手軽に米国バンガード社ETFに投資でき、かつコスト(信託報酬)も低く、人気を集めている楽天・バンガード・ファンド。
さらに、SBIアセットマネジメントにも、より低コストでバンガード社ETFに投資するSBI・Vシリーズがあります。
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド (旧: SBI・バンガード・SP500)
- SBI・V・全米株式インデックス・ファンド (2021.6.29設定)
ここで気になるのが、直接バンガードETFを購入するのと楽天・バンガード・ファンド、SBI・Vシリーズに投資、どちらがコスト的に得なの? という点かと思います。
海外ETFと国内ファンドの比較は分配金に対する課税の問題など複雑ですが、今回は分配金を考慮せず(*)、単に購入・売却、及び保有にかかる手数料という点だけに注目して比較します。
*分配金に対する課税、及び課税相当分の複利効果、分配金再投資のコストを全て無視した計算です。
尚、今回、この計算をするきっかけとなったのはバンガード・インベストメンツ・ジャパン(株)がモーニングスターETFカンファレンス2017、及び、バンガードブロガー限定交流会で公表したプレゼン資料です。
管理人は参加していませんので、水瀬ケンイチ氏のブログ記事を参考にさせて頂きました。
以下、基本的にはバンガード・ジャパンと同様の方法で計算しますが、一部、バンガード・ジャパンの計算に納得できない点がある為、それについては本文中にコメントします。
*バンガード社の日本支社であるバンガード・ジャパンは2020年に閉鎖しました。
[最終更新日:2021.6.4]全て最新情報に更新。
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見出し
米国バンガードETFの直接投資と楽天・バンガード・ファンド、SBI・Vシリーズ 手数料比較の前提条件
計算の前提条件
下記の条件で計算します。
- 為替レート:$1=110円
- 為替手数料(片道) :4銭 (住信SBIネット銀行で外貨売買、SBI証券で取引)
- バンガードETF買付手数料 無料
- バンガードETF売却手数料 0.45%(下限
$5無、上限$20) x 消費税1.1 - 運用損益は考慮せず元本が維持されると仮定。
- ETFの場合、本来、経費率は投資額から為替手数料、購入手数料を引いた額に対してかかるが、ここでは簡略化の為、投資額に経費率をかけた値とする。
- ETFは実際には1株単位でしか購入できないが、ここではそれを無視。
尚、バンガード資料では$1=112円、為替手数料25銭、ETF売買手数料下限$5、消費税8%で計算していますので、その点だけが異なります。
一括投資の場合
一括投資し、それを20年間保有後売却した場合の年間手数料を計算します(合計コストを1年間のコストに換算)。
バンガードETFの場合、かかるコストは為替手数料、株式売買手数料、経費率、
一方の楽天・バンガード・ファンド、SBI・Vシリーズは、投資先ETFの経費率を含む信託報酬+その他のコスト=実質コストだけとなります。
積立投資の場合
バンガード・ジャパンの資料にも積立投資の計算結果が記載されていますが、下記の点を変更しています。
- バンガードの資料は1年間だけ積立て、その後、(積立を中止し)20年間保有した場合の計算のようですが(つみたてNISAの1年分をイメージ)、今回は、20年間積立を継続するケースで計算します。
- バンガードの計算では、1年間12回の購入手数料を2倍して年間売買コストとしていますが、購入は12回でも売却は1回だけですので、ここを修正して計算してあります。
尚、経費率・信託報酬(実質コスト)は毎年年末時点の総資産額に対して1年分がかかるものと簡略化しています。
一括投資の場合と同様、20年間のコスト合計を20で割って1年間のコストとして表記します。
バンガードVTと楽天・全世界株式インデックス・ファンド[楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)]の比較
- 楽天・全世界株式インデックスファンド [信託報酬] 0.2120% [実質コスト] 0.261%
- VT : [経費率] 0.08%
一括投資、20年保有のケース
一括投資し、20年間保有後に売却した場合の投資額に対する年間コスト(トータルのコストを保有年数で割った値)をプロットしたのが下図です。
楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)は信託報酬のみの場合と、実質コストの両方で計算してあります。
