2020年より始まった外国に投資する国内公募投資信託の外国税額控除(二重課税調整措置)、今回、この外国税額控除の対象となるETF、
の2期目の分配金が入金されましたので、実際に外国税額控除が適用されているか、そして、どのように国内税が計算されているかを確認してみます。
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国内籍ETF MAXIS米国株式・全世界株式上場投信【2558/2559】の分配金への外国税額控除(二重課税調整措置)
先ず、外国税額控除(二重課税調整措置)の基本的な考え方は下記ページをご覧ください。
分配金(収益)1円当たりの外国所得税額
外国税額控除にあたり重要なのが「分配金(収益)1円当たりの外国所得税額」。
これは下式で表されます。
収益1円あたりの外国所得税 = (期中外国所得税額 / 収益からの分配額) x (収益からの分配額 / 期末収益分配可能額)
これが控除される外国税額となるのですが、重要なのは黄色マーカーの項。
収益分配可能額のうち、どれだけを分配金として出すかにより控除される外国税額控除が変わってきます。収益分配可能額を全額分配金として出した場合に、最も外国税額控除の恩恵を受ける事が出来ます。
MAXIS 米国株式(S&P500)/全世界株式(オール・カントリー)の場合
当然、「分配金(収益)1円当たりの外国所得税額」はファンド、ETF、及び決算毎に異なります。
2020.12月期の決算によると、
ETF | 分配金(/口) | 分配金1円当たり外国納税額 | 外貨建資産割合 |
MAXIS 米国株式 | 63円 | 0.1063057439 | 0.9984 |
MAXIS 全世界株式 | 64円 | 0.1008127489 | 0.9266 |
例えば、米国株式の場合、配当課税は10%ですので、単純には、
分配金1円あたりの外国納税額は0.11円(=1/0.9-1)となりますが、前章の解説のように、配当税率がそのまま「分配金(収益)1円当たりの外国所得税額」となるわけではありません。
またMAXIS全世界株式の場合、約7%の国内株式からの配当も含まれますので、外貨建資産割合が米国株式より小さく、分配金1円あたりの外国納税額も小さくなっています。(米国と米国以外で税率もそう変わらないのでしょう)
尚、(非上場)投資信託では、配当収入(インカムゲイン)だけでなく、キャンピタルゲイン分も分配金として出さないと、外国税額控除の恩恵を完全に受ける事は出来ませんが、ETFの場合、配当収入だけの分配でも、完全に外国税額控除を受ける事が出来ると思われます。
*(非上場)投資信託では上式の「期末収益分配可能額」がインカム+キャピタル、ETFではインカムのみと管理人は理解しています。(ただし、明確な根拠がある訳ではなく、この真偽を保証するものではありません)
分配金 外国税額控除後の国内課税(所得税・住民税)
実際にMAXIS 米国株式、MAXIS 全世界株式の外国税額控除の配当金に対する国内課税を検証してみます。
管理人が計算した結果ですが、実際の配当金明細書の値と一致する事を確認しています。(2558の所得税が1円だけ異なる点を除く)
尚、いずれも5口の場合で計算します。 (管理人が5口保有しており、実際の結果と比較する為)
MAXIS 米国株式(S&P500)【2558】
外国税額 控除適用 | 従来 | |
(1)分配金(国内課税前) | 315円 [=63x5] | 315円 [=63x5] |
(2)外国所得税額 | 33.5円 [=0.106x63x5] | --- |
(3)課税標準 グロスアップ | 348.5円 [=(1)+(2)] | --- |
(4)控除限度額 | 53.3円 [=(3)x外貨建資産割合x15.315%] | --- |
(5)控除外国所得税 | 33.5円 [(2)、(4)の小さい方] | --- |
*所得税・住民税は1円未満切り捨てで計算 | ||
(6)所得税 | 19円 [=(3)x15.315%-(5)] | 48円 [=(1)x15.315%] |
(7)住民税 | 17円 [=(3)x5%] | 15円 [=(1)x5%] |
(8)国内税合計 | 36円 [=(6)+(7)] | 63円 [=(6)+(7)] |
(9)税引き後分配金 | 279円 [=(1)-(8)] | 252円 [=(1)-(8)] |
(10)国内税率 | 11.4% [=(8)/(1)] | 20.0% [=(8)/(1)] |
従来に対して8.6%pt、国内税が低くなっています。
米国配当課税10%で、完全に米国課税分が控除される理想的な場合では(外国+国内税合計で)8.0%pt差がつくはずですが、それと概ね同等の値になっており、外国税額控除の恩恵を十分受けている事が確認出来ました。
*(10)の国内税率は1円未満切上げの影響で本来の税率と若干異なります。
尚、実際は所得税が20円(国内税合計 37円)となっており今回の計算結果と1円だけ異なります。これは(2)~(5)における端数処理の影響と推測します。
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MAXIS 全世界株式(オール・カントリー)【2559】
外国税額 控除適用 | 従来 | |
(1)分配金(国内課税前) | 320円 [=64x5] | 320円 [=64x5] |
(2)外国所得税額 | 32.3円 [=0.101x64x5] | --- |
(3)課税標準 グロスアップ | 352.3円 [=(1)+(2)] | --- |
(4)控除限度額 | 50.0円 [=(3)x外貨建資産割合x15.315%] | --- |
(5)控除外国所得税 | 32.3円 [(2)、(4)の小さい方] | --- |
*所得税・住民税は1円未満切り捨てで計算 | ||
(6)所得税 | 21円 [=(3)x15.315%-(5)] | 49円 [=(1)x15.315%] |
(7)住民税 | 17円 [=(3)x5%] | 16円 [=(1)x5%] |
(8)国内税合計 | 38円 [=(6)+(7)] | 65円 [=(6)+(7)] |
(9)税引き後分配金 | 282円 [=(1)-(8)] | 255円 [=(1)-(8)] |
(10)国内税率 | 11.9% [=(8)/(1)] | 20.3% [=(8)/(1)] |
従来に対して8.4%pt、国内税が低くなっています。
米国株式に比べて、全世界株式では国内株式が約7%含まれる為、若干、外国税額控除のメリットが小さくなるとはいえ、十分、その恩恵を受けている事がわかります。
*(10)の国内税率は1円未満切上げの影響で本来の税率と若干異なります。
まとめ
以上、2020年から適用されるようになった国内公募投資信託の外国税額控除(二重課税調整措置)、MAXISの二つのETFで、実際に適用され、それが概ね計算通りの結果になっている事を検証・確認しました。
このように外国税額控除が適用されたETFは、無分配の投資信託より有利になる場合があります。
詳しくは下記ページをご覧ください。