米国の株式に投資するインデックスファンド、楽天・全米株式インデックス・ファンド[愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式)]について解説します。
[最終更新日:2022.4.30]純資産総額、「最新の騰落率」を2022.4末時点の情報に更新。
[2021.9.14]全て最新情報に更新。
*本記事は基本的に2021年8月末日時点、及び2021.7決算の情報に基づき記載しています。
純資産総額 5,000億円突破(2022.3.17)
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見出し
楽天・全米株式インデックス・ファンド [楽天・バンガード・ファンド(全米株式)]の基本情報
楽天・バンガード・ファンドシリーズは、楽天投信投資顧問が米国大手投信会社の日本法人 (旧)バンガード・インベストメンツ・ジャパン株式会社と協働し、バンガードETFに投資する低コストのインデックスファンドです。
今回解説するのは、米国株式に投資しCRSP USトータル・マーケット・インデックスとの連動を目指す楽天・全米株式インデックス・ファンド。
先ず、楽天・全米株式インデックス・ファンドの基本情報をまとめます。
運用会社 | 楽天投信投資顧問 |
設定日 | 2017年9月29日 |
運用形態 | インデックスファンド |
投資形態 | ファミリーファンド *マザーファンドがバンガードETFに投資するので事実上FOF。 |
ベンチマーク | CRSP USトータル・マーケット・インデックス(配当込・グロス) |
購入時手数料 | 無 |
信託財産留保額 | 無 |
信託報酬(税込) | 0.1620% (投資先ETF経費率 0.03%含む) |
実質コスト | 0.187%(*1) |
純資産総額 | 5,498億円(2022.4.28時点) |
(マザーファンド) 純資産総額 | 3,134億円(2021.7.15時点) |
分配金実績 | 無 |
つみたてNISA | 対象商品 |
SBI証券ポイント還元年率 | 0.050% |
楽天証券ポイント還元年率 | ---%(*2) |
マネックス証券ポイント還元年率 | 0.03% |
(*1)実質コストは2021.7.15決算より。
(*2)楽天証券 2022.4より投資信託保有による毎月のポイント還元は廃止され、残高が初めて一定の金額を超えたときのポイント付与に変更。
投資対象
ベンチマークはCRSP USトータル・マーケット・インデックス[配当込み・グロス]で、中・小型株を含む米国株式に広く投資します。
グロスとは配当に対する源泉徴収税を考慮しない指数です。
(注)配当込・グロスは楽天投信投資顧問に確認しましたが公表された情報ではない為、その真偽を保証するものではありません。
実際の運用はマザーファンドを通してバンガード社のETF バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(Total Stock Market ETF【VTI】)に投資します。
画像引用:楽天・全米株式インデックス・ファンド交付目論見書
バンガード・トータル・ストック・マーケットETF 【VTI】
米国株式市場の大型から小型株までも含み、投資可能な銘柄のほぼ100%をカバーする時価総額加重平均型の指数、CRSP USトータル・マーケット・インデックスをベンチマークとするETFです。
その経費率は0.03%。
2021年7月末日時点で3,935銘柄に投資、組入上位10銘柄は下表のようになります。
銘柄 | Ticker | 比率 | |
1 | Apple Inc. | AAPL | 5.1% |
2 | Microsoft Corp. | MSFT | 4.7% |
3 | Amazon.com Inc. | AMZN | 3.1% |
4 | Facebook Inc. | FB | 1.9% |
5 | Alphabet Inc. Class A | GOOGL | 1.8% |
6 | Alphabet Inc. Class C | GOOG | 1.7% |
7 | Tesla Inc. | TSLA | 1.2% |
8 | Berkshire Hathaway Inc. | BRK.B | 1.1% |
9 | NVIDIA Corp. | NVDA | 1.0% |
10 | JPMorgan Chase & Co. | JPM | 1.0% |
データ引用:米国Vanguardサイトより
上位6位は「GAFAM」と呼ばれる銘柄で18.2%を占めます。
さらに何かと話題のTeslaも7位に入っています。
手数料(信託報酬、実質コストなど)
楽天・全米株式インデックスファンドの信託報酬は0.1320%(税込)
これに投資先ETFの経費率0.03%を加えて、
実質的な信託報酬は0.1620%(税込)。
勿論、購入時手数料無料(ノーロード)、信託財産留保額は無です。
実質コスト
2021年7月15日に4期目の決算を迎え、その実質コストは0.187%(税込)
信託報酬以外のコストが0.025%、1期目0.144%、2期目0.063%、3期目0.047%(1~3期目とも消費税10%換算)と徐々に下がってきています。既に十分許容範囲内と言って良いでしょう。
