純資産総額 2,000億円突破(2020.11.25)
米国の株式市場を代表する指数S&P500との連動を目指すインデックスファンド、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)について解説します。
[最終更新日:2021.1.4]純資産総額、最新の騰落率」を2020.12末の情報に更新。
[2020.12.3]全て最新の情報に更新。
本記事は原則2020.11末日時点の情報に基づいて記載しています。
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見出し
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の基本情報
eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)シリーズは「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」をコンセプトとした三菱UFJ国際投信が運用するインデックスファンドで、「他社類似ファンドの運用コストに注意を払い、機動的に信託報酬を引き下げることによって、今も、そしてこれからも業界最低水準を目指し続ける」と公表しています。実際、設定から既に数回の信託報酬引下げを行い、常に最低水準の座を維持しています。
今回解説するのは、S&P500との連動を目指し米国株式に投資するeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)。
先ず、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の基本情報をまとめます。
運用会社 | 三菱UFJ国際投信 |
設定日 | 2018年7月3日 |
運用形態 | インデックスファンド |
投資形態 | ファミリーファンド |
ベンチマーク | S&P500(配当込み・ネット) |
購入時手数料 | 無 |
信託財産留保額 | 無 |
信託報酬(税込) | 0.0968% 以下 |
実質コスト | 0.141% |
純資産総額 | 2289.2億円(2020.12.30時点) |
(マザーファンド) 純資産総額 | 771.8億円(2020.2.25時点) |
分配金実績 | 無 |
つみたてNISA | 対象商品 |
SBI証券ポイント還元年率 | 0.02%(*) |
楽天証券ポイント還元年率 | 0.048% |
(*)SBI証券ポイント還元率は2019.11.12の信託報酬引下げに伴い0.05%から0.02%に引き下げられました(2019.12.1より)。
投資対象
ベンチマークはS&P500[配当込み・ネット]で米国株式に投資します。
S&P500は米国の大型株 約500銘柄から構成された時価総額加重平均型の指数で米国株式の約80%をカバーします。米国株式を代表する指数と言っても良いでしょう。
ネットとは配当に対する源泉徴収税を考慮した指数ですが、その税率が日本に対して適切に考慮されているかは定かではありません。
*インデックスファンドのベンチマークは[除く配当]と[税引前配当込/グロス]、[税引後配当込/ネット]の3種類ありますが、ベンチマークの配当除く・含むは運用成績に直接関係するものではありません(少なくとも過去においては)。但し、運用報告書などに記載されているベンチマークとの乖離を見る時は注意が必要です。詳細は下記記事を参照して下さい。
参考記事インデックスファンドのベンチマーク(除く配当/プライス、配当込/グロス・ネット)と乖離の評価方法。
マザーファンド
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)はファミリーファンド方式でマザーファンドを介して米国株式に投資します。
画像引用:eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 交付目論見書
今まで、三菱UFJ国際投信に一般投資家向けS&P500連動型インデックスファンドはなくeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が初めてとなります。
但し機関投資家向けには既に存在しており、S&P500インデックスマザーファンドは新設ではなく既存のものです。
投資国、投資銘柄
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は米国のみの株式に投資します。
保有する銘柄数は505(2020.10末時点)で、S&P500を構成する全銘柄を保有しています。
組入銘柄上位10は下表の通り。
画像引用:eMAXIS Slim米国株式(S&P500) マンスリーレポート(2020/10)
アップル、マイクロソフト、アマゾンといった米国を代表する企業が上位を占めています。
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手数料(信託報酬、実質コストなど)
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の最大の魅力は何と言っても信託報酬の低さ。S&P500だけでなく米国株式を投資対象としたインデックスファンドとしては最低水準の0.0968%(税込)。
実質コストは2期目決算で0.141%。初回決算0.180%から大きく下がり、信託報酬以外のコストが0.044%と問題のないレベルです。
