新興国の株式に投資するインデックスファンド、つみたて新興国株式について解説します。
[最終更新日:2020.12.16]全て最新の情報に更新。
本記事は原則2020年11月末日時点の情報に基づき記載しています。
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見出し
つみたて新興国株式の基本情報
つみたて新興国株式は三菱UFJ国際投信が運用するインデックスファンド「つみたてんとうシリーズ」の一つです。eMAXISやeMAXIS Slimシリーズとは基本的に同じマザーファンドで運用する兄弟ファンド。eMAXIS Slimが原則ネット証券・銀行専用商品なのに対し、つみたてんとうシリーズは、「つみたてNISA」を主なターゲットとし、最寄りの金融機関で相談できるファンドとして2017年8月に設定されました。現在7本のファンドから構成されています。コスト(信託報酬)はeMAXISよりは低く、eMAXIS Slimよりは高くなっています。
参考記事三菱UFJ国際投信 インデックスファンド「つみたてんとうシリーズ」運用開始。
今回解説するのは新興国の株式に投資するつみたて新興国株式。
先ず、つみたて新興国株式の基本情報をまとめます。
運用会社 | 三菱UFJ国際投信 |
設定日 | 2017年8月16日 |
運用形態 | インデックスファンド |
投資形態 | ファミリーファンド |
ベンチマーク | MSCI エマージング・マーケット・インデックス(配当込み・ネット) |
購入時手数料 | 無 |
信託財産留保額 | 無 |
信託報酬(税込) | 0.3740% |
実質コスト | 0.601%(*) |
純資産総額 | 79.1億円(2020.11.30時点) |
(マザーファンド) 純資産総額 | 1,041億円(2020.5.12時点) |
分配金実績 | 無 |
つみたてNISA | 対象商品 |
SBI証券ポイント還元年率 | 0.10% (対象投資信託1,000万円以上保有で0.20%) |
楽天証券ポイント還元年率 | 0.048% |
(*)実質コストは2020.6.25決算より
投資対象
ベンチマークはMSCI エマージング・マーケット・インデックス[配当込み・ネット]で新興国の株式に投資します。
ネットとは配当に対する源泉徴収税を考慮した指数ですが、その税率が日本に対して適切に考慮されているかは定かではありません。
*2019.7.1よりベンチマークが除く配当から、配当込み、配当課税を考慮するネットに変更となりました。
参考記事三菱UFJ国際投信 eMAXIS Slimなどのベンチマークを配当込指数に変更。
*インデックスファンドのベンチマークは[除く配当]と[税引前配当込/グロス]、[税引後配当込/ネット]の3種類ありますが、ベンチマークの配当除く・含むは運用成績に直接関係するものではありません(少なくとも過去においては)。但し、運用報告書などに記載されているベンチマークとの乖離を見る時は注意が必要です。詳細は下記記事を参照して下さい。
参考記事インデックスファンドのベンチマーク(除く配当/プライス、配当込/グロス・ネット)と乖離の評価方法。
マザーファンド
つみたて新興国株式はファミリーファンド方式でマザーファンドを介して新興国株式に投資します。
「新興国株式インデックスマザーファンド」はeMAXIS 新興国株式インデックス、eMAXIS Slim新興国株式インデックス、eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)など多くのファンドで使われており、純資産総額1,041億円(2020.5.12時点)と新興国株式としては十分大きな純資産を有しています。
投資国
投資する国、比率は下図のようになります。
画像引用:つみたて新興国株式月次レポート(2020/11)
1位がケイマン諸島となっていますが、これは事実上中国企業で、香港と合わせ中国が40%程度を占めます。
新興国株式インデックスファンドの投資国の詳細は下記記事を参照して下さい。
参考記事【外国株式インデックスファンド】各インデックス(指数)、そして新興国、新興国ってどこの国?
