1本のファンドで日本を含む全世界の株式に投資するインデックスファンド、つみたて全世界株式について解説します。
[最終更新日:2020.10.22]初版。
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つみたて全世界株式の基本情報
つみたて全世界株式は三菱UFJ国際投信が運用するインデックスファンド「つみたてんとうシリーズ」の一つです。eMAXISやeMAXIS Slimシリーズとは、基本的に同じマザーファンドで運用する姉妹ファンド。eMAXIS Slimが原則ネット証券・銀行専用商品なのに対し、つみたてんとうシリーズは、「つみたてNISA」を主なターゲットとし、最寄りの金融機関で相談できるファンドとして2017年8月に設定されました。現在9本のファンドから構成されています。コスト(信託報酬)はeMAXISよりは低く、eMAXIS Slimよりは高くなっています。
参考記事三菱UFJ国際投信 インデックスファンド「つみたてんとうシリーズ」運用開始。
今回解説するのは1本のファンドで日本を含む全世界の株式に投資するつみたて全世界株式。
先ず、つみたて全世界株式の基本情報をまとめます。
運用会社 | 三菱UFJ国際投信 |
設定日 | 2020年3月6日 |
運用形態 | インデックスファンド |
投資形態 | ファミリーファンド |
ベンチマーク | MSCI All Country World Index(配当込み・ネット) |
購入時手数料 | 無 |
信託財産留保額 | 無 |
信託報酬(税込) | 0.2200% |
実質コスト | 0.315% |
純資産総額 | 0.09億円(2020.10.21時点) |
(マザーファンド) 純資産総額 | [先進国株式]4,498億円(2020.5.12時点) [新興国株式]1,041億円(2020.5.12時点) [日本株式] 18.4億円(2020.4.27時点) |
分配金実績 | 無 |
つみたてNISA | 対象商品 |
SBI証券ポイント還元年率 | 0.05% |
楽天証券ポイント還元年率 | 0.048% |
投資対象
ベンチマークはMSCI All Country World Index [ACWI][配当込み・ネット]で日本を含む先進国、新興国の株式に投資します。
MSCI ACWIは全世界49カ国(先進国23カ国+新興国26)の大型株、中型株、2,700以上の銘柄から構成される時価総額加重平均型の指数です。
ネットとは配当に対する源泉徴収税を考慮した指数ですが、その税率が日本に対して適切に考慮されているかは定かではありません。
*インデックスファンドのベンチマークは[除く配当]と[税引前配当込/グロス]、[税引後配当込/ネット]の3種類ありますが、ベンチマークの配当除く・含むは運用成績に直接関係するものではありません(少なくとも過去においては)。但し、運用報告書などに記載されているベンチマークとの乖離を見る時は注意が必要です。詳細は下記記事を参照して下さい。
参考記事インデックスファンドのベンチマーク(除く配当/プライス、配当込/グロス・ネット)と乖離の評価方法。
マザーファンド
つみたて全世界株式は、ファミリーファンド方式で下記マザーファンドに投資します。
画像引用:つみたて全世界株式 交付目論見書
外国株式インデックスマザーファンド、新興国株式インデックスマザーファンドは、それぞれつみたて先進国株式、つみたて新興国株式、さらにeMAXIS、eMAXIS Slimシリーズとも同じマザーファンドで、既に巨額の純資産を有します。
一方、日本株式インデックスマザーファンドは、本ファンドの姉妹ファンドでもあるeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)設定と同時に新規設定されたもので、2020年4月には純資産総額約18億になっています。
投資地域別比率
国内株式、先進国株式、新興国株式の比率は2020.9末時点で下表のようになります。
地域 | 比率 |
国内株式 | 6.8% |
先進国株式 | 80.5% |
新興国株式 | 12.3% |
ベンチマーク MSCI ACWIは時価総額加重平均型指数ですので、その時点の時価総額で国内、先進国、新興国比率が変化します。例えば、他の先進国株式に対し国内の株価が低迷すれば国内株式の比率が小さくなります。
投資国比率
組入上位10カ国は下表のようになります(2020.9末時点)。
画像引用:eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー) マンスリーレポート(2019/6)
トップはアメリカで56%、全体の半分以上を占めます。2位が日本で7%。
新興国株式ではケイマン諸島が1位となっていますが、これは事実上、中国企業です。
詳細は下記記事を参照して下さい。
参考記事【外国株式インデックスファンド】各インデックス(指数)、そして先進国、新興国ってどこの国?