勿論、購入時手数料無料(ノーロード)、信託財産留保額は無です。
*実質コストは信託報酬以外のコストに全て消費税がかかると仮定して消費税8%から10%に換算した概算値です。さらに運用報告書記載のコスト合計から信託報酬引下げ分を引いています。
受益者還元型信託報酬
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は下表のように純資産総額に応じて信託報酬率が変わる受益者還元型信託報酬を採用しています。
純資産総額 | 信託報酬(税込) |
500億円未満の部分 | 0.0968% |
500億円以上1,000億円未満の部分 | 0.09625% |
1,000億円以上の部分 | 0.0957% |
実際に2020年1月20日に500億円、そして2020年5月28日には1,000億円を突破し、僅かですが低い信託報酬が適用されています。
純資産総額に対する信託報酬率を下図に示します。
純資産総額1,000億円ちょうどで信託報酬は0.0965%、2,000億円を超えた2020年11月末時点では0.0961%となります。
尚、eMAXIS Slimシリーズで1,000億円、そして2000億円を突破したのはeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が初めてです。
*eMAXIS Slim先進国株式インデックスも2020.6.2に1,000億円に到達しました。
他社 米国株式インデックスファンドとの信託報酬・実質コスト比較
S&P500、及びベンチマークは異なりますが米国株式に投資する他社の低コスト・インデックスファンドと比較してみます。
*ファンド名下の[]内はベンチマーク。[CRSP US]はCRSP USトータル・マーケット・インデックスの略。
*信託報酬・実質コストは税込み表記。
ファンド | 信託報酬 | 実質コスト | |
---|---|---|---|
1 | SBI・バンガードS&P500インデックス [S&P500] | 0.0938% | 0.114% |
2 | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) [S&P500] | 0.0968% | 0.141% |
DC専用? | SMBC・DCインデックスファンド(S&P500) [S&P500] | 0.0968% | (決算前) |
3 | 楽天・全米株式インデックス・ファンド [CRSP US] | 0.1620% | 0.209% |
4 | つみたて米国株式(S&P500) [S&P500] | 0.2200% | 0.273% |
5 | NZAM・ベータ・NYダウ30 [NYダウ] | 0.2310% | (決算前) |
6 | Smart-i S&P500インデックス [S&P500] | 0.242% | (決算前) |
7 | iFree S&P500・インデックス [S&P500] | 0.2475% | 0.280% |
7 | iFree NYダウ・インデックス [NYダウ] | 0.2475% | 0.276% |
7 | たわらノーロード NYダウ [NYダウ] | 0.2475% | 0.382% |
- | eMAXIS NYダウインデックス [NYダウ] | 0.6600% | 0.687% |
*実質コストは信託報酬以外のコストに全て消費税がかかると仮定して、消費税8%から10%に換算した概算値です。
S&P500では税込み信託報酬でSBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンドに若干負けますが、税抜きでは同じ、ほぼ同率と思って良いでしょう。
(SBI・バンーガードは投資先ETFの経費率に消費税がかからない為、このように税抜き・税込みでeMAXIS Slimとの差が生じています。詳細は後述)
但し、実質コストではSBI・バンガードに0.03%pt負けています。
一方、楽天・全米株式インデックスやiFree S&P500インデックスには大きな差をつけています。
信託報酬の変更履歴
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は過去に二回、信託報酬引き下げを行っています。
引下げ日 | 信託報酬(税込) | 備考 |
2018/7/3 | 0.1728% | 新規設定(楽天・全米株式に対抗した設定) |
2019/6/14 | 0.1620% | 楽天・全米株式の実質的な信託報酬の引き下げに対抗。 |
2019/10/1 | 0.1650% | 消費税増税(8%-->10%) |
2019/11/12 | 0.0968% | SBI・バンガード・S&P500に対抗 |
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)とSBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンドとのコスト比較
業界最低水準の運用コストを目指し続けるeMAXIS Slimですが、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の直接の対抗ファンドとなっているのがSBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド。
