1本のファンドで日本を含む全世界の株式に投資するインデックスファンド、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式) について解説します。
[最終更新日:2023.6.1]初版
本記事は原則2023.5末日時点の情報に基づき記載しています。
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Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の基本情報
本記事で解説するのは1本のファンドで日本を含む全世界の株式に投資するTracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)。
2023年4月26日設定と未だ運用を開始したばかりの新しいファンドです。
SNSなどでは「トレカン」と呼ばれたりもしています。
先ず、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の基本情報をまとめます。
運用会社 | 日興アセットマネジメント |
設定日 | 2023年4月26日 |
運用形態 | インデックスファンド |
投資形態 | ファミリーファンド |
ベンチマーク | MSCI All Country World Index(配当込み・ネット) |
購入時手数料 | 無 |
信託財産留保額 | 無 |
信託報酬(税込) | 0.05775%(*1) |
実質コスト | 決算前 |
純資産総額 | 4.48億円(2023.5.31時点) |
(マザーファンド) 純資産総額 | [先進国株式]2,580億円(2022.10.26時点) [新興国株式]959億円(2022.5.16時点) [日本株式] ?億円(xxx時点) |
分配金実績 | 無 |
つみたてNISA | 対象商品 |
SBI証券ポイント還元年率 | 0.0175% |
楽天証券ポイント還元年率 | 取扱い無 |
マネックス証券ポイント還元年率 | 取扱い無 |
(*1)信託報酬は、その含まれる費用が他社と異なります。詳細は後述。
投資対象
ベンチマークはMSCI All Country World Index [ACWI][配当込み・ネット]で日本を含む先進国、新興国の株式に投資します。
MSCI ACWIは全世界47カ国・地域(先進国23カ国+新興国24カ国)の大型株、中型株、約2,900の銘柄から構成される時価総額加重平均型の指数です。これだけで全世界株式の時価総額の約85%をカバーします。
尚、ネットとは配当に対する源泉徴収税を考慮した指数ですが、その税率が日本に対して適切に考慮されているかは定かではありません。
*インデックスファンドのベンチマークは[除く配当]と[税引前配当込/グロス]、[税引後配当込/ネット]の3種類ありますが、ベンチマークの配当除く・含むは運用成績に直接関係するものではありません(少なくとも過去においては)。但し、運用報告書などに記載されているベンチマークとの乖離を見る時は注意が必要です。詳細は下記記事を参照して下さい。
参考記事インデックスファンドのベンチマーク(除く配当/プライス、配当込/グロス・ネット)と乖離の評価方法。
マザーファンド
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)は、ファミリーファンド方式で下記マザーファンドに投資します。
画像引用:Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)交付目論見書
海外株式インデックスMSCI-KOKUSAI(ヘッジなし)マザーファンド、海外新興国株式インデックスMSCIエマージング(ヘッジなし)マザーファンドは長い運用実績のある既存のマザーファンドで、海外株式が2580億円(2022.10.26時点)、海外新興国株式が959億円(2022.5.16時点)と十分な純資産を保有しています。
一方、日本株式インデックスMSCIジャパン・マザーファンドは、本ファンドと同時に新規設定されたものです。新規マザーファンドという事で、運用当初はベンチマークとの乖離、コストの増大などが懸念されますが、本ファンド全体で見た時、日本株式は5%程度ですので、そう大きな影響はないと推測します。
投資国比率
(ベンチマークの)投資国比率は下図のようになります(2023.3末時点)。
トップはアメリカで61%、全体の半分以上を占めます。そして日本 5%、イギリス 4%と続きます。
詳細は下記記事を参照して下さい。
参考記事【外国株式インデックスファンド】各インデックス(指数)、そして先進国、新興国ってどこの国?
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手数料(信託報酬、実質コストなど)
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の最大の魅力は何と言っても圧倒的な信託報酬の低さ。
全世界株式インデックスファンドだけでなく、ファンド全体としても最低水準の0.0525%(税込)です。
まだ設定されたばかりですので実質コストはわかりません。
勿論、購入時手数料無料(ノーロード)、信託財産留保額は無です。
信託報酬の定義、他社と異なる?eMAXIS Slim全世界株式(オルカン)は追従するか?