楽天バンガードファンドの4期目決算結果の詳細は下記記事を参照して下さい。
他社 類似インデックファンド(米国株式)との信託報酬・実質コスト比較 (S&P500, NYダウ)
CRSP USトータル・マーケット・インデックスをベンチマークとするファンド、及びベンチマークは異なりますが米国株式に投資する他社の低コスト・インデックスファンドと信託報酬・実質コストを比較します。
*ファンド名下の[]内はベンチマーク。[CRSP US]はCRSP USトータル・マーケット・インデックスの略。
*信託報酬・実質コストは税込み。
(注)下表は基本的に最新の情報に随時更新しています。よって記事中の記載と異なる場合がありますが、その際は下表の値が最新の情報となります。
ファンド | 信託報酬 | 実質コスト | |
---|---|---|---|
1 | PayPay投信米国株式インデックス [Morningstar US] | 0.0915% | (決算前) |
2 | SBI・V・S&P500インデックス [S&P500] | 0.0938% | 0.105% |
2 | SBI・V・全米株式インデックス [CRSP US] | 0.0938% | (決算前) |
4 | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) [S&P500] | 0.0968% | 0.123% |
4 | SMBC・DCインデックスファンド(S&P500) [S&P500] | 0.0968% | 0.128% |
6 | SBI・V・米国高配当株式インデックス [FTSE High Dividend Yield] | 0.1238% | (決算前) |
7 | 楽天・全米株式インデックス・ファンド [CRSP US] | 0.1620% | 0.187% |
8 | 楽天・米国高配当株式インデックス [FTSE High Dividend Yield] | 0.1920% | 0.255% |
9 | PayPay投信 NYダウインデックス [NYダウ] | 0.1980% | 0.595% |
10 | つみたて米国株式(S&P500) [S&P500] | 0.2200% | 0.244% |
11 | NZAM・ベータ・NYダウ30 [NYダウ] | 0.2310% | 0.490% |
12 | Smart-i S&P500インデックス [S&P500] | 0.242% | 1.003% |
13 | iFree S&P500・インデックス [S&P500] | 0.2475% | 0.278% |
13 | iFree NYダウ・インデックス [NYダウ] | 0.2475% | 0.262% |
13 | たわらノーロード NYダウ [NYダウ] | 0.2475% | 0.303% |
- | eMAXIS NYダウインデックス [NYダウ] | 0.6600% | 0.677% |
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)の信託報酬は2019年9月26日設定のSBI・V・S&P500インデックスファンド、2019年11月12日に信託報酬を引下げたeMAXIS Slim米国株式(S&P500)等に次いで5位。
上位との信託報酬の差が約0.07%ptと大きくなっています。
中小型株まで広く投資したい方は楽天・バンガード・ファンドや後述するSBI・V・全米株式インデックス・ファンド、大型株だけで十分という方はeMAXIS Slim米国株式(S&P500)やSBI・V・S&P500インデックス・ファンドという選択。
[参考]S&P500の対象銘柄は時価総額でCRSP USトータル・マーケット・インデックスの約80%程度になります。
強力なライバル現る! ~SBI・V・全米株式インデックス・ファンド~
2021年6月29日に楽天・バンガード・ファンド(全米株式)と同じく、バンガード社ETF VTIに投資するSBI・V・全米株式インデックス・ファンドが登場しました。
上表に記載したように、信託報酬は楽天・バンガード・ファンド(全米株式)より圧倒的に低く、今後、強力なライバルファンドとなる事でしょう。
信託報酬の変更履歴
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)は、設定以降、1回だけ信託報酬引下げの実績があります。ただし、信託報酬そのものではなく投資先ETFの経費率引き下げによるものです。
引下げ日 | 信託報酬(税込) | 備考 |
2017/9/29 | 0.1696% | 新規設定。 |
2019/4/26 | 0.1596% | 投資先ETF VTIの経費率引下げ。 |
2019/4/26 | 0.1620% | 消費税増税(8%-->10%) |
SBI・V・S&P500インデックス、eMAXIS Slim米国株式との差が広がり、さらに、SBI・V・全米株式インデックス・ファンドが設定されただけに、楽天・バンガード・ファンド(全米株式)も対抗した引下げに期待したいところですが。。。
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楽天・全米株式インデックス・ファンド [楽天・バンガード・ファンド(全米株式)]の運用状況
資金流出入額 & 純資産総額 (評判・人気は?)