投資銘柄
投資している銘柄は下表のようになります。(組入上位10銘柄)
画像引用:つみたて新興国株式 月次レポート(2020/11)
組入銘柄数は1,393。ベンチマークとしているMSCI エマージング・マーケット・インデックスの構成銘柄の殆どを保有している事になります。
上位10銘柄中6銘柄は中国(ケイマン諸島)・香港が占めており、アリババやテンセントなど日本でも良く知られた企業が上位になっています。
手数料(信託報酬、実質コストなど)
つみたて新興国株式の信託報酬は0.3740%(税込)。
実質コストは0.601%(税込)。
勿論、購入時手数料無料(ノーロード)、信託財産留保額は無です。
*実質コストは信託報酬以外のコストに全て消費税がかかると仮定して、消費税8%から10%に換算した概算値です。
他社 新興国株式インデックスファンドとの信託報酬・実質コスト比較
他社の(低コスト)新興国株式インデックスファンドと信託報酬・実質コストを比較します。
尚、下表中、SBI・新興国株式インデックス・ファンド、楽天・新興国株式インデックス・ファンド、iFree新興国株式インデックス以外のファンドは、つみたて新興国株式と同様、ベンチマークがMSCI エマージング・マーケット・インデックスです。
(注)下表は基本的に最新の情報に随時更新しています。よって記事中の記載と異なる場合がありますが、その際は下表の値が最新の情報となります。
*[]内は各ファンドのベンチマーク
ファンド | 信託報酬 | 実質コスト | |
---|---|---|---|
1 | SBI・新興国株式インデックス・ファンド [FTSEエマージング] | 0.1760% | 0.200% |
2 | eMAXIS Slim 新興国株式インデックス [MSCI EM] | 0.1870% | 0.408% |
2 | <購入・換金手数料なし>ニッセイ新興国株式インデックス [MSCI EM] | 0.2079% | 0.698% |
4 | 楽天・新興国株式インデックス・ファンド [FTSEエマージング・オールキャップ] | 0.2320% | 0.358% |
5 | i-SMT 新興国株式インデックス [MSCI EM] | 0.3630% | 0.558% |
6 | (三菱UFJ)つみたて新興国株式 [MSCI EM] | 0.3740% | 0.601% |
6 | たわらノーロード新興国株式 [MSCI EM] | 0.3740% | 0.953% |
6 | 三井住友・DC新興国株式インデックス [MSCI EM] | 0.3740% | 0.864% |
6 | Smart-i新興国株式インデックス [MSCI EM] | 0.3740% | 0.946% |
6 | iFree 新興国株式インデックス [FTSE RAFIエマージング] | 0.3740% | 0.654% |
*実質コストは信託報酬以外のコストに全て消費税がかかると仮定して、消費税8%から10%に換算した概算値です。
MSCI エマージング・マーケット・インデックスをベンチマークとするファンドの中ではeMAXIS Slim 新興国株式インデックスが最安値、これと比べるとつみたて新興国株式は信託報酬で約0.19%高くなっています。
勿論、上表では低コストのファンドのみリストアップしていますので、全体から見るとつみたて新興国株式も十分低コストの部類ですが、姉妹ファンドでもあるeMAXIS Slim 新興国株式インデックスには敵いません。
信託報酬の変更履歴
つみたて新興国株式は2017年8月に設定された後、まだ信託報酬引下げの実績はありません。
引下げ日 | 信託報酬(税込) | 備考 |
2017/8/16 | 0.3672% | 新規設定。設定時はeMAXIS Slimと同じで最低水準。 |
2019/10/1 | 0.3740% | 消費税増税(8%-->10%) |
設定当初はeMAXIS Slimと同じ信託報酬で、他社を含めて最低水準のレベルでした。しかし、その後eMAXIS Slimが大幅かつ複数回の引下げを行い、今では大きな差がついてしまいました。
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つみたて新興国株式の運用状況
資金流出入額 & 純資産総額 (評判・人気は?)
月次資金流出入額、純資産総額からつみたて新興国株式の売れ行き・人気を見てみます。
(*)月次資金流出入額は、日々の純資産総額の増減額に騰落率を考慮して算出した概算値になります。
ここ1年では2億(/月)を超える月が多く新興国株式としては比較的売れているファンドです。
ただ、新興国株式インデックスファンドの中で最も人気のあるeMAXIS Slim 新興国株式インデックスは5~15億(/月)で、これと比較すると大きな差がついています。
運用状況は?