驚異的に低い信託報酬ですが、そこにはちょっとばかり裏があって(?)、信託報酬の定義というか、信託報酬に含まれる費用の範囲が他社ファンドと異なります。
具体的には、指数の標章使用料等がTracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の信託報酬には含まれていません。
*これは、Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)、Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)、さらにグローバル3倍3分法ファンド等も同様です。
尚、詳細はそれぞれのファンドの請求目論見書を参照して下さい(交付目論見書には記載がありません)。
そこで、重要なのが実質コスト。
信託報酬以外のコストがどれだけかかるか、そして、トータルの実質コストがeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)より低くなるかに注目です。
*実質コストが明らかになる初回決算は2024.5.16ですので、公開されるのは2024.7頃になるでしょう。
三菱UFJ国際投信 eMAXIS Slimの対応
業界最低水準の運用コストを目指すeMAXIS Slim、過去には他社類似ファンドが信託報酬を引下げると、それに追従して複数回の引下げを行ってきました。
但し、現時点で三菱UFJ国際投信は、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の直接のライバルとなるeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬引下げを行っていません。
そして、
公正な比較対象となる他社類似ファンドの信託報酬率が弊社ファンドの信託報酬率を下回る場合、ファンドの継続性に配慮した範囲で信託報酬を引下げる事を基本としています。
~中略~
類似ファンドの中では、弊社のeMAXIS Slimシリーズでは信託報酬に含めている「ファンドの経理業務」「目論見書・運用報告書の作成に係る費用」「対象指数(インデックス)の商標使用料(ライセンスフィー)」などを信託報酬とは別に請求しているものもあります。引用元 : 三菱UFJ国際投信「eMAXIS Slim」シリーズの基本理念について
とのコメントを発表しています。 他社ファンド名までは明確にしていませんが、明らかにTracersシリーズ等を対象にしたものと思われ、公正な比較対象とならない事から、当面は信託報酬を引下げない、追従しないと読み取れます。
他社 全世界株式インデックスファンドとの信託報酬・実質コスト比較
MSCI ACWIをベンチマークとする他社のインデックスファンド、及びベンチマークは異なりますが(日本を含む)全世界の株式に投資するインデックスファンドと比較してみます。
さらに、eMAXIS Slimシリーズの個別のファンド(TOPIX、先進国株式、新興国株式)を6%:83%:11%の比率で組み合わせた場合も参考までに記載します。
(注)下表は基本的に最新の情報に随時更新しています。よって記事中の記載と異なる場合がありますが、その際は下表の値が最新の情報となります。
*ファンド名下の[]内はベンチマーク。[FTSE]はFTSE Global All Cap Index、[MSCI]はMSCI All Country World Indexの略。
ファンド | 信託報酬 | 実質コスト | |
---|---|---|---|
(参考) | Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式) | 0.05775% | --- |
1 | SBI・全世界株式インデックス・ファンド [FTSE] | 0.1102% | 0.123% |
- | 個別ファンドの組合せ | 0.1111% | |
2 | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) [MSCI] | 0.1133% | 0.169% |
2 | たわらノーロード 全世界株式 [MSCI] | 0.1133% | 0.232% |
4 | Smart-i Select 全世界株式 [MSCI] | 0.1144% | 0.219% |
5 | SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド [FTSE] | 0.1338% | 0.163% |
6 | 楽天・全世界株式インデックス・ファンド [FTSE] | 0.199% | 0.225% |
7 | つみたて全世界株式 [MSCI] | 0.2200% | 0.279% |
8 | ステート・ストリート 全世界株式インデックス [MSCI] | 0.5280% | 0.595% |
勿論、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)は、ベンチマークが異なるファンドを含めても圧倒的な低さで最安値。
ただし、前述の理由から上表では未だ参考値としています(実質コストが判明した時点で再検討)。
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Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の運用状況
運用状況といっても、設定から僅か1カ月強ですので、あくまで参考データとして見て下さい。
資金流出入額 & 純資産総額 (評判・人気は?)
