海外に投資したいけど為替リスクが怖くて躊躇している方も多いかと思います。
一方、為替リスクを低減させる為に為替ヘッジを行うインデックスファンドも多く運用・販売されています。
そこで、本記事では、為替ヘッジ有のインデックスファンドをポートフォリオに組み込むことで、リスク・リターン・シャープレシオ(*)がどのように変化するかを検証します。
*シャープレシオ(投資・運用効率・効率係数)とは、リターン(-無リスク資産のリターン)をリスクで割った値で、1リスク当たりのリターンを示す指標です。勿論、大きい値ほど効率が良いという事になります。
ここでは無リスク資産のリターンを0として計算。
尚、本記事は三菱UFJ信託銀行の下記レポートを参考しています。
参考記事「年金ポートフォリオにおける為替リスク管理の考え方」
また、日興アセットマネジメントが運用する下記ファンドの基準価額を使用させて頂きました。
*先進国債券はFTSE世界国債インデックス、先進国株式はMSCI KOKUSAIをベンチマークとするインデックスファンドです。
- インデックスファンド海外債券(ヘッジなし)1年決算型
- インデックスファンド海外債券(ヘッジあり)1年決算型
- インデックスファンド海外株式(ヘッジなし)
- インデックスファンド海外株式(ヘッジあり)
- インデックスファンドTOPIX(日本株式)
*以後示すデータは上記ファンドの信託報酬控除後の値となります。
また全て2020.1末時点の直近15年のデータです。
[最終更新日:2020.2.27]全面改訂。
本記事は原則2020.1末時点の情報に基づき記載しています。
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見出し
先進国債券インデックスファンドへの為替ヘッジの効果
先進国債券クラスとして、為替ヘッジ有ファンドをポートフォリオに組み込んだ場合の効果を見てみます。
先進国債券 為替ヘッジ有無の相関
先ず、為替ヘッジ有無の相関を見てみます。
全くといっていいほど相関がありません。相関係数は-0.002。
これは、いかに先進国債券における為替の影響・成分が大きいかを示しています。
為替ヘッジ有の比率によるリスク・リターン・シャープレシオへの影響
為替ヘッジ無、為替ヘッジ有の保有比率を変えてリスク・リターンを調べたのが下図。
リターンは、比率0%、即ち為替ヘッジ無の場合が最も高く、為替ヘッジ比率を高くするにつれて低くなります。
一方、為替ヘッジ比率を上げていくとリスクも減少します。
そして為替ヘッジ比率概ね70%以上でリスクは変わらず、リターンのみ減少していく傾向があります。
次に、シャープレシオの為替ヘッジ比率依存を見てみます。
為替ヘッジ比率を上げるにつれシャープレシオは上昇し、約75%で極大値を持ち、これ以上上げると、逆にシャープレシオの減少につながります。
ここまでのまとめ
以上のように、
先進国債券では為替の影響が非常に大きく、為替ヘッジ有を75%程度入れる事でシャープレシオを最大に出来ます。
尚、これは上記、三菱UFJ信託銀行のレポートとも概ね一致します。
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先進国株式インデックスファンドへの為替ヘッジの効果
先進国債券と同様の評価を先進国株式についても行います。
先進国株式 為替ヘッジ有無の相関
先進国株式における為替ヘッジ有無の相関です。
両者は非常に強い相関を持ち、相関係数は0.914。
これから、先進国株式において為替変動の成分は小さいと推測出来ます。
為替ヘッジ有の比率によるリスク・リターン・シャープレシオへの影響
先ずは、為替ヘッジ比率を変えたときのリスク、リターンの関係です。
為替ヘッジ比率が大きくなるほど、リスクは減少しますが、同時にリターンも減少します。
為替ヘッジ無のリスクが19%に対し、為替ヘッジ100%では14%、為替ヘッジで5%程リスクが減少しますが、この減少分はヘッジ無のリスクの1/4に過ぎません。
次に、為替ヘッジ比率に対するシャープレシオの変化です。
先進国債券と同様、為替ヘッジ比率を大きくする事でシャープレシオを向上する事が出来、80~85%で最大値をとります。
ただ、その依存性は非常に小さい事に注意してください。
先進国債券では、為替ヘッジ比率によってシャープレシオが0.34~0.60と大きく変化しますが、先進国株式では0.38~0.43と極僅かな変化に留まっています。
ここまでのまとめ
先進国株式でも、先進国債券同様、為替ヘッジ比率を上げる事でシャープレシオを向上させる事ができますが、その改善効果は僅か。
もともと株式における為替の影響が小さい事もあり、積極的に為替ヘッジを行う事の意義は小さいように思えます。
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先進国債券での為替ヘッジのもう一つの効果 ~株式と逆相関に~
先進国債券の為替ヘッジは、リスクの低減のみならずシャープレシオを大きく改善する事も出来ますが、さらに、もう一つ大きな効果があります。
それは、株式との相関係数を下げる、逆相関に出来る事です。