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手数料(信託報酬、実質コストなど)
つみたて全世界株式の信託報酬は0.2200%(税込)です。
実質コストは初回決算で0.315%。(約3カ月の決算期間の結果を年率に換算した概算値)
信託報酬以外のコストが0.095%、姉妹ファンドのeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬以外のコストが0.091%ですので概ね同じ、設定から未だ半年余りのファンドですが、実質コストも十分低く抑えられています。
勿論、購入時手数料無料(ノーロード)、信託財産留保額は無です。
*実質コストは信託報酬以外のコストに全て消費税がかかると仮定して消費税8%から10%に換算した概算値です。
他社 全世界株式インデックスファンドとの信託報酬・実質コスト比較
MSCI ACWIをベンチマークとする他社のインデックスファンド、及びベンチマークは異なりますが(日本を含む)全世界の株式に投資するインデックスファンドと比較してみます。
さらに、eMAXIS Slimシリーズの個別のファンド(TOPIX、先進国株式、新興国株式)を7%:81%:12%の比率で組み合わせた場合も参考までに記載します。
(注)下表は基本的に最新の情報に随時更新しています。よって記事中の記載と異なる場合がありますが、その際は下表の値が最新の情報となります。
*ファンド名下の[]内はベンチマーク。[FTSE]はFTSE Global All Cap Index、[MSCI]はMSCI All Country World Indexの略。
ファンド | 信託報酬 | 実質コスト | |
---|---|---|---|
1 | SBI・全世界株式インデックス・ファンド [FTSE] | 0.1102% | 0.133% |
2 | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) [MSCI] | 0.1144% | 0.205% |
- | 個別ファンドの組合せ | 0.1161% | --- |
3 | たわらノーロード 全世界株式 [MSCI] | 0.1320% | 0.240% |
4 | 楽天・全世界株式インデックス・ファンド [FTSE] | 0.2120% | 0.261% |
5 | つみたて全世界株式 [MSCI] | 0.2200% | 0.315% |
6 | ステート・ストリート 全世界株式インデックス [MSCI] | 0.5280% | 0.617% |
*実質コストは信託報酬以外のコストに全て消費税がかかると仮定して消費税8%から10%に換算した概算値です。
日本を含むMSCI ACWIをベンチマークとするファンドの中では、つみたて全世界株式の信託報酬は、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)、たわらノーロード全世界株式についで3位。
つみたて全世界株式も十分低コストではありますが、最安値のeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)とは0.11%の差があります。
個別のインデックスファンドとの組合せと、どちらがお得か?
つみたて全世界株式の信託報酬は0.2200%(税込)。
一方、eMAXIS Slim先進国株式[0.10230%]、eMAXIS Slim新興国株式[0.1870%]、eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)[0.1540%]を81%:12%:7%の比率で組み合わせた場合の信託報酬は上表にも示したように0.1161%、つみたて全世界株式の方が0.10%高くなります。
尚、各インデックスファンドを全て「つみたてんとうシリーズ」で揃えた場合、つみたて先進国株式[0.2200%]、つみたて新興国株式[0.3740%]、つみたて日本株式(TOPIX)[0.1980%]を上記比率で組み合わせた信託報酬は0.237%、
各地域に時価総額比率で投資する方は、「つみたてんとうシリーズ」を組合わせるより、つみたて全世界株式1本を購入するだけの方がコスト的にも優位になるという事です。
勿論、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)ならさらに低コストになりますが。
(注)つみたて全世界株式の国内株式部分のベンチマークはMSCIジャパンで、つみたて日本株式(TOPIX)、eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)とは異なります。
信託報酬の変更履歴
つみたて全世界株式は設定されたばかりですので、未だ信託報酬引下げの実績はありません。
引下げ日 | 信託報酬(税込) | 備考 |
2020/3/6 | 0.2200% | 新規設定 |
??? | ???% |
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つみたて全世界株式の運用状況
資金流出入額 & 純資産総額 (評判・人気は?)