設定時は楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド)に合わせた信託報酬でしたが、2019年9月26日にSBI・バンガード・S&P500が、より低い信託報酬で新規設定され、現在は、これと信託報酬を競っています。
そして2019年11月12日にeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)はSBI・バンガード・S&P500と同一の信託報酬に引き下げました。
ただし、税抜きで同率となるよう設定するため、税込みだとeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の方が若干高くなります。
具体的には、
SBI・バンガード・S&P500の実質的な信託報酬は、ファンドの信託報酬 0.058% + 投資先ETF経費率 0.03%= 0.088%(税抜き)。税込みの場合、投資先ETF経費率には消費税がかからないため、0.058 x 1.1 + 0.03 = 0.0938%となります。
一方、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は信託報酬0.088%(税抜き)と税抜きでは同率ですが、税込みだと0.088 x 1.1 = 0.0968%とSBI・バンガード・S&P500より高くなります。
とはいえ、税込みでも0.003%の違いですので概ね同じと思って良いでしょう。
ただ、実質コストではeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が0.141%、SBI・バンガード・S&P500は0.141%と0.03%pt負けています。
尚、SBI・バンガード・S&P500は米国バンガード社ETF VOOに投資するFOFですが、全世界ではなく米国だけに投資しますので、配当に対する税制上の有利・不利はありません。
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)と楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天バンガード)【VTI】の比較
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)のもう一つのライバルが楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド)。
*以下、楽天・全米株式インデックス・ファンドを楽天バンガードと略して表記する場合があります。
2019年11月12日のeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)信託報酬引下げで、コスト的にはeMAXIS Slimが圧倒的に優位に立ちましたが、両者はベンチマークが異なります
ベンチマークの違い(S&P500 vs. CRSP U.S. Total Market Index)
S&P500をベンチマークとするeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に対し、楽天バンガードはCRSP U.S. Total Market Indexをベンチマークとし、実際はバンガード社ETF VTIに投資します。
前述のように大型株 約500銘柄で米国株式の80%をカバーするS&P500に対して、CRSP U.S. Total Market Indexは大型のみならず中型・小型株をも含む約3,600銘柄、ほぼ米国株式の100%をカバーします。
ただ中小型株は時価総額が小さいので、CRSP U.S. Total Market Indexの80%はS&P500と概ね同じ、異なるのは残り20%だけとなります。
パフォーマンスは2020.10.31時点の直近5年間(ドルベース)で
ベンチマーク | 年率 リターン | リスク |
S&P500 | 11.71% | 14.61% |
CRSP U.S. Total Market Index | 11.49% | 15.22% |
*データ引用 : Vanguard ETF VOO/VTIのベンチマーク値
この5年間のデータで見ると若干S&P500の方が上回っています(リターン大、リスク小)。勿論、将来はどうなるか分かりませんが、少なくとも「中小型株を含む事で必ずしもパフォーマンスが上がる訳では無い」という事だけは言えます。どちらのベンチマークにするかは、それぞれのお好みで選べば良いでしょう。
米国株式の各指数の詳細な解説は下記記事をご覧ください。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の運用状況
資金流出入額 & 純資産総額 (評判・人気は?)
月次資金流出入額、純資産総額からeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の売れ行き・人気を見てみます。
(*)月次資金流出入額は、日々の純資産総額の増減額に騰落率を考慮して算出した概算値になります。
2018年7月3日設定と未だ新しいファンドですが、僅か2年足らずの2020.5.28に純資産総額1,000億円を、そして2020.11.25には2,000億円を超えました。
また、2020年以降は100億/月を超える資金流入の月も多くあり、今最も人気のあるインデックスファンドです。
運用状況は?
