に勝る資産運用無し~
第3回個人型確定拠出年金(iDeCo) そのメリットとデメリットを徹底解説(3) ~え、元本にも税金かかる!~
第4回個人型確定拠出年金(iDeCo) そのメリットとデメリットを徹底解説(4) ~運用編~
第5回個人型確定拠出年金(iDeCo) そのメリットとデメリットを徹底解説(5) ~手数料&特別法人税~
第6回個人型確定拠出年金(iDeCo) そのメリットとデメリットを徹底解説(6) ~まとめ~
運営管理機関手数料無料のSBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、イオン銀行など、下記ページに主要金融機関のiDeCoをより詳しく比較・解説してあります。