月次資金流出入額、純資産総額からつみたて全世界株式の売れ行き・人気を見てみます。
(*)月次資金流出入額は、日々の純資産総額の増減額に騰落率を考慮して算出した概算値になります。
毎月100万円程度の資金流入しかありません。ただ、これは販売会社が現時点で7社、特に売り上げの中心となるであろう銀行の取扱いが3行のみと少ないからでしょう。今後、取り扱い銀行が増えてきたら、それとともに人気も上がっていくと思われます。
運用状況は?
インデックスファンドでは、ベンチマークとの乖離が小さい事がファンド評価の重要な要素です。そして、乖離がなければ、そのコストに応じた騰落率になる筈です。
下図は2020年9月末日時点の実質コストに対する6カ月騰落率を、ベンチマークが同じ複数のファンドでプロットしたものです。
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)、たわらノーロード全世界株式、SSGA全世界株式インデックスファンドの3本は概ね同一直線上(図中グレーの点線)にのるのに対し、つみたて全世界株式は、この線より下方にプロットされています。
これは、コスト要因以外でベンチマークとのマイナス乖離が生じている事を意味します。
純資産が小さい事も乖離の原因と思われますので、今後、資金流入が増えていくにつれ乖離も解消されていくとは思いますが。
まとめ
つみたて全世界株式は、MSCI ACWIをベンチマークとし、比較的低コストで全世界の株式に投資出来るインデックスファンドです。
地域別比率を時価総額比で投資したい方にとっては非常に便利なファンドでもあります。
しかし、未だ販売会社も少なく殆ど売れていません。さらに、純資産総額が小さい事もあってか、コスト要因以外でのベンチマークとの乖離が生じているようです。
1本のファンド、かつ時価総額比率で全世界株式に投資したい方、つみたて全世界株式も悪い選択ではありませんが、姉妹ファンドで、大きな人気を集めているeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)を選択すれば、さらに低いコストで、より大きなリターンを得る事が出来ます。(または損失を小さくできます)
つみたて全世界株式などの「つみたてんとうシリーズ」のみしか取り扱っていない金融機関を利用しているのであれば、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)を取り扱っているネット証券などに変更される事をお勧めします。
つみたてNISAの口座も毎年変更する事が出来ます。
販売会社
つみたて全世界株式は下記の金融機関で購入出来ます。
下記金融機関であれば、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)も取り扱っています。
SBI証券
投資信託保有で毎月Tポイントがもらえます。さらにTポイントで投資信託を購入する事も出来ます。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイト SBI証券
楽天証券
投資信託保有で毎月楽天ポイントがもらえます。さらに楽天ポイントで投資信託を購入する事も出来ます。また、楽天カード(クレジットカード)で投資信託を積立購入する事が出来ます(上限5万円/月)。勿論ポイント還元があり事実上1%割引で購入出来るようなものです。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイト楽天証券、楽天カード
SMBC日興証券(ダイレクトコース)
大手店頭証券で唯一eMAXIS Slimシリーズを取扱い(ダイレクトコースのみ)。
国内株式を定額(100円~)、買付手数料無料(100万円以下)で買付・積立出来、さらにdポイントも使えるキンカブ・日興フロッギーも魅力の証券会社。
(つみたてNISAでも購入可能)
公式サイトSMBC日興証券
松井証券
松井証券は、複数の投資信託を積立する際、設定したポートフォリオ(配分比率)になるよう自動的に購入商品・金額を調整してくれる「リバランス積立」が魅力(無料で利用可能)。
(つみたてNISAでも購入可能、但しリバランス積立はつみたてNISAでは非対応)
公式サイト松井証券
勿論、つみたてNISA対象のファンドです。
上記ネット証券以外に、南都銀行、北海道銀行、宮崎銀行で取り扱っています。今後、地方銀行での取扱いが増えていく事でしょう。
ライバルとなるファンド
楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド)
他の全世界株式インデックスファンドとの比較、最新の人気・運用状況は下記記事を参照して下さい。
インデックスファンドの信託報酬、実質コスト、純資産総額の一覧は下記記事を参照して下さい。