インデックスファンドでは、ベンチマークとの乖離が小さい事がファンド評価の重要な要素です。そして、乖離がなければ、そのコストに応じた騰落率になる筈です。
下図は2020年11月末日時点の実質コストに対する1年騰落率を複数のファンドでプロットしたものです。そして、配当課税を適切に考慮した真のベンチマークから決まるコストと騰落率の関係が図中グレーの点線です(多くのファンドがコスト要因以外での乖離がないであろうとの仮定の下、管理人の主観で決めた値)。
このグレーの点線上にあればコスト要因以外でのベンチマークとの乖離がないと推測できます。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)はそのコストの低さに応じた高い騰落率を示しており、コスト要因以外でのベンチマークとの乖離がない安定した運用になっています。
実質コストで勝るSBI・バンガード・S&P500ですが、ベンチマークに対して下方乖離している可能性があり、騰落率ではeMAXIS Slimが高くなっています。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の分配金
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は分配金を出した実績はありません。
これから資産を築いていこうとする資産形成期においては分配金を出さない投資信託の方が有利です。
分配金を出すか否かは運用会社が決定しますが、本ファンドは「信託財産の成長を優先とし、原則として分配を抑制する」方針です。
勿論、保有する株式から出た配当はファンドの資産となり、基準価額の上昇につながります。
最新の騰落率[利回り](SBI・バンガード・S&P500との比較) ~2020年12月末日時点~
最新の騰落率をライバルファンドとともにまとめます。
*3年騰落率は年率表記。
[表をクリックすると拡大します]
*12月の結果ですので年初来と1年騰落率は同じです。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は、騰落率(年初来=1年)でSBI・バンガード・S&P500より高くなっています。
運用の安定性(ベンチマークとの乖離)という点では、eMAXIS Slimの方が勝っているように思えます。
尚、楽天・全米株式インデックス・ファンドはベンチマークが異なりますので参考値として見て下さい(中小型株有無の違い)。
まとめ
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)はS&P500をベンチマークとするインデックスファンドの中ではSBI・バンガード・S&P500と並び信託報酬が低く、さらに他のベンチマークを含め米国株式インデックスファンドの中でも最低水準の信託報酬です。
毎月数十億から100億を超える資金流入があり人気という点では申し分ありません。
さらに運用(ベンチマークとの乖離)も安定しており、そのコストに応じた高い騰落率となっています。
米国株式を中心に投資したい方にとって、SBI・バンガード・S&P500、楽天・全米株式インデックス・ファンドとともにお勧めできるファンドの一つです。
販売会社
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は下記の金融機関で購入出来ます。
*主にネット証券、ネット取引での取扱いとなります。
SBI証券
投資信託保有で毎月Tポイントがもらえます。さらにTポイントで投資信託を購入する事も出来ます。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイト SBI証券
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投資信託保有で毎月楽天ポイントがもらえます。さらに楽天ポイントで投資信託を購入する事も出来ます。また、楽天カード(クレジットカード)で投資信託を積立購入する事が出来ます(上限5万円/月)。勿論ポイント還元があり事実上1%割引で購入出来るようなものです。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイト楽天証券、楽天カード
SMBC日興証券(ダイレクトコース)
大手店頭証券で唯一eMAXIS Slimシリーズを取扱い(ダイレクトコースのみ)。
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(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイトSMBC日興証券
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公式サイト松井証券
勿論、つみたてNISA対象のファンドです。(上記金融機関でもつみたてNISAを取扱っていない場合があります)
また、個人型確定拠出年金(iDeCo)で取扱っているのはマネックス証券 iDeCo、SBI証券 iDeCo(セレクトプラン)
、松井証券のみとなります。
ライバルとなるファンド
楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド)
iFree S&P500インデックス
他の米国株式インデックスファンドとの比較、最新の人気・運用状況は下記記事を参照して下さい。
インデックスファンドの信託報酬、実質コスト、純資産総額の一覧は下記記事を参照して下さい。
eMAXIS Slimシリーズの他のファンドの評価・解説は下記記事をご覧ください。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) *本記事