インデックスファンドではベンチマークとの乖離が小さい事がファンド評価の重要な要素です。そして、乖離がなければ、そのコストに応じた騰落率になる筈です。
*ベンチマークは同じMSCIエマージング・マーケッツでも配当込・除くなどファンドにより異なりますが、実際の運用は両者で変わらない事から、配当込で配当課税を適切に考慮したインデックスを、ここではベンチマークと定義します。
下図は、2020年11月末日時点の実質コストに対する1年騰落率を複数のファンドでプロットしたものです。
グラフの左側(コストが低い)、上側(騰落率が高い)にあり、そしてグレーの点線上にある(乖離が少ない)ファンドが優秀なファンドという事になります。
*多くのファンドがコスト起因以外でのベンチマークとの乖離はないだろうという前提で評価。
新興国株式では、コストと騰落率の相関が悪く、どのファンドがベンチマークに正確に連動して運用されているかを判断する事が出来ませんが、少なくとも同じマザーファンドで運用するeMAXIS Slim 新興国株式インデックスとは同一直線上にプロットされ、つみたて新興国株式はコストが高い分、騰落率も低くなっています。
まとめ
つみたて新興国株式は、比較的低コスト、そこそこ人気もあり新興国株式に投資するファンドとして間違った選択ではないでしょう。
ただ、より低コストのeMAXIS Slim 新興国株式インデックスで運用すれば、さらに高いリターンを得ることが出来ます。(株価低迷時では損失が小さくなる)
つみたて新興国株式とeMAXIS Slim 新興国株式インデックスは中身は基本的に同じもの、値段(コスト=信託報酬)と販売会社が違うだけです。
もし、つみたて新興国株式だけしか取扱っていない金融機関(多くは銀行や店頭証券)で取引されているのであれば、eMAXIS Slim 新興国株式インデックス等の超低コストファンドを扱っているネット証券に変更されては如何でしょう。
つみたてNISAの口座も毎年変更する事が出来ます。
販売会社
つみたて新興国株式は下記の金融機関で購入出来ます。
SBI証券
投資信託保有で毎月Tポイントがもらえます。さらにTポイントで投資信託を購入する事も出来ます。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイト SBI証券
楽天証券
投資信託保有で毎月楽天ポイントがもらえます。さらに楽天ポイントで投資信託を購入する事も出来ます。また、楽天カード(クレジットカード)で投資信託を積立購入する事が出来ます(上限5万円/月)。勿論ポイント還元があり事実上1%割引で購入出来るようなものです。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイト楽天証券、楽天カード
SMBC日興証券(ダイレクトコース)
大手店頭証券で唯一超低コストファンドを取扱い(ダイレクトコースのみ)。
国内株式を定額(100円~)、買付手数料無料(100万円以下)で買付・積立出来、さらにdポイントも使えるキンカブ・日興フロッギーも魅力の証券会社。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイトSMBC日興証券
松井証券
松井証券は、複数の投資信託を積立する際、設定したポートフォリオ(配分比率)になるよう自動的に購入商品・金額を調整してくれる「リバランス積立」が魅力(無料で利用可能)。
(つみたてNISAでも購入可能、但しリバランス積立はつみたてNISAでは非対応)
公式サイト松井証券
等の主要ネット証券、さらに多くの銀行、店頭証券で購入出来ます。
勿論、つみたてNISA対象のファンドです。(上記金融機関でもつみたてNISAを取扱っていない場合があります)
一方、上記ネット証券であればeMAXIS Slim 新興国株式インデックスも取扱っています。
どちらを選択すべきかは言うまでもないでしょう。
個人型確定拠出年金(iDeCo)ではauカブコム証券でつみたて新興国株式を取扱っています。
ライバルとなるファンド
楽天・新興国株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド)
つみたて新興国株式 *本記事
他の新興国株式インデックスファンドとの比較、最新の人気・運用状況は下記記事を参照して下さい。
インデックスファンドの信託報酬、実質コスト、純資産総額の一覧は下記記事を参照して下さい。