VTと楽天・バンガード・ファンドで交差する点はなく、投資額によらずVTを直接購入した方がコスト的に有利となります。
100万円を一括投資した場合の年間コストは、VTが957円、楽天バンガード(実質コスト)が2,610円と1,653円の差となります。
*尚、バンガード社の計算は株式売買手数料を投資額によらず一定(上限額)にしているのではないかと推測します。
20年間積立投資の場合
今度は積立投資の場合です。
毎月投資でも投資額によらずVTの方が有利になります。
毎月の積立額3.3万円なら、それぞれの年間コストはVTが3,735円、楽天バンガード(実質コスト)が10,852円と7,117円の差となります。
まとめ
以上、投資額、及び一括、積立によらずVTに直接投資する方がコスト的には圧倒的に有利となります。
尚、以前の評価では少額投資の場合楽天・バンガードの方が有利となり、投資額によりどちらが有利になるかの分岐点が存在しました。今回、この分岐点が無くなったのはSBI証券、楽天証券、マネックス証券のVT買付手数料が無料となり、米国株式取引手数料下限$5が撤廃された事によります。
参考までに上記計算と同条件で、以前の株式取引手数料売買とも0.45%、下限を$5に変更した場合を下図に示します。(積立投資)
4.7万円以下だと楽天・バンガード・ファンド(実質コスト)の方がVTより有利という結果になります。
以前の手数料体系では、少額で積み立てる場合、VTのコストが高く、楽天・バンガード・ファンドが相対的に有利になっていたという事です。
言い換えると、VTの買付手数料無料化(&売却時下限撤廃)の効果は大きく、これにより少額での米国ETF投資がより身近になったと言ってよいでしょう。
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VTI/VOOと楽天・バンガード・ファンド(全米株式)、SBI・Vシリーズ(S&P500/全米株式)の比較
VTIに投資する楽天・全米株式インデックス・ファンドとSBI・V・全米株式インデックス・ファンド、
VOOに投資するSBI・V・S&P500インデックス・ファンド
を同様に比較します。
*SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンドは2021.6.15にSBI・V・S&P500インデックス・ファンドに名称が変更されました。
尚、ここでは全て実質コストで比較します。
*SBI・V・全米株式は2021.6.29設定で未だ実質コストが分かりませんので、SBI・V・S&P500インデックスと同じ実質コストと仮定します。
- 楽天・全米株式インデックスファンド [信託報酬] 0.1620% [実質コスト] 0.209%
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド [信託報酬] 0.0938% [実質コスト] 0.114%
- SBI・V・全米株式インデックス・ファンド [信託報酬] 0.0938% [実質コスト] (仮定値0.114%)
- VOO /VTI : [経費率] 0.03%
投資期間20年の場合 (一括投資 & 分割投資)
基本的な傾向はVT/楽天・全世界株式の比較と同じですので、実質コストで計算した一括投資、分割投資のグラフのみを示します。
VT/楽天・全世界株式の時と同様、投資額、一括・積立によらずバンガード ETF VOO / VTIの方が有利となります。
SBI・Vシリーズは信託報酬、実質コストともに十分低く設定され、楽天・全米株式インデックス・ファンドの約半分のコストに抑えられてはいますが、それでもVOO / VTIの経費率の低さ、そして米国ETFの売買手数料の低コスト化により、コスト的には歯が立ちません。
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まとめ
以下、楽天・バンガード・ファンド(全世界株式/全米株式)、SBI・V・S&P500/全米株式と、バンガードETF VT、VTI、VOOへの直接投資を単純にコスト(為替手数料、株式売買手数料、経費率・信託報酬・実質コスト)の観点から比較してきましたが、投資額、一括・積立によらずバンガードETFに直接投資する方が有利となります。
これは、上記バンガードETFの購入時手数料が無料となり、さらに米国株式取引手数料下限が撤廃された事が大きく寄与しています(SBI、楽天、マネックス証券)。
そのコストを一括投資100万円(20年間保有)、積立投資毎月3.3万円(20年間積立)を例にとり下表にまとめます。