月次資金流出入額、純資産総額から楽天・バンガード・ファンド(全米株式)の売れ行き・人気を見てみます。
(*)月次資金流出入額は、日々の純資産総額の増減額に騰落率を考慮して算出した概算値になります。
設定来人気のあるファンドですが、特に2021年に入ってからは米国株式人気もあって、毎月100億(/月)を超える大きな資金流入が続いています。
純資産総額も設定から4年半で約5,000億(2022.3末時点)と巨大なファンドに成長しています。
今、最も売れているインデックスファンドの一つです。
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)、SBI・V・全米株式/S&P500インデックスファンドとの比較
同じベンチマークですが設定から間もないSBI・V・全米株式インデックス・ファンド、及びベンチマークは異なりますが同じ米国株式に投資するeMAXIS Slim米国株式(S&P500)、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドと資金流出入額を比較します。
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)はeMAXIS Slim米国株式(S&P500)に大きく負け、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドにも後塵を拝する状況が続いています。信託報酬の差が効いているのでしょうか?
ただ、設定されたばかりのSBI・V・全米株式インデックス・ファンドには勝っています。(SBI・V・全米株式は販売会社がSBI証券1社のみというのも影響していると思われます)
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運用状況は? ~楽天・全米株式インデックス・ファンドのベンチマークとの乖離~
インデックスファンドではベンチマークとの乖離がファンド評価の重要な要素です。
先進国株式(MSCI kokusai)などの場合、同じベンチマークの他のファンドと比較する事で、コスト起因、運用の問題などに切り分ける事が出来ますが、楽天・バンガード・ファンド(全米株式)の場合、類似ファンドが設定から間もないSBI・V・全米株式インデックス・ファンドしかありません。
そこで、投資先である米国バンガード社ETF VTIのデータを用いてベンチマークとの乖離を調査します。
下図は2021年8月末日時点の実質コストに対する1年騰落率をVTI、及び楽天・バンガード・ファンド(全米株式)でプロットしたものです。
米国ETF Vanguard VTIの騰落率は、分配金に10%課税後再投資したネット(VTIネットと表記)、非課税で再投資したグロス(VTIグロスと表記)の二つをプロットします。
*VTIの騰落率は終値の円換算騰落率。(終値は米国Yahoo Finance、分配金は米国Vanguard社サイト、為替レートは三菱UFJ銀行公表のTTMより引用)
楽天・バンガード・ファンドはVTIの分配金に10%米国で源泉徴収された後に再投資しますので、VTIネットと比較する事になります、
尚、ベンチマーク騰落率(配当課税を考慮しないグロス)も図示しますが、これは米国CRSPサイトより日次データを引用し、円換算した値です。
先ず、VTIグロスは(コスト除外した値で)ベンチマークに対して+0.06%(1)と、その乖離は小さくVTI自体の運用は問題ないと推測出来ます。
そして、VTIの分配金に対する米国課税10%分が騰落率にすると-0.20%(2)になります。
次に、VTIネットから決まる直線(*)から楽天・バンガードのコスト要因による騰落率低下は-0.26%(3)と計算できます。
実際の楽天・バンガードの騰落率は、この直線から若干マイナス側にプロットされています。これが、楽天・バンガードのコスト要因以外での乖離となりますが、その値は-0.06%(4)と小さく、問題とするレベルではないでしょう。
(*)単に2点を結んだ直線ではなく、騰落率=(1 + r) x s + rで決まる直線です。
r : コスト0の時の騰落率、s : ファンドの実質コスト
本評価方法の詳細は下記記事をご覧下さい。
よって、楽天・バンガード・ファンド(全米株式)はベンチマークに対しても、コスト要因以外での乖離はないと推測できます。
以上をまとめると下表のようになります。
この期間でのベンチマークに対する乖離は-0.46%と非常に大きいように見えますが、これは、先ずベンチマークが分配金課税を考慮しないグロスであり、米国での分配金に対する課税(-0.20%)分が含まれていない事、さらに楽天・バンガード・ファンドのコスト要因(-0.26%程度)で説明できるものです。これらの要因を除いた楽天・バンガード・ファンドの運用に起因する乖離は-0.06%程度ですので、問題ないレベルと言って良いでしょう。
言い換えれば、コスト要因を除けば楽天・バンガード・ファンドの運用に問題ないという事です。
