ピクテ投信投資顧問が運用し、アクティブファンドながらノーロード、そして比較的信託報酬を抑えたiTrustノーロード・シリーズの一つで、海外(主に先進国)の株式に投資するiTrust世界株式、NISAつみたて投資枠の対象ファンド、そして楽天証券の個人型確定拠出年金(iDeCo)にも採用されているファンドです。
そのiTrust世界株式のパフォーマンスを、先進国株式の代表的指数で本ファンドの参考指数となっているMSCI WORLDとの比較を中心に評価します。
[最終更新日:2024.8.29]全て最新の情報に更新。
本記事は原則2024年7月末日時点の情報に基づき記載しています。
見出し
iTrust世界株式の基本情報
先ず、iTrust世界株式の基本情報をまとめます。
iTrust世界株式の信託報酬は2023.7.11より、0.979%から0.913%に引き下げられました。
運用会社 | ピクテ投信投資顧問株式会社 |
設定日 | 2016年2月19日 |
信託期間 | 無期限 |
運用形態 | アクティブファンド |
投資形態 | ファミリーファンド |
ベンチマーク | 無 |
参考指数 | MSCIワールド(配当込・ネット) |
購入時手数料 | 無(ノーロード) |
信託財産留保額 | 無 |
信託報酬(税込) | 0.913% |
実質コスト | 0.996%(2024.4.10決算時点) |
純資産総額 | 102.4億円(2024.7.31時点) |
マザーファンド 純資産総額 | 300.9億円(2024.4.10時点) |
分配金実績 | 無 |
NISA(つみたて投資枠) | 対象 |
NISA(成長投資枠) | 対象 |
個人型確定拠出年金(iDeCo) | 楽天証券など。 |
SBI証券ポイント還元年率 | 0.10% (対象投資信託1,000万円以上保有で0.20%) (*1) |
楽天証券ポイント還元年率 | ---%(*1) |
マネックス証券ポイント還元年率 | 0.08% |
松井証券ポイント還元(年率) | 0.30% |
(*1)楽天証券 2022.4より投資信託保有による毎月のポイント還元は廃止され、残高が初めて一定の金額を超えたときのポイント付与に変更(一部ファンドを除く)。
iTrust世界株式は、設定が2016年と比較的新しく純資産総額は漸く100億円を超えたばかりのファンドです。
但し、マザーファンドは2007年設定と10年以上の実績があり、同じマザーファンドで運用するファンドとしてピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンド(3ヵ月決算型)[2007.5.31設定、信託報酬 1.65%]があります。
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iTrust世界株式の運用方針、投資対象
運用方針
主に高い競争優位性をもつグローバル優良企業の株式に分散投資します。
(このような企業には1.豊富な資金力、2.優れた開発力、3.価格競争力、4.ブランド力、5.マーケティング力の5つの強みがあります)主に先進国に投資しますが、新興成長国に投資する事もあります。
iTrust世界株式 交付目論見書より抜粋して引用。
ベンチマークはありません。参考指数はMSCIワールド(配当込・ネット)です。
*MSCIワールドは日本を含む先進国を対象とする株式指数です。
先進国株式インデックスファンドでよく使われる指数 MSCI KOKUSAIは、MSCIワールドから日本のみを除いた指数です。
投資対象
2024年7月末時点の組入上位10銘柄、地域別構成比は下表のようになります。組入銘柄数は45銘柄。
銘柄名 | 国 | 比率 | |
1 | VISA | 米国 | 3.9% |
2 | サーモフィッシャーサイエンティフィック | 米国 | 3.8% |
3 | マイクロソフト | 米国 | 3.8% |
4 | ノボ・ノルディスク | デンマーク | 3.7% |
5 | RWE | ドイツ | 3.4% |
6 | アマゾン・ドット・コム | 米国 | 3.0% |
7 | ASMLホールディング | オランダ | 2.9% |
8 | アルファベット | 米国 | 2.9% |
9 | エヌビディア | 米国 | 2.7% |
10 | ボストン・サイエンティフィック | 米国 | 2.6% |
米国中心で、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット(Google)、エヌビディアといったMSCI WORLDでも上位を占める銘柄も含まれています。
画像引用:iTrust世界株式 月次レポート(2024/7)
MSCI WORLDに比べ、米国、日本の比率が小さく、新興国が4.8%も入っています。
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iTrust世界株式のパフォーマンス (MSCI WORLDと比較)
*以下、年率リターン・リスクは月次データ(終値)より計算。またシャープレシオは、無リスク資産の収益率0としています。
*基準価額は、各運用会社のサイトまたは投資信託協会より入手。分配金がある場合は、分配金再投資の価額に独自に変換。
*MSCI WORLDはMSCI社公式サイトより引用、三菱UFJ銀行公表の為替レート(TTM)で管理人が独自に円換算。
ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンド(3カ月決算型)で比較・評価
前述のようにiTrust世界株式は設定から約8年半と、評価するのに十分な運用期間があるとは言えません。そこで、同じマザーファンドで運用するピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンド(3カ月決算型)(以下、ピクテ・メジャーと略して表記する場合があります)の基準価額で評価します。
ただし、両者には信託報酬・実質コストに大きな差があります。そこでリターン(年率)を評価する際は、ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドのリターンをiTrust世界株式のリターンに換算して表記します。
ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドの年間騰落率をT1、実質コストS1、iTrust世界株式の年間騰落率をT2、実質コストS2としたとき、
T2 = (T1+1) x (1-S2) / (1-S1) -1
尚、2022年の年間騰落率はピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドが-8.0%、iTrust世界株式が-7.4%ですが、上式でピクテ・メジャーの騰落率からiTrust世界株式の騰落率を計算すると-7.4%となり一致します。また2017~2022年の6年間で年間騰落率の差(換算値と実際の値の差)は最大でも0.06%ptと十分小さく、この換算値で評価しても問題ないでしょう。
*iTrust世界株式は2023.7.11に信託報酬を引下げましたが、それ以前の騰落率についても引下げ後の信託報酬を使用して換算
基準価額のチャート
ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドの設定日(2007年5月31日)を基準日(基準価額10,000)とし、ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンド、MSCI WORLDと比較したチャートを示します。
さらに、2016年2月19日に設定されたiTrust世界株式の基準価額を、設定日時点でピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドの基準価額に合わせた値もプロットします。
ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドとiTrust世界株式は当然ながら同じようなチャートを示します。勿論、信託報酬の低いiTrust世界株式が若干上回っています。
そして、参考指数であるMSCI WORLDとも非常に類似した動きを示しています。
ただ、iTrust世界株式、ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドは、2016年頃からMSCI WORLDを若干下回っているように見えます。
以下、運用成績を詳細に分析していきます。
直近17年の運用実績(リターン・リスク)
2024年7月末日時点の17年のリターン・リスクを見てみます。ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドの(概ね)設定来のデータになります。
表中、赤字はピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドから信託報酬/実質コストの差分を考慮して計算したiTrust世界株式の騰落率です。(リスクも厳密には異なりますが、ここでは一定と仮定)
ピクテ・メジャー [iTrust世界株式] | MSCI WORLD | |
年率リターン | 6.80% [7.63%] | 8.49% |
年率リスク | 19.65% | 19.32% |
シャープレシオ | 0.35 [0.39] | 0.44 |
*一般的にシャープレシオが大きいほど投資効率が良いとされています。
設定来では、ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドはMSCI WORLDに対してリターン・リスクとも若干負けており、信託報酬が低くなったiTrust世界株式に換算しても、未だ僅かですが負けています。
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5年間の運用成績(2007年5月~2024年7月) ~ローリングリターン~
上述の現時点までの運用成績は、ある一期間の基準価額の暴騰・暴落に大きく左右され、ファンドの比較・評価として十分とは言えません。
また、アクティブファンドの評価として重要な要素は、常にインデックスに対して勝ち続ける事が出来るかという点です。
そこで、2007年5月から5年間、さらに2007年6月から5年間・・・2019年7月から5年間と、起点(投資月)を1カ月ずつずらして、それぞれの5年間のリターン、リスクを計算します。全部で147個(区間)のデータとなります。
この複数の5年間のリターンの平均、最大値、最小値をプロットしたのが下図。
ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドはMSCI WORLDに対して(最小値以外は)負けていますが、信託報酬の差分を考慮して計算したiTrust世界株式だと平均値は僅かに負けているものの概ね同等と言って良いでしょう。
下表に5年間のリターン、リスクの平均値をまとめます。(ここでのリターン、リスク、シャープレシオは147区間の平均値を示したもので、厳密な意味でのリスクやシャープレシオとは異なります。)
表中、赤字はピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドから信託報酬の差分を考慮して計算したiTrust世界株式の騰落率です。(リスクも厳密には異なりますが、ここでは一定と仮定)
ピクテ・メジャー [iTrust世界株式] | MSCI WORLD | |
年率リターン | 10.37% [11.23%] | 11.79% |
年率リスク | 18.30% | 17.95% |
シャープレシオ | 0.57 [0.61] | 0.66 |
iTrust世界株式に換算しても僅かですが負けています。
次に、投資月に対する5年間のリターン(年率)をプロットします。
ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンド/iTrust世界株式は、投資開始月によらずMSCI WORLDと概ね同等のリターンを示しています。
厳密には、この147区間の5年間で(信託報酬・実質コストの差分を考慮して計算した)iTrust世界株式のリターンはMSCI WORLDに対し47勝100敗と負け越しています。ただ、そのリターンの差は最大でも4.1%ポイントとそう大きくはありません。
(ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドだと12勝135敗)
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1年間騰落率 年別比較
次に各年(1年毎)の1年騰落率(リターン)を比較します。
2017年以降はiTrust世界株式の実際のデータ、2016年以前はピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドから換算した値を用います。
*2024年は7月まで
騰落率が高い方 |
年 | iTrust世界株式 | MSCI WORLD | 差 |
2024年 7月まで | 15.7% | 19.9% | -4.2%pt |
2023年 | 25.8% | 32.2% | -6.4%pt |
2022年 | -7.4% | -5.6% | -1.8%pt |
2021年 | 30.3% | 36.3% | -6.0%pt |
2020年 | 5.5% | 8.9% | -3.4%pt |
2019年 | 29.8% | 27.8% | 1.9%pt |
2018年 | -9.7% | -11.5% | 1.8%pt |
2017年 | 20.1% | 18.8% | 1.3%pt |
2016年 | -4.6% | 2.5% | -7.1%pt |
2015年 | 2.4% | -0.7% | 3.2%pt |
2014年 | 19.2% | 22.1% | -2.9%pt |
2013年 | 53.0% | 53.8% | -0.9%pt |
2012年 | 32.9% | 29.3% | 3.6%pt |
2011年 | -10.3% | -10.2% | -0.1%pt |
2010年 | -4.8% | -2.0% | -2.8%pt |
2009年 | 42.0% | 35.4% | 6.6%pt |
2008年 | -54.4% | -53.7% | -0.7%pt |
2008年~2024年(7月まで)の17年弱でiTrust世界株式はMSCI WORLDに8勝9敗と僅かに負け越しです。特に2020年以降負けが続いています。
殆どの年で大きな差はついていませんが、2016年、2021年、2023年は6ポイント以上負けています。
iTrust世界株式の分配金
iTrust世界株式は分配金を出した実績はありません。
姉妹ファンドとも言えるピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンド(3ケ月決算型)が年4回分配金を出しているのとは対照的です。
これから資産を築いていこうとする資産形成期においては分配金を出さない投資信託の方が有利です。
分配金を出すか否かは運用会社が決定しますが、iTrustシリーズは「分配金をお支払いする事よりも、中長期的な基準価額の上昇を目指した運用を行っています。」(ピクテ公式サイトより引用)となっており、なるべく分配金を出さない方針のようで、ここは評価できるポイントです。
勿論、保有する株式から出た配当はファンドの資産となり、基準価額の上昇につながります。
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iTrust世界株式の人気・評判
月次資金流出入額、純資産総額からiTrust世界株式の売れ行き・人気を見てみます。
*月次資金流出入額は純資産総額の増減に日々の基準価額変動を考慮して計算した概算値。
最近は1億前後(/月)の資金流入に留まり、あまり売れているとは言えません。ただ、資金流出の月は殆どありません。
*特定の日に資金流入が集中している傾向があり、確定拠出年金での流入が多いのかもしれません。
純資産総額も設定から8年半で漸く102億円と決して大きな資産額ではありません。
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公式サイト東京スター銀行まとめ
以上、iTrust世界株式のパフォーマンスを、同じマザーファンドで運用するピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドのデータも用いて参考指数であるMSCI WORLDと比較してきました。
iTrust世界株式はピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドから信託報酬を大幅に引き下げたファンドですが、その引下げの効果もあって、MSCI WORLDと概ね同等のパフォーマンスを残しています。
ただ、そのパフォーマンスはMSCI WORLDを上回るまでには至らず、アクティブファンドとしては物足りなさを感じます。
尚、ピクテ投信投資顧問は各種情報発信(投資情報サービスinfoなど)にも力を入れている会社です。また、投資の基礎となる学習資料も充実しています。例えば「資産運用の基礎」などをご覧になってみては如何でしょう?
販売会社
iTrust世界株式は下記ネット証券などで購入できます。
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*dカード、マネックスカードとも通常ショッピング時は1.0%。
また投資信託保有でポイントもたまります(一部ファンドを除く)。
*マネックスカードの発行にはマネックス証券の口座開設が必要です。
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楽天カード決済で10万円、楽天キャシュ決済で5万円、あわせて月15万円まで利用可能。
さらに、楽天ポイントで投資信託を購入できます。
公式サイト楽天証券
公式サイト楽天カード
また個人型確定拠出年金(iDeCo)では楽天証券で購入出来ます。
*これらは全て過去のデータですので、将来のリターンを保証するものではありません。投資は自己責任でお願いします。また、iTrust世界株式のデータはピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンドから推測したデータに基づい評価している事にも注意して下さい。