米国の株式に投資するインデックスファンド、楽天・全米株式インデックス・ファンド[愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式)]について解説します。
[最終更新日:2021.2.1]純資産総額、「最新の騰落率」を2021.1末時点の情報に更新。
[2020.9.17]全て最新情報に更新。
*本記事は基本的に2020年8月末日時点、及び2020.7決算の情報に基づき記載しています。
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見出し
楽天・全米株式インデックス・ファンド [楽天・バンガード・ファンド(全米株式)]の基本情報
楽天・バンガード・ファンドシリーズは、楽天投信投資顧問が米国大手投信会社の日本法人 バンガード・インベストメンツ・ジャパン株式会社と協働し、バンガードETFに投資する低コストのインデックスファンドです。
今回解説するのは、米国株式に投資しCRSP USトータル・マーケット・インデックスとの連動を目指す楽天・全米株式インデックス・ファンド。
先ず、楽天・全米株式インデックス・ファンドの基本情報をまとめます。
運用会社 | 楽天投信投資顧問 |
設定日 | 2017年9月29日 |
運用形態 | インデックスファンド |
投資形態 | ファミリーファンド *マザーファンドがバンガードETFに投資するので事実上FOF。 |
ベンチマーク | CRSP USトータル・マーケット・インデックス(配当込・グロス) |
購入時手数料 | 無 |
信託財産留保額 | 無 |
信託報酬(税込) | 0.1620% (投資先ETF経費率 0.03%含む) |
実質コスト | 0.209% |
純資産総額 | 1,882.9億円(2021.1.29時点) |
(マザーファンド) 純資産総額 | 1,160億円(2020.7.15時点) |
分配金実績 | 無 |
つみたてNISA | 対象商品 |
SBI証券ポイント還元年率 | 0.03% |
楽天証券ポイント還元年率 | 0.048% |
投資対象
ベンチマークはCRSP USトータル・マーケット・インデックス[配当込み・グロス]で、中・小型株を含む米国株式に広く投資します。
グロスとは配当に対する源泉徴収税を考慮しない指数です。
(注)配当込・グロスは楽天投信投資顧問に確認しましたが公表された情報ではない為、その真偽を保証するものではありません。
実際の運用はマザーファンドを通してバンガード社のETF バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(Total Stock Market ETF【VTI】)に投資します。
画像引用:楽天・全米株式インデックス・ファンド交付目論見書
バンガード・トータル・ストック・マーケットETF 【VTI】
米国株式市場の大型から小型株までも含み、投資可能な銘柄のほぼ100%をカバーする時価総額加重平均型の指数、CRSP USトータル・マーケット・インデックスをベンチマークとするETFです。
その経費率は0.03%。
2020年8月末日時点で3,525銘柄に投資、組入上位10銘柄は下表のようになります。
銘柄 | Ticker | 比率 | |
1 | Apple Inc. | AAPL | 5.8% |
2 | Microsoft Corp. | MSFT | 4.9% |
3 | Amazon.com Inc. | AMZN | 4.2% |
4 | Facebook Inc. | FB | 2.0% |
5 | Alphabet Inc. Class A | GOOGL | 1.4% |
6 | Alphabet Inc. Class C | GOOG | 1.3% |
7 | Johnson & Johnson | JNJ | 1.2% |
8 | Berkshire Hathaway Inc. | BRK.B | 1.2% |
9 | Tesla Inc. | TSLA | 1.1% |
10 | Visa.Inc. | V | 1.0% |
データ引用:米国Vanguardサイトより
上位6位は「GAFAM」と呼ばれる銘柄で19.7%を占めます。
さらに何かと話題のTeslaも9位に入っています。
手数料(信託報酬、実質コストなど)
楽天・全米株式インデックスファンドの信託報酬は0.1320%(税込)
これに投資先ETFの経費率0.03%を加えて、
実質的な信託報酬は0.1620%(税込)。
勿論、購入時手数料無料(ノーロード)、信託財産留保額は無です。