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)の分配金
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)は分配金を出した実績はありません。
これから資産を築いていこうとする資産形成期においては分配金を出さない投資信託の方が有利です。
分配金を出すか否かは運用会社が決定しますが、多くのインデックスファンドが分配金を出さない、無分配としています。
勿論、保有する株式から出た配当はファンドの資産となり、基準価額の上昇につながります。
最新の騰落率[利回り] [SBI・V/全米株式・S&P500、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)との比較] ~2022年4月末日時点~
最新の騰落率をライバルファンドとともにまとめます(本章は原則毎月更新します)。
*3年騰落率は年率表記。
[表をクリックすると拡大します]
同じベンチマークで信託報酬が低いSBI・V・全米株式インデックス・ファンドが登場しましたが、今までは楽天・バンガード・ファンド(全米株式)が騰落率で勝っていました。ただ、直近数カ月の期間でSBI・Vの騰落率が勝っていますが、これは現金比率の高いSBI・Vが下落局面で強かった為と推測。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンド、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)はベンチマークが異なりますので参考値として見て下さい(中小型株有無の違い)。
中小型株を含むからといって必ずしもパフォーマンスが上がるわけではありません。将来、どちらが勝るかは分かりません。
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まとめ
以上、楽天・全米株式インデックス・ファンド[愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式)]の解説でした。
米国株式にほぼ丸ごと投資するバンガード社ETF VTIを、国内投資信託として手軽に購入出来る非常に魅力あるファンドです。
実際、設定以来、毎月巨額の資金流入があり大きな人気を集めています。
4期目が終わり実質コスト(信託報酬外のコスト)も下がりました。そして、運用上の問題に起因するベンチマークとの乖離も殆どありません。
米国株式に投資したい、
S&P500より中小型株を含む幅広い銘柄に投資したい、
そして海外ETFに直接投資するのは面倒と感じる方には最適なファンドです。
つみたてNISAやiDeCo(楽天証券、松井証券)でも投資する事が出来ます。
願わくば、SBI・V・S&P500インデックス・ファンド、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)と同等の信託報酬に引き下げてくれれば、もっと魅力的なファンドになるのですが。
販売会社
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)は下記の金融機関で購入出来ます。
*主にネット証券、ネット取引での取扱いとなります。
また投資信託保有でポイントもたまります(一部ファンドを除く)。*マネックスカードの発行にはマネックス証券の口座開設が必要です。
公式サイトマネックス証券
また投資信託保有でTポイント、Pontaポイント、dポイントがもらえます。さらにT/Pontaポイントで投資信託を購入できます。
公式サイト SBI証券
*三井住友カード(NL)なら年会費永年無料、三井住友カード ゴールド(NL)は年間100万円の利用で翌年以降の年会費永年無料。
公式サイト三井住友カード(NL)
公式サイト三井住友カード ゴールド(NL)
Pontaポイントで投資信託の購入も可能。
また、auじぶん銀行との連携(auマネーコネクト)でauじぶん銀行普通預金金利0.1%、au Payアプリ等の連携で最大0.20%になるのも魅力。
公式サイトauカブコム証券
また、2022年8月より楽天キャッシュ決済で投資信託積立が出来るようになります。楽天カードからチャージすると0.5%のポイント還元(2022.12買付分まではキャンペーンで+0.5% 計1.0%)。
楽天カード決済で5万円、楽天キャシュ決済で5万円、あわせて月10万円まで利用可能。
さらに、楽天ポイントで投資信託を購入できます。
公式サイト楽天証券
公式サイト楽天カード
勿論、つみたてNISA対象のファンドです。
また、個人型確定拠出年金(iDeCo)で取扱っているのは楽天証券 iDeCo、松井証券 iDeCo。
ライバルとなるファンド
iFree S&P500インデックス
他の米国株式(S&P500、CRSP USトータル・マーケット・インデックス)インデックスファンドとの比較、最新の人気・運用状況は下記記事を参照して下さい。
インデックスファンドの信託報酬、実質コスト、純資産総額の一覧は下記記事を参照して下さい。