月次資金流出入額、純資産総額からTracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の売れ行き・人気を見てみます。
(*)月次資金流出入額は、日々の純資産総額の増減額に騰落率を考慮して算出した概算値です。
*2023.4は設定から数日分だけのデータです。
2023年5月の資金流入は4億弱、純資産総額は2023.5末時点で4.5億円です。
まあ、これからですね。
運用状況は? トレカンはオルカンに勝てるか?
インデックスファンドでは、ベンチマークとの乖離が小さい事がファンド評価の重要な要素です。そして、乖離がなければ、そのコストに応じた騰落率になる筈です。
下図は2023年4月末日時点の実質コストに対する1カ月騰落率をベンチマークが同じ複数のファンドでプロットしたものです。
*といってもTracersだけは未だ実質コストが分かりませんので信託報酬でプロットしてあります。
そして、配当課税を適切に考慮した真のベンチマークから決まるコストと騰落率の関係が図中グレーの点線です(多くのファンドがコスト要因以外での乖離がないであろうとの仮定の下、管理人の主観で決めた値)。
このグレーの点線上にあればコスト要因以外でのベンチマークとの乖離がないと推測できます。
あるいは、実質コストを推測する事も出来ます。
*本来はグレーの点線のY切片は指数グロスとネットの中間に来るはずですが、1カ月のように短期だと、このようにずれることが良くあります。
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の騰落率は、(信託報酬でプロットしてあるもの)概ね他のファンドと同一直線上にあります。
1カ月と短い期間ですが、出だしは順調な運用になっていると言って良いでしょう。
*もう少し長期間のデータが出たところで実質コストを推定します。
日次騰落率のeMAXIS Slimとの比較
日次騰落率をeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)と比較します。
下図は日々の騰落率のeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の差をプロットしたものです。
*同時にたわらノーロード全世界株式もプロットしてあります。
*縦軸は%ポイント
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の日次騰落率はeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)と比較して概ね0.01%ポイント以内。
設定当初は大きく乖離するファンドが多いのですが、本ファンドは設定から1カ月強で乖離が見られた日はありません。
*基準価額10,000円で1円の差が0.01%ですので、Tracers, eMAXIS Slimの日次騰落率はほぼ同一といって良いでしょう。
以上、運用結果の評価ですが、僅か1カ月、ファンドの優劣をつけるのは早計です。繰り返しになりますが、あくまで参考として見て下さい。
今後も継続して評価、本記事をアップデートしていきます。
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の分配金
当然、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)は未だ分配金を出した実績はありません。
今後も出さないと予測しますが・・・
これから資産を築いていこうとする資産形成期においては分配金を出さない投資信託の方が有利です。
分配金を出すか否かは運用会社が決定しますが、多くのインデックスファンドが分配金を出さない、無分配としています。
勿論、保有する株式から出た配当はファンドの資産となり、基準価額の上昇につながります。
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まとめ
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)は、MSCI ACWIをベンチマークとし驚異的に低い信託報酬で設定されたばかりの新しいファンドです。
設定当初はベンチマークと大きく乖離する事が多いのですが、本ファンドは設定後1カ月強の騰落率では特に問題はみられず、順調な出だしと言って良いでしょう。
注目は実質コスト。
信託報酬に含まれる費用の範囲が他のファンドと異なるだけに、信託報酬以外のコストがどの程度になるか、実質コストでもeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)より低くなるかが注目。
2024年から始まる新NISAの投資先として、有力な選択肢の一つとなるファンドになると期待しています。
販売会社
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)は現時点でSBI証券 1社だけの取扱いです。
また投資信託保有でTポイント、Pontaポイント、dポイントがもらえます。さらにT/Pontaポイントで投資信託を購入できます。
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勿論、つみたてNISA対象のファンドです。
ライバルとなるファンド
他の全世界株式インデックスファンドとの比較、最新の人気・運用状況は下記記事を参照して下さい。
インデックスファンドの信託報酬、実質コスト、純資産総額の一覧は下記記事を参照して下さい。