実質コスト
2020年7月15日に3期目の決算を迎え、その実質コストは0.209%(税込)
信託報酬以外のコストが0.047%、1期目0.144%(消費税10%換算)、2期目0.063%(消費税10%換算)より大幅に下がりました。十分許容範囲内と言って良いでしょう。
*実質コストは信託報酬以外のコストに全て消費税がかかると仮定して、消費税8%から10%に換算した概算値です。
楽天バンガードファンドの3期目決算結果の詳細は下記記事を参照して下さい。
他社 類似インデックファンド(米国株式)との信託報酬・実質コスト比較 (S&P500, NYダウ)
CRSP USトータル・マーケット・インデックスをベンチマークとするファンドは楽天・バンガード・ファンド以外にはありませんので、ベンチマークは異なりますが米国株式に投資する他社の低コスト・インデックスファンドと信託報酬・実質コストを比較します。
*ファンド名下の[]内はベンチマーク。[CRSP US]はCRSP USトータル・マーケット・インデックスの略。
*信託報酬・実質コストは税込み。
ファンド | 信託報酬 | 実質コスト | |
---|---|---|---|
1 | SBI・バンガードS&P500インデックス [S&P500] | 0.0938% | 0.114% |
2 | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) [S&P500] | 0.0968% | 0.141% |
DC専用? | SMBC・DCインデックスファンド(S&P500) [S&P500] | 0.0968% | (決算前) |
3 | 楽天・全米株式インデックス・ファンド [CRSP US] | 0.1620% | 0.209% |
4 | つみたて米国株式(S&P500) [S&P500] | 0.2200% | 0.273% |
5 | NZAM・ベータ・NYダウ30 [NYダウ] | 0.2310% | (決算前) |
6 | Smart-i S&P500インデックス [S&P500] | 0.242% | (決算前) |
7 | iFree S&P500・インデックス [S&P500] | 0.2475% | 0.280% |
7 | iFree NYダウ・インデックス [NYダウ] | 0.2475% | 0.276% |
7 | たわらノーロード NYダウ [NYダウ] | 0.2475% | 0.382% |
- | eMAXIS NYダウインデックス [NYダウ] | 0.6600% | 0.687% |
*実質コストは信託報酬以外のコストに全て消費税がかかると仮定して、消費税8%から10%に換算した概算値です。
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)の信託報酬は2019年9月26日設定のSBI・バンガード・S&P500インデックスファンド、2019年11月12日に信託報酬を引下げたeMAXIS Slim米国株式(S&P500)に次いで3位。
上記2本との信託報酬の差が約0.07%と大きくなっています。
中小型株まで広く投資したい方は楽天・バンガード・ファンド、大型株だけで十分という方はeMAXIS Slim米国株式(S&P500)やSBI・バンガード・S&P500インデックスファンドという選択。
[参考]S&P500の対象銘柄は時価総額でCRSP USトータル・マーケット・インデックスの約80%程度となっています。
信託報酬の変更履歴
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)は、設定以降、1回だけ信託報酬引下げの実績があります。ただし、信託報酬そのものではなく投資先ETFの経費率引き下げによるものです。
引下げ日 | 信託報酬(税込) | 備考 |
2017/9/29 | 0.1696% | 新規設定。 |
2019/4/26 | 0.1596% | 投資先ETF VTIの経費率引下げ。 |
2019/4/26 | 0.1620% | 消費税増税(8%-->10%) |
SBI・バンガード・S&P500インデックスファンド、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)との差が広がってきただけに、楽天・バンガード・ファンド(全米株式)も対抗した引下げに期待したいところですが。。。
楽天・全米株式インデックス・ファンド [楽天・バンガード・ファンド(全米株式)]の運用状況
資金流出入額 & 純資産総額 (評判・人気は?)
