我々の大切な年金(の財源の一部)を株式や債券で運用(*)するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、このGPIFのアセットアロケーションやポートフォリオ、またはGPIFが公表している各アセットクラスのリターン、リスク、相関係数等を参考にされている方も多いかと思います。
GPIFは毎年、運用状況の詳細について公表していますが、これの2020年度版がアップされましたので、この資料を参考に、アセットアロケーションをより詳細に分析し、ご紹介していきます。
(*)年金給付の財源は保険料収入と国庫負担が9割程度で、GPIFが運用している年金積立金から得られている財源は1割程度。短期的な運用成績が年金給付金に影響を与える事はありません。よってGPIFは長期的な観点から投資・運用を行っています。
[GPIF公式サイトより引用、管理人が一部抜粋・編集して記載]
尚、GPIFは外国債券・外国株式という表現をしていますが、実際には先進国のみならず新興国にも投資しています。この比率についても分析していきます。
2003(平成15)年度から外国株式アクティブ運用の中で、また、2014(平成26)年度からは外国株式パッシブ運用の中で、新興国株式投資を行っており、2015(平成27)年度末で約3 兆円の投資規模となっています。(p.46)
外国株式のマネジャー・ストラクチャーは、パッシブ運用については、2010(平成22)年度に一部の運用受託機関の入替を行い、2014(平成26)年度には基本ポートフォリオの見直しに合わせてベンチマークを先進国のみで構成されるMSCI KOKUSA(I 除く日本、円ベース、配当込み、管理運用法人の配当課税要因考慮後)から新興国も含むMSCI ACWI(除く日本、円ベース、配当込み、管理運用法人の配当課税要因考慮後)に変更することで新興国の経済成長の取り込みを図っています。(p.99)
~GPIFの平成27年度業務概況より引用~
[最終更新日:2021.7.23]2020年度版のデータに更新。
*本記事はGPIF公表の「2020年度の運用状況」に記載されているデータを元に管理人が独自に編集・記載しているものです。
*ファンドのベンチマークから地域などを分類している為、一部管理人の推測を含みます。
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見出し
GPIFの基本ポートフォリオ
GPIFの基本ポートフォリオは2020年4月に変更され、現在は下図のようになっています。
所謂、4資産均等型バランスファンドのような資産配分です。
但し、為替ヘッジ有の外国債券は国内債券に分類されています。
また、外国株式・債券とありますが、先進国、新興国の分類・比率はこれだけでは分かりません。
そこで、実際の運用資産のベンチマーク等から、より詳細なアセットアロケーション、ポートフォリオを解析していきます。
GPIFのポートフォリオの詳細分析 ~先進国・新興国比率は?、パッシブ・アクティブ比率は?~
*GPIFの基本ポートフォリオ策定に用いるベンチマークを政策ベンチマークと呼んでいます。期待リターン、リスク、相関係数の推計にも政策ベンチマークを使用しています。
GPIFの債券ポートフォリオ
国内債券
*GPIFでは為替ヘッジ有先進国債券を国内債券に分類していますが、本記事では外国(先進国)債券として取扱います。
国内債券の政策ベンチマークはNOMURA-BPI(除くABS)。
一般的な国内債券のベンチマークとして使われるNOMURA-BPI総合からABS(Asset Backed Securities:各種資産を裏付けとして発行される債券)を除いたものです。
国内債券は全体の21.6%を占めます。
内、パッシブ運用が71.0%、アクティブ運用が25.3%になります。
アクティブ運用はベンチマークが全て「NOMURA-BPI物価連動国債プラス」になっています。
外国債券(先進国債券、新興国債券)
外国債券の政策ベンチマークはFTSE世界国債インデックス(除く日本)。
一般的な先進国債券インデックスファンドと同じベンチマークです。
外国債券は全体の26.8%を占めます。
内、先進国債券が91.6%、為替ヘッジ有の先進国債券が6.8%、新興国債券が1.3%となります。
パッシッブ運用の多くがFTSE世界国債インデックス(除く日本)ですが、アクティブ運用の中にブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックス(除く日本円、中国元、ヘッジなし・円ベース)をベンチマークとするファンドがあり、ここに新興国債券が含まれると思われます。
*ここではブルームバーグ・グローバル総合の4%が新興国と仮定して計算。
*FTSE世界国債、ブルームバーク総合の違いは、年金シニアプラン総合研究機構が公表している「外国債券インデックスに関する調査研究」に詳しく解説されています。
GPIF 債券ポートフォリオのまとめ
GPIFが運用する債券部分のポートフォリオは下図のようになります。
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GPIFの株式ポートフォリオ
国内株式
国内株式の政策ベンチマークはTOPIX(配当込み)。
国内株式は全体の25.4%を占めます。
内、パッシブ運用が93.0%、アクティブ運用が7.0%になります。
実際は、TOPIX連動型を中心にしつつも、RUSSELL/NOMUA、MSCI JAPAN、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数等をベンチマークとするファンドもあります。
外国株式(先進国株式、新興国株式)
外国株式の政策ベンチマークはMSCI ACWI[All Country World Index](除く日本)。
先進国株式だけでなく新興国株式も含まれます。
外国株式は全体の25.5%を占めます。
内、パッシブ運用が88.5%、アクティブ運用が11.5%になります。
そして先進国株式・新興国株式の比率は86.6% : 13.4% 。MSCI ACWI(除く日本)の比率と概ね同じです。
*実際はMSCI ACWI(除く日本、除く中国A株)をベンチマークとするファンドが多くありますが、中国A株の比率はそう大きくないと推測し、ここでの計算では無視しています。
GPIF 株式ポートフォリオのまとめ
GPIFが運用する株式部分のポートフォリオは下図のようになります。
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まとめ ~GPIFの詳細なポートフォリオ・アセットアロケーション~
GPIFの詳細なポートフォリオ (先進国・新興国を分類)
以上の解析から判明した全体のポートフォリオ詳細を下図にまとめます。外国を先進国・新興国に分類してあります。
パッシブ(インデックス)運用、アクティブ運用の比率
GPIFではパッシブ(インデックス)運用だけでなく、アクティブ運用も行っています。これをまとめたのが下図。
最後に
以上、GPIF 2020年度のポートフォリオを詳細に分析した結果です。
GPIFのポートフォリオを参考にする方、あるいは期待リターン・リスク・相関係数等の値を使用する方、
外国株式は先進国だけでなく新興国株式も含まれる事に注意して下さい。