*SBI・V・全米株式はSBI・S&P500と実質コストが同じと仮定。
投資期間 | 楽天バンガード /SBI・V のコスト | バンガード ETFのコスト | 差額 |
楽天・全世界株式 VS. VT | 2,610円 | 957円 | 1,653円 |
楽天・全米株式 VS. VTI | 2,090円 | 457円 | 1,633円 |
SBI・Vシリーズ VS. VOO/VTI | 1,140円 | 457円 | 683円 |
投資期間 | 楽天バンガード /SBI・V のコスト | バンガード ETFのコスト | 差額 |
楽天・全世界株式 VS. VT | 10,852円 | 3,735円 | 7,117円 |
楽天・全米株式 VS. VTI | 8,690円 | 1,656円 | 7,034円 |
SBI・Vシリーズ VS. VOO/VTI | 4,740円 | 1,656円 | 3,084円 |
(注)2021.6.4時点でVOOの価格は385ドル程度で購入するには最低4万円程度の資金が必要です。
最後に ~コストだけでは評価出来ない楽天・バンガード・ファンド/SBI・Vシリーズの魅力~
コスト的には不利になる楽天バンガード /SBI・Vシリーズ。
一方で、投資に時間・労力をかけたくない方が米国ETFのVT/VTI/VOOに投資するのは容易ではありません。
購入するだけなら簡単ですが、年4回もある分配金の再投資、外貨を預り金として保有している期間の為替損益の計算(*)など、(人によっては)結構煩わしいと感じる作業が必要になります。
こういった事を一切気にする事無くバンガード社ETFに投資できるのが楽天バンガード /SBI・Vシリーズの魅力です。
そして、この手数料として上記コスト差が高いかどうかを判断して下さい。
さらに、国内投資信託であれば多くのネット証券で100円から投資でき、資金を無駄なく運用できるというメリットもあります。
(*)米国ETFの売買だけなら特定口座で源泉徴収してくれますが、外貨のまま預り金として放置していると、その間の為替損益が雑所得とみなされる事があります。これを防ぐため配当金が入金されたらすぐに外貨MMFを購入するなどの方法もありますが結構面倒です。
勿論、バンガードETFに魅力を感じない方は、例えばeMAXIS Slim等の低コスト・インデックスファンドを購入した方が良いでしょう。
ここで取り上げたバンガード社ETF VT/VTI/VOOの買付手数料が無料、そして低コストのインデックスファンドを取り扱っているは下記3証券です。
*SBI・V・S&P500はSBI、マネックス証券、SBI・V・全米株式はSBI証券のみの取扱い。
SBI証券
米国ETFなら住信SBIネット銀行との組み合わせで為替手数料が安いSBI証券がおすすめ。
三井住友カードで投信積立が出来ます。ポイント付与率0.5%(ゴールド、プラチナカードはさらに付与率アップ)。
*三井住友カード(NL)なら年会費永年無料。
公式サイト(PR) SBI証券、三井住友カード(NL)
楽天証券
国内インデックスファンドなら、楽天カード(クレジットカード)で投資信託を積立購入する事が出来ます。勿論ポイント還元あり。
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マネックス証券
マネックスカード(クレジットカード)で投信積立が出来ます。投信積立での還元率1.1%。マネックスカードの発行はマネックス証券口座が必要。
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参考記事マネックスカード(クレジットカード)での投信積立決済サービス
本記事はあくまで保有コスト(購入・売却手数料込み)のみを比較した結果であって、トータルで見たとき米国ETFが有利か否かについて言及したものではありません。
分配金に対する課税を含めた比較は下記記事を参照して下さい。
また、ETFではトータルリターンがマイナスの時でも保有する株式から出た配当を分配金として出します。この場合、分配金に課税されるETFが大きく不利になる場合もあります。詳細は下記記事をご覧ください。
楽天・全世界株式インデックス・ファンドの詳細は下記ページを参照して下さい。
楽天・全米株式インデックス・ファンドの詳細は下記ページを参照して下さい。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドの詳細は下記ページを参照して下さい。
SBI・V・全米株式インデックス・ファンドの詳細は下記ページを参照して下さい。