月次資金流出入額、純資産総額から楽天・バンガード・ファンド(全米株式)の売れ行き・人気を見てみます。
(*)月次資金流出入額は、日々の純資産総額の増減額に騰落率を考慮して算出した概算値になります。
設定以来、毎月10億以上、2020年に入り、50億(/月)を超える月も多くある等非常に大きな資金流入が続いています。
純資産総額も設定から約3年で1,300億を超えています。
今、最も売れているインデックスファンドの一つです。
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)、SBI・バンガード・S&P500インデックスファンドとの比較
ベンチマークは異なりますが同じ米国株式に投資するeMAXIS Slim米国株式(S&P500)、SBI・バンガード・S&P500インデックスファンドと資金流出入額を比較します。
ここ最近はeMAXIS Slim米国株式(S&P500)が圧倒的に人気を集めており、楽天・バンガード・ファンド(全米株式)はSBI・バンガード・S&P500インデックスファンドにも後塵を拝する状況が続いています。信託報酬の差が効いているのでしょうか?
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運用状況は? ~ベンチマークとの乖離~
インデックスファンドではベンチマークとの乖離がファンド評価の重要な要素です。そして、その要因を知る事でファンドをより正しく評価出来るようになります。
先進国株式(MSCI kokusai)などの場合、同じベンチマークの他のファンドと比較する事で、コスト起因、運用の問題などに切り分ける事が出来ますが、楽天・バンガード・ファンド(全米株式)の場合、類似ファンドがありません。
そこで、投資先である米国バンガード社ETF VTIのデータも用いてベンチマークとの乖離の要因を調査します。
評価期間は第3期決算期間にあたる2019年7月17日~2020年7月15日の1年です。
運用報告書にみるベンチマークとの乖離
運用報告書によるとベンチマークとの乖離は-0.4%。
実際の基準価額から小数点第2位まで計算すると-0.40%です。
当然、これにはコスト要因、(コストを除く)運用要因、課税要因などが含まれますので、この乖離の要因を分析しています。
ベンチマークとの乖離の要因分析
[注]本章での考察・検討は下記の仮定、及び管理人の主観が含まれています。公式な情報ではなく、その真偽を保証するものではありませんのでご注意下さい。
・為替レートは当日の三菱UFJ銀行公表の対顧客外国為替相場TTM使用。
・楽天バンガードファンドの基準価額は、米国時間前日のVTIの市場価格(終値)で決まるとする。
・VTIの評価はMarket Priceを使用(データ引用:米国バンガード社サイト)
先ず、楽天・バンガード・ファンド(全米株式)のベンチマークは配当に対する課税を考慮しないグロスです。
以下、ベンチマークとの乖離の要因分析です。
(1)楽天バンガードの信託報酬(投資先ETF VTIの経費率含む)
-0.16%
(2)楽天バンガードの信託報酬以外のコスト
-0.05%
*(1)+(2)が実質コストとなり、当然マイナス乖離の要因となります。
(3)運用上の問題で生じる乖離
これは楽天・バンガード・ファンド、及び投資先ETF VTI両方を含めた乖離です。
全体の乖離 - (1) - (2) - (4) で算出、+0.01%。
(4)VTIの分配金に対する米国課税
VTIは年4回分配金を出しますが、その際、米国で10%源泉徴収されたあとの分配金がファンドの資産となります。
VTIの分配金再投資(配当金非課税)時、及び分配金の90%を再投資した時の騰落率との差(円換算)から、この成分を算出すると-0.20%。勿論、マイナスに乖離する成分となります。。
まとめ
以上をまとめたのが下表。
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)とベンチマークとの乖離は-0.40%ですが、そのうち最も大きい成分が(4)VTI配当金に対する米国課税。
ただ、これはどうしようもありませんし、楽天・バンガード・ファンドだけの問題でもありません。国内から直接米国に投資する、例えばeMAXIS Slim米国株式(S&P500)でも同じです。
*直接VTIに投資した場合は外国税額控除で一部を還付できる場合があります。
*本ファンドは米国株式だけしか投資しませんので、海外ETF経由での3重課税の問題はありません。
(1)の信託報酬、(2)「信託報酬以外のコスト」によるマイナス乖離も致し方ありません。
勿論、信託報酬が下がれば乖離はさらに小さくなります。ただ「信託報酬以外のコスト」は前述のように3期目で十分下がっていますので、これ以上下げる事は難しいと推測します。
問題となるのは(3)の「運用上の問題」ですが、+0.01%と十分小さくなっています。