債券を株式下落時のクッションとして投資している方も多いかと思いますが、相関係数がマイナスになるという事は分散投資にとって重要な意味を持ちます。
先進国債券(為替ヘッジ有無)と先進国株式との相関
為替ヘッジ有無の先進国債券と先進国株式(為替ヘッジ無)の相関です。
為替ヘッジ無が順相関となっているのに対し、為替ヘッジは逆相関を示しています。
先進国債券(為替ヘッジ有無)と国内株式(TOPIX)との相関
先進国株式だけではありません。
為替ヘッジ有の先進国債券は国内株式(TOPIX)とも逆相関になります。
相関係数のまとめ
先進国債券為替ヘッジ有無、先進国株式為替ヘッジ有無、国内株式(TOPIX)との相関係数をまとめます。
また、先進国債券でシャープレシオが最大となる為替ヘッジ比率75%の場合も示します。
[スマホの方は横にスクロールしてご覧ください]
先進国債券 | 先進国債券 (為替ヘッジ) | 先進国株式 | 先進国株式 (為替ヘッジ) | 先進国債券 (75%ヘッジ) | |
先進国債券 | 0.684 | ||||
先進国債券 (為替ヘッジ) | -0.002 | 0.725 | |||
先進国株式 | 0.611 | -0.447 | 0.097 | ||
先進国株式 (為替ヘッジ) | 0.295 | -0.384 | 0.914 | -0.076 | |
国内株式 | 0.362 | -0.252 | 0.575 | 0.520 | 0.066 |
為替ヘッジ有りの先進国債券が先進国株式に対して-0.447と大きな逆相関、国内株式とも-0.252と逆相関です。
尚、先進国債券(75%為替ヘッジ有)のケースでは、為替ヘッジ無よりは相関係数が小さくなっているもののマイナスまではいかず、株式との逆相関という点では効果が大きくありません。
先進国債券 50% + 先進国株式 50%の組合せでは?
人気のセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドや世界経済インデックスファンドが採用している、カウチポテトポートフォリオとも言われる債券、株式に半分ずつ投資した場合で、為替ヘッジの効果を見てみます。
*両ファンドとも新興国・日本にも投資しますが、ここでは単純化する為、先進国債券・株式に50%ずつ投資するとします。
- 債券・株式とも為替ヘッジ無
- 債券のみ為替ヘッジ有
- 株式のみ為替ヘッジ有
- 債券の75%のみ為替ヘッジ有
- 債券・株式とも為替ヘッジ有(フルヘッジ)
の5通りで検証します。
先ず、リスク・リターン特性が下図。
これらのリターン・リスク、そしてシャープレシオを下表にまとめます。
リターン (年率) | リスク (年率) | シャープレシオ | |
為替ヘッジ無 | 5.47% | 12.98% | 0.42 |
債券のみ ヘッジ | 5.17% | 9.06% | 0.57 |
株式のみ ヘッジ | 4.67% | 9.39% | 0.50 |
フルヘッジ | 4.09% | 6.59% | 0.62 |
債券75% のみヘッジ | 5.27% | 9.93% | 0.53 |
リターン・リスクとも最も高いのが為替ヘッジを全く行わない場合。ただ、シャープレシオでは最低です。
一方、債券・株式とも100%為替ヘッジを行った場合のシャープレシオが最も高くなります。
債券のみ為替ヘッジを行った場合も、若干フルヘッジよりはシャープレシオで劣りますが、比較的良好なパフォーマンスを示しています。
尚、債券のみだと最もシャープレシオが高かった「債券75%のみにヘッジを行う」ケースは、債券100%にシャープレシオで劣ります。これは、株式との逆相関が弱くなった為と思われます。
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まとめ
先進国債券、株式に為替ヘッジを行った場合の効果について調べてきました。
先進国債券については、為替ヘッジを行う事でシャープレシオを向上させる効果、さらに株式と逆相関になるという効果も得られます。
一方、先進国株式については、若干シャープレシオが向上するものの、もともと為替変動による成分が小さい事もあり大きな効果は認められません。
以上から、アセットアロケーションに債券を組み入れている方にとって、為替ヘッジ有先進国債券も十分検討する価値があると言って良いでしょう。
(勿論、先進国株式でも為替ヘッジでリスクを下げる事が出来ますが、管理人的にはあまり積極的に導入する意義を見出せません)
*尚、為替ヘッジには信託報酬やその他コストには見えてこないコストもかかります。ただ、上記検討は、このコスト分を含めた結果です。
先進国債券インデックスファンド(為替ヘッジ有無)の比較、最新の情報は下記記事をご覧ください。
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詳細は下記記事をご覧ください。
また、人気のグローバル3倍3分法ファンドも債券先物で為替の影響を極力減らし、債券と株式の逆相関でパフォーマンス向上を目指すことを特徴の一つとするファンドです。
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