因みに、若干評価期間がずれますが(2020.7.31時点の1年騰落率での評価)、VTIとベンチマークとの乖離は経費率0.03%を除くと-0.02%。即ち、楽天バンガードは+0.03%の乖離を起こしている事になりますが、これでも十分小さいでしょう。
要は、コスト(実質コスト)、及び配当に対する米国課税分を除くと運用上の乖離は殆どないと言う事です。
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)の分配金
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)は分配金を出した実績はありません。
これから資産を築いていこうとする資産形成期においては分配金を出さない投資信託の方が有利です。
分配金を出すか否かは運用会社が決定しますが、多くのインデックスファンドが分配金を出さない、無分配としています。
勿論、保有する株式から出た配当はファンドの資産となり、基準価額の上昇につながります。
最新の騰落率[利回り] [eMAXIS Slim米国株式(S&P500)、SBIバンガードS&P500との比較] ~2021年1月末日時点~
最新の騰落率をライバルファンドとともにまとめます。
*3年騰落率は年率表記。
[表をクリックすると拡大します]
*1月の結果ですので年初来と1カ月騰落率は同じです。
SBI・バンガード・S&P500インデックスファンド、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)はベンチマークが異なりますので参考値として見て下さい(中小型株有無の違い)。
中小型株を含むからといって必ずしもパフォーマンスが上がるわけではありませんが、ここ1年で見ると、楽天・バンガード・ファンド(全米株式)の騰落率が高くなっています。勿論、将来、どちらが勝るかは分かりません。
まとめ
以上、楽天・全米株式インデックス・ファンド[愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式)]についての解説でした。
米国株式にほぼ丸ごと投資するバンガード社ETF VTIを、国内投資信託として手軽に購入出来る非常に魅力あるファンドです。
実際、設定以来、毎月巨額の資金流入があり大きな人気を集めています。
3期目が終わり実質コスト(信託報酬外のコスト)も下がりました。そして、運用上の問題に起因するベンチマークとの乖離も殆どありません。
米国株式に投資したい、
S&P500より中小型株を含む幅広い銘柄に投資したい、
そして海外ETFに直接投資するのは面倒と感じる方には最適なファンドです。
つみたてNISAやiDeCo(楽天証券のみ)でも投資する事が出来ます。
願わくば、SBI・バンガード・S&P500インデックスファンド、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)と同等の信託報酬に引き下げてくれれば、もっと魅力的なファンドになるのですが。
販売会社
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)は下記の金融機関で購入出来ます。
*主にネット証券、ネット取引での取扱いとなります。
SBI証券
投資信託保有で毎月Tポイントがもらえます。さらにTポイントで投資信託を購入する事も出来ます。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイト SBI証券
楽天証券
投資信託保有で毎月楽天ポイントがもらえます。さらに楽天ポイントで投資信託を購入する事も出来ます。また、楽天カード(クレジットカード)で投資信託を積立購入する事が出来ます(上限5万円/月)。勿論ポイント還元があり事実上1%割引で購入出来るようなものです。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイト楽天証券、楽天カード
SMBC日興証券(ダイレクトコース)
大手店頭証券で唯一楽天バンガードファンドを取扱い(ダイレクトコースのみ)。
国内株式を定額(100円~)、買付手数料無料(100万円以下)で買付・積立出来、さらにdポイントも使えるキンカブ・日興フロッギーも魅力の証券会社。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイトSMBC日興証券
松井証券
松井証券は、複数の投資信託を積立する際、設定したポートフォリオ(配分比率)になるよう自動的に購入商品・金額を調整してくれる「リバランス積立」が魅力(無料で利用可能)。
(つみたてNISAでも購入可能、但しリバランス積立はつみたてNISAでは非対応)
公式サイト松井証券
勿論、つみたてNISA対象のファンドです。(上記金融機関でもつみたてNISAを取扱っていない場合があります)
また、個人型確定拠出年金(iDeCo)で取扱っているのは楽天証券 iDeCo。
他の米国株式インデックスファンドとの比較、最新の人気・運用状況は下記記事を参照して下さい。
インデックスファンドの信託報酬、実質コスト、純資産総額の一覧は下記記事を参照して下さい。